不動産を扱う方ならご存知かと思いますが、今回は不動産の一物三価(公的評価)についてご説明いたします。

 1.地価公示・地価調査
 まず、地価公示ですが、これは1月1日を基準として国が調査を行います。全国の任命を受けた不動産鑑定士により、土地取引データに基づいて算出された地価で、毎年3月下旬に発表されます。都市部では、バブルの時期には時価水準に追い付かないケースもありましたが、基本的には時価の水準です。
 地価調査は、7月1日基準で都道府県が調査を行います。こちらも手順は地価公示と概ね同じで、水準も時価となります。地価公示や地価調査は新聞などでも発表されますが、よく見てみると、価格が違う地点のほうが多くあります。特に地点数は、地価公示の方がかなり多くなっています。

 

 2.路線価
 次に、相続税の評価などで用いる「路線価」ですが、これはさきほどの地価公示・地価調査の水準、つまり時価のちょうど8割です。平成4年度の税制改正要綱として閣議決定されていますのでこれは政府の決定事項です。
 なぜ8割なのでしょうか。路線価の正式名は「財産評価基準書 路線価図」ですが、これは相続税の評価だけでなく、企業が土地を売買する際の価格妥当性の判断根拠にもなります。時価の8割程度とすることで、「これより安いのはさすがにおかしいでしょう」という余裕を見ている、と考えることができます。さらにいえば、地価が大幅に変動する時期でも、年間に20%以上は上がらないということも前提となっていると考えられます。

 3.固定資産税評価額
 最後に固定資産税評価額ですが、こちらは地価公示・地価調査(=時価)の7割とすることが平成6年評価基準告示で定められています。固定資産税は毎年払うもので、住宅用などで軽減措置が図られているものの、こちらも時価の7割とすることで実質的に納税者の納得を得やすくしていると考えることができます。

 4.最後に
 土地の評価額がわからなくて困った時には、まずこの土地の一物三価、それぞれの評価の水準をよく理解しましょう。例えば固定資産税の評価がわかれば、その数字を70%で割り戻すことにより、時価水準(公的な)が求められるということです。
ただし、これは参考としての数字です。不動産屋さんが路線価図を持ってきて「あなたの土地は路線価がこの価格ですから、80%で割り戻した価格が時価ですよ」と言ったとしても、必ずしも信用してはいけません。あくまでもこれは公的な評価のバランスであり、実際のマーケットではこれより高く売れる場合もあるのですから。

 
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