マイホームについては、取得もさることながら「住み替え」の相談も少なくはありません。
背景やご事情はもちろん人それぞれ。でも、ご自身のプランを考える上では
他人の話も何かしらヒントになってくれることもあるやもしれません。

そういうわけで、開示できる限りでご相談事例をかいつまんでご紹介してまいります。

さて、前回は独身女性に特に多い「資産目的で購入された自宅マンション」、
これを一転、売却せざるを得なくなった方のご相談事例でした。
今回は2回に分け、「セカンドライフを迎えたシニア世代」の例となります。

<「住」対して柔軟な考えのシニアが増えている>

吉岡さん(仮名65歳)、お勤め先を辞められた後は、かねてよりの希望をかなえるべく、
ご夫婦で緑多き新天地でのスローライフを計画されていました。
そのための、都心のご自宅マンション売却後の資金プランでのご相談でした。
一方、来杉さん(仮名75歳)は、50年以上暮らした郊外の一戸建てを手放したお金で、
ご夫婦ふたり利便性のよい都心のコンパクトなマンションへ引っ越しを検討されています。

ひと頃に比べ、シニア世代の住み替えへの志向は、アクティブ傾向にあると思われます。
夢を具現化したマイホーム。長いローンの果てにやっと手にしたと思っていた終の棲家。
これを処分等して住み替えるのですから相当にアクティブで柔軟な思考ですよね。
家を買ったら一生そこに縛られる、という概念は徐々に希薄化しているように感じます。
実際、費やす様々なエネルギーを考えてみても、家族の数やライフステージにあわせ、
居住面積や家財等を徐々にコンパクトにしていくのは、合理的な考えともいえそうですね。


 

<売却し住み替えた、「その後」はどうする?>

さて、状況の異なる吉岡さんと来杉さんですが、共通して気になる点がありました。
至極単純な話ですが、「住み替えたその後はどうするのか?」ということ。
でも、それを考える必要性をご理解いただき、ご夫婦で一緒に時間をかけて、
何度も話し合わせていただきました。

結果、各々のご夫婦の出された結論は、当初と少しだけ変わっています。

まず吉岡さんご夫婦は、当初の希望通りスローライフを始められました。
ただし、移住先選びに若干の条件を加えたこと。
そして「ある財産づくり」に、相当な時間と工夫を要されてからのスタートでした。
比較的最近にご相談いただいている来杉さんご夫婦は、
金融資産の管理方法や経常的収支についての見直しは済ましたものの、
肝心のご自宅の処分案はまだ保留中、というか現在進行形で準備の真っただ中にあります。

二組のご夫婦には、概念としての「遠い先の終の棲家」でなく、
終を迎えるにあたっての現実的な準備」をどうお考えであるのかを伺いました。
具体的には、「ご自身達の要介護期を、どこで、どのように」受けるのか。

要介護期のことを考えなくてはならないのは、
現在の家に住み続ける場合でも住み替える場合でも、共通の課題です。
自分らしい介護の受け方とは時間の経過とともに、
その価値観や希望が変わっていくものでしょう。

一時期に結論を出せる問題ではなく、試行錯誤の繰り返しに違いありません。
でも、自分たちなりの答えは、とにかく仮でもいいからプランを立て、
それなりに意識し、そして時間をかけて準備していかねば、
いきなり見つけることなど難しいのではないでしょうか。

このときに、おそらく不可欠となるのが「ある財産」をどのような形で手に入れるのか。
それは、どのような介護を受けるのかと同じ意味であるような気がしています。

 
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