不動産ビジネスを助ける少額短期保険

不動産ビジネスの周辺には広大なビジネス世界がひろがっています。不動産ビジネスを助けてくれる、さまざまな周辺ビジネスにスポットを当てます。(リビンマガジンBiz編集部)

画像=写真AC

少額短期保険は不動産ビジネスと切っても切れない関係にあります。なかでも賃貸住宅の入居者や貸しビルのテナント向けの家財保険は必須です。

少額短期保険とは、通常の保険とはどう違うのでしょうか。

少額短期保険とは
一般社団法人日本少額短期保険協会によると、「保険業のうち、一定の事業規模の範囲内において、保険金額が少額、保険期間1年(第二分野については2年)以内の保険で保障性商品の引受のみを行う事業として、「少額短期保険業」が設けられています。」(同協会ホームページ)

この説明の通り、文字通り少額で短期の保険を指します。
少額とは
1.死亡保険300万円以下
2.医療保険80万円以下
3.疾病等を原因とする重度障害保険300万円以下
4.傷害を原因とする特定重度障害保険 (※2)600万円以下
5.傷害死亡保険傷害死亡保険は、300万円以下
(調整規定付き傷害死亡保険の場合は、600万円)
6.損害保険1,000万円以下
7.低発生率保険(※3)1,000万円以下
を指します。

2006年になってスタートした保険制度で歴史は浅いものの、毎年新たな保険商品が生まれています。少額短期保険業者は保険会社に比べて規制が緩やかで参入しやすいという特徴があります。

例えば、保険会社をやるには金融庁長官の「免許」が必要ですが、少額短期保険会社は地方財務局への登録で開業可能です。また、保険会社が最低資本金10億円も必要なのに対して、少額短期保険会社は1000万円で良いなど、小規模事業者の参入も可能です。

また、保険会社は生命保険と損害保険の両方の商品を作ったり、販売したりすることはできません。一方で少額短期保険会社ならば、生保、損保のどちらも扱えるメリットがあります。

こうしたメリットを受けて、保険会社による少額短期保険会社の設立も増えています。小回りのきく少額短期保険会社を、保険市場の新しいニーズをくみ取るために活用しているようです。

詐欺事件によって新制度が議論される

このようなバラエティ豊かな少額短期保険の世界ですが、少額短期保険は前述のように2006年に新たに始まった制度です。なぜ、この時期に新たに始まったのでしょうか。

時代は1990年代まで遡ります。当時の我が国では、無認可共済と呼ばれる団体が多数存在していました。共済とは労働組合や農協などの特定範囲の人達によって構成される相互補助を目的とした団体です。共済のメンバーが少しずつ、お金を出し合い、事業に影響を与えるような損害が発生したり、メンバーに健康上の問題が生じたりした時などには、出し合ったお金の中から補償金を支払う仕組みでした。

90年代に入ると共済の便利さが認知されるようになり、様々な領域でつくられることになります。例えば、一部の賃貸住宅のサブリース会社では物件オーナーによる共済を作り、滞納家賃が発生した場合は共済から補填される仕組みを設けるなどしていました。

しかし、共済には法律によって規制されるものと、根拠法がない共済があり、一部の共済は都合のよい資金源として悪用されるようになっていました。

なかでも、大きな問題となったのがオレンジ共済です。オレンジ共済は政治団体によって運営される共済で、「スーパーオレンジ共済」として年利7%以上の高利回り金融商品として販売されました。しかし、実態は新しい出資のうちから、配当を支払う典型的なポンジスキームで、資金の大半は共済代表の政治活動や遊興費などに使われていました。後に社会問題化しましたが、代表は国会議員に当選しており、現職国会議員の特権により逮捕されないなど制度の矛盾や関係者が毎夜のように銀座のクラブで散財するなど、ワイドショーや週刊誌上を賑わせることになりました。

こうした国民的な注目度の高さから、無認可共済の問題がクローズアップされることになり、新たな制度が議論されることになりました。

そうして、誕生したのが少額短期保険だったのです。

(取材・文 小野悠史)

 
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