石井くるみの民泊最前線


6月15日より、全国的に民泊営業を解禁する住宅宿泊事業法(民泊新法)が施行されました。国土交通省は12日、民泊事業者の届け出件数が6月8日時点で約3,000件になったと発表しましたが、仲介サイト最大手の米Airbnbでは今春まで6万を超える民泊施設が掲載されていたことを考えると、同法に基づく住宅宿泊事業の届出は全国的に低調な状況です。本編では2回に渡り、住宅宿泊事業(民泊新法)の届出が進まない理由を解説しています。

前回記事

住宅宿泊事業(民泊新法)の届出が進まないのはなぜか(前編)

(画像=写真AC)

③住宅宿泊事業ではなく、旅館業の許可取得

住宅宿泊事業は、人を宿泊させる日数が1年間で180日までとされています。さらに、自治体によっては、条例により、年間営業日数を180日より短く制限しています。例えば、東京都新宿区は、住居専用地域では月曜日正午から金曜日正午までの宿泊を禁止しています。弊事務所が存する東京都中央区にいたっては、全域で月曜日正午から土曜日正午まで宿泊させることができません。手続きの煩雑さや、消防設備の設置など、届出までの労力やコストと営業可能日数が見合わないと判断する事業者が多いのも無理はありません。

他方、6月15日に施行された新・旅館業法では、旅館業許可取得のハードルの大幅な緩和が予定されています。設備投資の観点からも、営業日数が180日以下に制限される住宅宿泊事業ではなく、旅館業法の許可取得を選択する方が合理的なケースもあります。

旅館業法の改正を受けて、各自治体は条例の見直しを行っていますが、条例が未成立の自治体も存在します。また、新基準での具体的な許可事例がないこともあり、今後の各自治体の運用解釈が、実際の旅館業取得のハードルに大きく影響します。宿泊事業への参入を考える事業者は、自治体の動向を探らざるを得ない状況となっています。

>>2ページ目:民泊からの相次ぐ撤退の理由

 
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