隔週月曜配信「石井くるみの 民泊最前線」


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6月から施行される民泊新法では、1年間の民泊営業を180日に制限するというルールが設けられます。なぜ180日なのでしょうか。後編の今回は、政策の観点から解説していただきます。(リビンマガジンBiz編集部)

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(画像=写真AC)

本来、宿泊業を営むには旅館業の許可を受けることが必要です。そのためには、施設の建築基準法上の用途を「ホテル」として法適合させなければなりません。

ところが、民泊新法では、施設の用途は「住宅」のままで、建築基準法上の用途を「ホテル」とすることなく宿泊事業を営めるようにする法的整理が図られました。ただし、住宅での宿泊サービスの提供日数を、年間180日に制限しています。

前回は、法的な視点から「民泊はなぜ180日規制なのか」を解説しました。今回は、政策の一観点から180日規制を解説します。

政策の観点:二地域居住等を推進し、地方部の空き家対策・産業振興を図る

二地域居住」という言葉を聞いたことがあるでしょうか。都市に住む人が、農山漁村などの郊外にも同時に生活拠点を持つライフスタイルです。平日は東京の自宅で生活し、週末は長野の別荘へ…というように二地域で暮らすスタイルを指します。

ご存知の通り、日本は国全体の人口が減少し、すべての地域で「定住人口」を増やすことはできない状況です。そのため、地域への人の誘致・移動を促すため、国は以前から別荘やセカンドハウスの所有による二地域居住を積極的に推進してきました。また、増加する空き家の対策にも、二地域住居は効果があります。

しかし、これまでは別荘を持つには、ある程度の金銭的・時間的なゆとりが必要でした。別荘の維持には定期的な管理費用や、固定資産税等の負担がかかるためです。また、定期的に利用しなければ、建物の劣化が急速に進んでしまいます。

しかし、民泊新法の施行後は、利用していない別荘や空き家を人に貸し出すことで、維持費用や税金を賄うための宿泊収入の確保することができるようになります。利用者は安価で宿泊することができるため、二地域居住のような生活をすることが可能です。良いことばかりの地方民泊ですが、ではなぜ180日に規制されているのでしょうか。

もし、民泊新法に180日の規制がなければ、利潤最大化のため別荘を365日民泊稼働させることが常態化することが考えられます。そうなると、少ない施設数で地域の宿泊ニーズが満たされてしまいます。つまり、民泊活用される空き家数が減少してしまうのです。この点、日数制限があれば、より多くの空き家が別荘民泊として活用され、地域活性化及び空き家対策につながる効果が高まるものと考えられます。

このように、民泊新法に年間提供日数の上限が設けられたことで、「二地域居住」などの多様なライフスタイルが促され、地方部の空き家対策・地域振興につながる可能性が期待されています。

民泊新法の日数制限を、法と政策の観点から考えてみました。180日制限に新しい意味が見えてくるのではないでしょうか。最近では多くの自治体で民泊新法を条例で厳しく制限する動きが見られます。しかし、むしろ180日制限を前向きに捉え、民泊を過度に制限することなく地方創生に役立ててほしいと願います。

 
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