レジャー施設のプールやSPA、ホテルの共同浴場営業に必要な許認可は?

カピバラ好き行政書士 石井くるみさんが民泊を始めとした宿泊関連ビジネスの最新情報を紹介します。身近なレジャー施設のルールについて紹介します。(リビンマガジンBiz編集部)

画像=Pixabay

9月に入りましたが、厳しい残暑が続いています。晴れた日は海やプールで泳いだり、スパでサウナやお風呂に入ったりさっぱりしたくなりますね。

ところで、レジャー施設の大規模プール、学校の体育の授業で入るプール、スーパー銭湯などのヘルスケア施設やサウナ営業、ホテルに付帯する大浴場などはどのようなルールに基づいて営業されているのでしょうか?

本日は「水」にまつわるレジャー施設の営業について解説します。

まず、大きな分類として「風呂かプール」かで大きくルールが異なります。

風呂については、公衆浴場法という法律((昭和23年7月法律第139号)により「公衆浴場」として規制されています。公衆浴場は、「温湯、潮湯又は温泉その他を使用して、公衆を入浴させる施設」と定義され、これらの営業を行う場合には、公衆浴場法に基づき都道府県知事の許可を得なければならないとされています。

他方、プールについては特段規制帰省する法律が存在しません。しかし、大勢の人が利用するプールの水の品質や、ケガ防止の観点から遊泳用プールにおける衛生水準を確保する観点から「遊泳用プールの衛生基準」(厚生労働省)が、プールの安全確保を目的として「プールの安全標準指針」(文部科学省・国土交通省)が、それぞれ通知として示されています。

また、学校におけるプールの衛生管理については、「学校環境衛生基準」に規定があります。上記を受けて、プールに関する構造設備・維持管理基準は、各自治体で独自に条例や指針等を制定しているケースが多くみられます。東京都の場合は「プール等取締条例」により、プール(容量が50立方メートル以上の貯水槽を設置し、公衆に水泳又は水浴をさせる施設)を経営しようとする場合は、許可が必要とされています。

公衆浴場について、詳しく見ていきましょう。公衆浴場法の適用を受ける公衆浴場は「一般公衆浴場」と「その他の公衆浴場」の大きく2つに分類されます。

(1)一般公衆浴場

一般公衆浴場とは、地域住民の日常生活において保健衛生上必要なものとして利用される施設で、物価統制令(昭和21年3月勅令第118号)によって入浴料金が統制されているいわゆる「銭湯」の他、老人福祉センター等の浴場を指します。

(2)その他の公衆浴場

上記の一般公衆浴場以外の公衆浴場はすべて「その他の公衆浴場」に分類されます。

保養・休養を目的としたヘルスセンター・健康ランド型のもの、ゴルフ場やアスレチックジム等スポーツ施設に併設されるもの、工場等に設けられた福利厚生のための浴場、サウナ、個室付き公衆浴場、移動入浴車、エステティックサロンの泥風呂等様々な形態があります。

ただし、他法令に基づき設置され衛生措置の講じられているものは公衆浴場法の適用外とされており、労働安全衛生法による作業場に設けられた浴場や労働基準法による事業附属寄宿舎、旅館業法の適用を受ける宿泊施設の浴場は公衆浴場法の適用はありません。病院や老人保健施設のデイ・ケアとして使用する浴場、国や自治体によって寝たきり老人等を対象に入浴介助を伴った入浴サービスに使用される浴場も公衆浴場法の許可の対象外とです。なお、遊泳プールに付帯する採暖室・採暖槽も浴場には該当しません。

したがって、ホテルなどの宿泊者のみが利用する大浴場や客室に付帯する浴槽については、公衆浴場法ではなく旅館業法の中で、その構造設備要件や維持管理について規定がされています。(尤も、宿泊施設の大浴場の構造設備要件や維持管理に関する規定は、ほとんど公衆浴場法のルールが準用されている内容になっています)

業として(1)(2)の公衆浴場を経営するものは、都道府県知事(保健所設置市又は特別区にあっては、市長又は区長)の許可を受ける必要があります。公衆浴場法には細かい構造設備の基準などは規定されていないため、公衆浴場の許可は、都道府県の条例で定められる構造設備基準・適正配置基準、換気、採光、照明、保温、清潔等の衛生・風紀基準に従うこととなり、各自治体により基準が異なります。公衆浴場の運営は、都道府県の条例で定める換気、採光、照明、保温、清潔等の衛生・風紀基準に従っていなければなりません。

各家庭に風呂やシャワーがなかった時代、(1)の一般公衆浴場いわゆる銭湯は、公衆衛生を確保するために非常に重要な社会インフラでした。地震や災害などで何日もお風呂に入ることができなくなる事態を想像してください。不衛生であるばかりでなく、暑い時期などは特に感染症の発生など重大な問題につながります。

したがって、(1)一般公衆浴場には、「公衆浴場の確保のための特別措置に関する法律」(昭和56年6月法律第68号)の適用を受け、物価統制令の適用を受ける公衆浴場(銭湯)の減少傾向に歯止めをかけるための必要な措置(一律の利用料金や開業の距離制限など)が取られています。

近年は、生活に不可欠な(1)一般公衆浴場から、楽しみやレジャーとしての(2)その他の公衆浴場が増えてきました。通常、公衆浴場は10歳以上の男女が混浴することを禁じており、入口や脱衣所、浴室を区画しなければいけませんが、自治体の条例で一定の要件を満たすことで例外的な取扱いがなされることがあり、例えば水着など着衣することで男女がサウナやお風呂に混浴することができる施設もあります。

海外リゾート地へ旅行に出かけてのんびり過ごしたいという思うものの、難しそうな今年は「都心のリゾート」でバカンスを楽しんでみてはいかがでしょうか?

 
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