毎週月曜配信「石井くるみの みんぱく!最前線」

カピバラ好き行政書士 石井くるみさんに民泊の最新情報を紹介してもらいます。

今回は、マンションでの民泊運営が難しいかもしれない、という予想と、その理由を紹介しています。(リビンマガジンBiz編集部)


(画像=写真AC)

「民泊」とひとことに言っても、施設として活用する不動産が自己所有なのか、賃貸なのか、戸建(一軒家)、共同住宅(マンション)、家主滞在型、家主不在型とさまざまな態様が考えられます。今回は分譲マンション(共同住宅)における住宅宿泊事業法(年間180日以下の民泊営業)の活用について考えます。

国土交通省が「マンション標準管理規約」の改正(案)に関する意見募集を、平成29年 6月19日から平成29年7月18日まで実施した結果、294者(団体を含む)から計1,120 件の意見が寄せられました。これらの意見に対するコメントから、国土交通省の考えを分析します。

住宅宿泊事業(新法民泊)とマンション管理規約


分譲マンションにおいて民泊をめぐるトラブルを防止するためには、民泊を許容するか、しないかについて「あらかじめ区分所有者間で議論した上で、その結果をマンション管理規約上に明確にしておくことが望ましい」とされています。マンション管理組合内で議論された内容を明文化することで、自分たちのマンションの民泊に対する考え方を第三者にも確認できるようにしておき、後の紛争防止に役立てます。

国土交通省は、実際の運用に当たり、マンションで住宅宿泊事業を実施する場合は、住宅宿泊事業の届出の際に、民泊を禁止する旨の管理規約などがない旨を確認する方向で制度設計を検討中です。

しかし、多くの利害関係者が係わる管理組合において、規約の改正が迅速にできるケースばかりとは限りません。「法律の施行までに規約の改正が間に合わない場合(現状の標準管理規約のままの)その取扱いはどのようになるのか?」という疑問については、管理組合の承諾等により確認する方向性のようです。

国土交通省の以上の見解を踏まえると、分譲マンションでの住宅宿泊事業(新法民泊)は、管理組合が積極的に推進しない場合(民泊化可能との規約改正を行う又は個別に承諾する)は、困難と考えられます。

住宅宿泊事業法においては、住宅宿泊事業を行う住宅には標識を掲示するとともに、住宅宿泊事業者又は住宅宿泊管理業者に対して宿泊者への周辺地域の生活環境への悪影響の防止に関し必要な事項の説明義務や、苦情対応義務などが設けられています。さらに、国土交通省は、個々のマンションごとの事情にかんがみ、管理規約の細則等で住宅宿泊事業に関するルールを定めることを推奨しています。

近隣住民への事前説明

住宅宿泊事業法において、住宅宿泊事業者による「周辺住民への説明義務」は課されていません。他方、国家戦略特別区域法における外国人滞在施設経営事業の特定認定を受ける際は、あらかじめ近隣住民説明が必要です。

住宅宿泊事業者は、民泊(住宅宿泊事業)を行う施設に標識を掲示する必要があり、住宅宿泊事業者又は住宅宿泊管理業者は、宿泊者への周辺地域の生活環境への悪影響の防止に関し必要な事項の説明義務や、苦情対応義務などが課されます。加えて、住宅宿泊事業法に係るガイドラインにおいて、事業者から周辺住民への事前説明を行うことを推奨することを検討していく予定です。

民泊に対する苦情対応


住宅宿泊事業者に対する指導監督は、都道府県等が行うこととされています。また、住宅宿泊事業者は、周辺地域の住民からの苦情及び問合せについては、適切かつ迅速に対応しなければならないとされています。今後は、民泊に関する苦情窓口についても設置される予定となっています。

民泊については、近隣住民からの治安悪化の懸念、騒音トラブルやゴミ出しマナーなどが以前から問題視されていました。国土交通省のパブリックコメントへの回答からも、特に事業者と住民間の軋轢が生じやすい分譲マンションでは、他の住民への配慮の必要性を読み取ることができますね。都市部の分譲マンションにおいて、果たして新制度(住宅宿泊事業法)の活用が広がるのは難しいといえるのではないでしょうか。

 
  • line
  • facebook
  • twitter
  • line
  • facebook
  • twitter

本サイトに掲載されているコンテンツ (記事・広告・デザイン等)に関する著作権は当社に帰属しており、他のホームページ・ブログ等に無断で転載・転用することを禁止します。引用する場合は、リンクを貼る等して当サイトからの引用であることを明らかにしてください。なお、当サイトへのリンクを貼ることは自由です。ご連絡の必要もありません。

このコラムニストのコラム

このコラムニストのコラム一覧へ