毎週月曜配信「石井くるみの みんぱく!最前線」
民泊の営業許可申請や運用管理に詳しい、行政書士の石井くるみさんが、毎週民泊の最新情報をお届けします。
今回からの数回は、今月成立した「住宅宿泊事業法(民泊新法)」を解説していただきます。
なぜ、民泊新法が必要だったのでしょうか?まずは、民泊業界を取り巻く事情について知りましょう(リビンマガジンBiz編集部)。
(画像=写真AC)
2017年6月9日(金)、住宅宿泊事業法(通称:民泊新法)が成立しました。
住宅の一部やマンションの空き室を宿泊施設として提供する「民泊サービス」については、ここ数年さまざまな議論が重ねられてきましたが、ようやく1つの形としてまとまったことを感慨深く感じています。
本コラムでも、これから「住宅宿泊事業法」の成り立ちの経緯とその概要について説明していきたいと思います。
住宅宿泊事業法(民泊新法)成立の経緯
生徒:そもそも、どうして民泊について新しい法律が作られたの?
くるみ先生:背景として「民泊に宿泊したい」「宿泊させたい」というニーズの増加・多様化が挙げられます。以前は旅行といえばホテルや旅館に宿泊するのが当たり前でした。しかし、近年、日本では海外から訪れる外国人旅行者が増え、ホテルなどの宿泊施設が不足しています。また、IT技術の進展によりairbnbをはじめとする、web上の宿泊施設仲介プラットフォームが登場し、個人が自宅や所有するマンションの部屋などを簡単に宿泊施設として提供できるようになったことも大きな要因です。
生徒:そんなに海外からの旅行者が増えているの?
くるみ先生:観光庁の公表している統計データによると、2011年に日本を訪れた外国人旅行者数はおよそ622万人。それが、昨年2016年では約2,404万人まで増えているそうよ。
生徒:5年で約4倍も!?すごい増加率だね!!
くるみ先生:そのとおり。増えた外国人のためにホテルを建設しようと計画しても、土地を確保して、設計プランを立て、工事を行うなどしなくてはなりません。すぐには対応できませんね。他方では、日本では最近、空き家や空室が社会的な問題にもなっています。これら遊休資産をうまく活用できないかというアイデアとしても「民泊」に注目が集まりました。
生徒:なるほど。それで民泊が広がったんだね。
くるみ先生:ところが、空き部屋を利用した民泊には、いろいろ難しい課題があるの。
生徒:どんな課題?
くるみ先生:例えば、自宅の近隣を、頻繁に見知らぬ外国人旅行者が頻繁に出入りしているのが治安上問題だと感じる近隣住人がいたりするの。そのほかにも、グループの団体旅行者による夜の騒音被害や文化の違いから生じる摩擦、分別されないままごみが廃棄されるなど、民泊施設の近隣住民への配慮が欠ける場合もあります。
生徒:たしかに、毎日のことだとしたら、落ち着いて生活できないね。
(画像=写真AC)
くるみ先生:これが、旅館業の営業許可を得て営業している事業者であれば、苦情の相談先もはっきりしているから解決しやすいはず。でも、民泊施設の場合は、日々旅行者は入れ替わるし、営業主体もはっきりしないケースが多いため、近隣トラブルが多く発生してしまいました。
生徒:それで民泊の運営に関する新しいルールを作ったんだね!
くるみ先生:そのとおり!多様化する宿泊ニーズに対応して普及が進む民泊サービスの健全な普及を図るため、事業を実施する場合の一定のルールを定めた法律が「住宅宿泊事業法案」なのです。