9月30日に、岩手県一関市で、園児14人がスズメバチに刺されたという報道があった。虫や動物が住まいに与える害や問題は、深刻だ。自身も害獣による被害に悩まされたことがあるFPオフィス ノーサイド 橋本秋人代表に聞いた。(リビンマガジン編集部)

住まいの害虫には多くの種類がありますが、大きく分けると「住宅に害をあたえる害虫」と、「人に害を与える害虫」があります。

住宅に害を与える害虫

・シロアリ
住まいの害虫と言えば代表格はシロアリです。日本では、主にヤマトシロアリとイエシロアリが建物に大きな被害を及ぼします。

ヤマトシロアリは、ほぼ全国に生息し、イエシロアリは西日本に多く生息しています。シロアリは、「家を食べる」と言われるように、主に床下の木部を食い荒らし、建物の構造自体に被害を与えます。新築住宅では、防蟻工事を施していて、多くの建築会社は10年間保証をしていますが、薬剤の効果は徐々に薄れてきます。定期的な防蟻工事が必要になります。

・ヒラタキクイムシ

こちらもよく見られる住まいの害虫です。幼虫が住宅の木部や木製家具を食べます。家具に小さな穴があいていることで気がつくこともあります。ヒラタキクイムシもシロアリと同様に、新築住宅では保証の対象になることが多いですが、建築会社の保証期間は一般的に2年間です。その後も発生しないよう予防することが大切です。

人に害を与える害虫

住人に被害を与えます。その中でも病原菌を媒介し人の健康に害を及ぼしたり、人を直接攻撃したりする衛生害虫と、人に実害はもたらさないが見ると不快を与える不快害虫がいます。

衛生害虫

・ハエ、蚊、ノミ、ダニ、ハチなど
不快害虫
・ムカデ、クモ、アリなど
両方
・ゴキブリ

いずれも防除剤や防虫剤で対処しますが、日ごろから害虫が発生しないための環境維持も大切です。
また早期発見を心がけて、大量発生するなど、被害が拡大しないうちに対処しましょう。

住まいの害獣

住まいに害を与えるものは害虫だけではありません。さまざまな動物もいます。
・ハクビシン
近年、市街地でも多く見られるようになり、害獣の代表格になりました。屋根裏などに入り込み、騒音や糞尿の被害をもたらします。
・ネズミ
建物の隙間から侵入し、建具や柱などをかじり建物に被害を与えます。
・野鳥(ハトなど)
住み着くと、鳴き声による騒音や糞の被害を与えます。

その他、アライグマやイタチなども住まいに侵入する害獣として知られています。
動物も、一度侵入されたら駆除は厄介です。繁殖力が強い動物が多く、放っておくと、数も増えていきます。やはり害虫同様、早めの発見と対応を心がけましょう。

私の防鳥奮闘記

実は私も、鳥の駆除にとても苦労した経験があります。
今年の春先、所有アパートの管理会社から連絡がありました。聞けば、入居者から「鳥がバルコニーに居座って困っている」と連絡があったとのこと。本来は、オーナーが対処すべき問題ではないのですが、連絡を受けた管理会社も、珍しいケースでどう対応して良いかわからないとのことでした。翌日、管理会社の方と一緒にアパートに様子を見に行きました。

建物の外からバルコニーを見てみると、尾の長いつがい(ペア)の鳥が、シャッターボックスの上に仲良く並んでいます。今度は、入居者の部屋からバルコニーに出てみました。鳥は逃げましたが、バルコニーの床一面に大量の糞と小枝が散乱していました。シャッターボックスの上を覗くと、幸い巣はまだありません。どうやら巣作りの準備をしていたようです。


(絵・橋本秋人氏

巣を作られてしまうと大変です(理由は後述します)。そこで、鳥が嫌うと言われているCDを屋根の樋(とい)から吊り下げました。さらに、100円ショップで購入したゴムのヘビをシャッターボックスの上に置き、鳥たちが来なくなることを祈りながら引き上げました。


(撮影=橋本秋人氏)

少ししてから、入居者に様子を聞くと、効果てきめん、寄りつかなくなったとのことで一安心でした。

…ところが、それから2カ月ほどして、またも同じ鳥が来ているとの連絡が…。
どうやらヘビやCDにも慣れてしまったようです。


(撮影=橋本秋人氏)

「どれだけうちのシャッターボックスが好きなんだ」と思いつつ、最終的に、ホームセンターで防鳥ネットを購入し、鳥が侵入できないように、屋根の樋からバルコニーの外側まで張りました。 四苦八苦しながらなんとか張り終えました。

(絵=橋本秋人氏)

その後ようやく鳥は来なくなったとのこと。最終的には防鳥ネットが最も効果があったようです。
ちなみに鳥の種類を調べてみたところ、「ハクセキレイ」という鳥でした。衛生害虫を食べるので益鳥とも言われていますが、糞には細菌が含まれている場合もあり人に感染する恐れもあるそうです。


ハクセキレイ (画像=写真AC)

鳥の巣の撤去に要注意!
実は、卵やヒナがいる巣は「鳥獣の保護及び狩猟の適正化に関する法律」により撤去すると法律違反になるそうです。
そのため鳥の侵入を発見した場合、早めの発見と対処が重要です。

空き家が増えると害虫・害獣も増え、最も恐ろしい害獣の侵入も…

総務省発表によると、平成25年時点での全国にある空き家の総数は、約820万戸でした。全国の住宅のうち、なんと7分の1が空き家ということになります。その内、賃貸用・セカンドハウス・販売中の建物を除いた、いわゆる放置空き家は約318万戸です


(画像=写真AC)

害虫や害獣が、空き家に与える被害は深刻です。
空き家は、空気の入れ替えがないため湿気が生じやすく、動植物が生息するのに適した環境になりやすいです。
併せて、建物が傷むにつれて、壁がひび割れて隙間が多くなったり、給排水管がはずれたりして、そこから様々な昆虫、動物、植物が入り込んできます。
さらに、誰も住んでいないため早期発見が難しく、気がついた時には大量繁殖していたり、建物に甚大な被害をあたえていたりすることがあります。

その中でも、やはりシロアリには要注意です。
その他、ムカデ、アリが家の中を荒らしまわり、時にはスズメバチが巣を作ったりもします。
動物では、ネズミ、最近ではハクビシン、アライグマなどの報告も珍しいものではなくなりました。

そして、空き家にとって最もやっかいな害獣…
それは、人間でした!
今年だけでも、空き家に勝手に人が住み着いて困った、という話を複数の方から聞いています。
想像するだけでもぞっとする話ですが、どのケースも、侵入者を追い出すために、たいへん苦労しています。

害虫や害獣の侵入を防止し、被害を発生・拡大させないためには、住まい・空き家に限らず、建物を良好な状態に保ち、常日頃から意識して管理するように心がけることが大切です。

 
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