橋本秋人「使える空き家ビジネスのススメ」


社会問題化する「空き家問題」は不動産業界のビジネスチャンスでもあります。

そこで、空き家に関する講演やセミナー登壇で活躍する橋本秋人さんに、空き家を取り巻くビジネスの羅針盤になるような知識を紹介していただきます。読めば空き家問題、恐れるに足らずと思える連載です。


今回は、今後の空き家ビジネスにも大きな影響を与えるであろう、国が定めるまちづくりについての大きなテーマを2つ解説します。(リビンマガジンBiz編集部)


(画像=写真AC)

前回まで3回にわたり、空き家の抑制のために国や自治体が講じている具体的な施策や動きについてお伝えしてきました。

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これら全ての施策は、ある大きなビジョンを具現化するために行われています。

今後空き家ビジネスを進めるにおいても、全体的なビジョンと流れを掴んでおくことは重要です。日本は将来に向けてどのようなビジョンを持っているのでしょうか。

国土のグランドデザイン2050


2016年、国交省は国土づくりの理念を「国土のグランドデザイン2050」として公表しました。

キーワードは、「コンパクト+ネットワーク」です。

将来の人口減少に対応するために、都市機能や居住エリアを集約させ都市をコンパクト化します。そして、インターネット等の情報通信技術を活用し、機能的な都市の形成を目指しています。

「国土のグランドデザイン2050」を策定するにあたり、国は注目すべき試算を行っています。

全国を1k㎡毎のメッシュ状に細かく分け、各エリアを2010年と比較して2050年時点にはどの程度の人口増減があるのかを試算しているのです。

※試算結果:国交省「1k㎡毎の地点(メッシュ)別の将来人口の試算について」 

試算によると、2010年時点に人が居住していた地点の内、19%が2050年には人が全く住まなくなる、いわゆる非居住地化地点になるとされています。また、44%の地点で人口が半分未満になってしまうとされています。非居住地化地点と人口が半分未満になる地点を合計すると、実に6割以上の地点で人口が半分未満になってしまうということが分かります。

その中でも、最も人口が減少する秋田県の減少率は、2050年までに47%と人口がほぼ半減すると予測されています。

また、「人口が半分未満になる地点」が最も多いのは高知県で、実に82%の地点で人口が半分未満になります。高知県は非居住地化する地点の数でも全国で最も高い31%となっています。

東京でも人口減少は13%に上ります。なお、最も低いのは6%減の沖縄県でした。

都道府県ごとのMAPも作成されています。ここでは高知県のMAPを紹介します。

 

(画像=国交省「1k㎡毎の地点(メッシュ)別の将来人口の試算について」より)

MAPを見ると地点毎の人口の増減状況がよくわかります。

非居住化(青)と50%以上の人口減少(緑)の割合が多いことに気がつくと思います。50%未満の人口減少地点(黄)も含めるとほとんどの地点で人口が減少し、増加(赤)は数えるほどしかありません。

このMAPは、今後不動産ビジネスの戦略づくりを行うにあたって参考になります。

皆さんの居住地や事業エリアについてもご覧になることをおすすめします。

立地適正化計画


国交省は、「コンパクトシティ+ネットワーク」のまちづくりを進めるために、立地適正化計画制度を創設しました。

立地適正化計画とは、居住機能や都市機能をコンパクトに集中させ、持続可能な都市構造を再構築するためのマスタープランです。

マスタープランは各自治体が策定します。そこでは鉄道駅や市街地を中心に「都市機能誘導区域」「居住誘導区域」を指定します。

都市機能誘導区域では、医療・福祉・商業等の都市機能を集約し、各種サービスが効率的に機能することを図ります。居住誘導区域は、一定エリアにおいて人口密度を維持するために設定され、生活サービスやコミュニティ確保や持続されることを目指します。

どちらにも指定されなかった地域については、今後居住や宅地化の制限が行われ、インフラの維持・整備も抑制されることになります。

【立地適正化計画のイメージ図】

 

(画像=国土交通省HP「立地適正化計画の意義の役割」より)

2017年12月末時点で、全国384の自治体が具体的なマスタープランを策定しています。2018年3月1日にはさらに166団体が取り組みを公表しており、今後も増加するとみられます。

立地適正化計画の作成状況

「鳥の目」「虫の目」「魚の目」を持つ


空き家ビジネスを行うにあたって、立地適正化計画を理解しておくことは重要です。

なぜなら、住宅の購入や売却、利活用、不動産投資、事業のエリア展開まで広範囲に渡り影響を与える可能性が大きいからです。

空き家ビジネスに携わる方は、今後も行政の施策を注視し、全体の流れやエリア、個々の物件などを見る、いわゆる「鳥の目」「虫の目」「魚の目」を持ちましょう。

 
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