2019年2月、『競売不動産の教科書』(山田純男・竹本裕美 著)がプラチナ出版より出版された。書籍タイトルのとおり、競売物件に興味がある一般投資家やノウハウを付けたいと考えている不動産従事者はもちろんのこと、不動産業界のベテランであっても舌を巻く内容となっている。

そのためか、「競売不動産」というニッチなテーマにもかかわらず、累計4万部(前書名:『競売不動産の上手な入手法』初版から改訂11版までの累計部数)を超えるベストセラーだ。

著者であるワイズ不動産投資顧問・山田純男代表に話を聞くと、これからの不動産業界で成功するためには競売のノウハウを持つことは重要であると語る。著書の紹介とともに紹介する。

競売市場は需要拡大・物件数減少

そもそも競売市場はどのような状況なのだろうか。

山田氏によると、バブル経済崩壊後1998年の東京地裁での競売申立は9,176件、不景気のあおりを受けて入札対象不動産の7割が不売で、ピーク時は東京地裁だけで17,000件もの物件が競売対象となっていたという。

景気回復とともに売却率が改善され、競売物件数は下降していったが、2008年のリーマンショックや、2011年の東日本大震災などで再び販売不振が起こり、競売物件数が増加した。

現在では金融緩和や、アベノミクスなどによって、不動産の購入意欲が高まり、競売物件数は激減している。2018年、東京地裁での競売物件数はわずか800件ほどだった。

出典:司法統計年報

しかし、世界的な金余りや不動産投資への加熱、円安による外国人投資家の市場流入などにより、競売物件は高い需要があるというのだ。つまり、競売物件数は減少したものの、競売物件を購入したい投資家は増加傾向にあるのだ。

競売市場が小さくタイトになる一方で購入需要が高いということは、これまでのように割安で買える状態ではありません。いかにしてうまく購入できるかが重要になってきます」(山田氏)。本著ではそういったテクニカルな部分にも触れている。

競売不動産の教科書
山田純男 竹本裕美
プラチナ出版 (2019-02-04)
売り上げランキング: 419,671

競売物件に増加の兆しあり。ビジネスチャンスが生まれる!

ワイズ不動産投資顧問・山田純男代表

山田氏は「2018年が、競売物件減少の底」と推測する。

なぜならば、差し押さえの数が2017年よりも2018年は増加し、それらが競売市場に流れるのが2019年以降になるためだ。確かに、2018年の1年間を見ても地銀の不正融資に始まり、投資不動産会社の預貯金改ざん、それらに関連した金融機関の貸し渋りなど、競売物件が増加する要因が多々考えられる。

「2019年は、前年よりも100件ほど物件数が増えるでしょう」(山田氏)

購入の需要が高い中で、物件が増加傾向にあるのであれば、競売市場にはこれから大きなビジネスチャンスがあるといえるだろう。買取再版会社の仕入れチャネルの拡大などにも期待できるという。

ワイズ不動産投資顧問では不動産会社からの委託入札も行っており、延べ200件以上の実績がある。

近年では中国の投資家とのコネクションを持つ不動産会社からの依頼もあるという。バブルだった北京や上海などの不動産投資市場に天井感を感じた投資家が、相対的に割安に見える日本の物件、中でも競売物件を購入するニーズが高まっているという。

山田氏は「中国人投資家への競売物件の販売は、ひとつのキーワードになってくる」と語る。

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一番読んで欲しい章は、Part 5・6・7!

『競売不動産の教科書』は、競売の流れや仕組み、入札方法、税務、市況など、競売に関わるあらゆるトピックスを網羅している1冊だ。

山田氏は、そのなかでもChapter1のPart5・6・7章が最も読んで欲しい部分だという。

Chapter1 競売不動産の入手法


 Part5 特殊物件について

 Part6 買受けの事例研究 その1(居住用物件の場合)

 Part7 買受けの事例研究 その2(投資用物件の場合)

競売物件は物件を購入して終わりではない。

購入した物件が、「底地」「借地権付き建物」「法定地上権付建物」など特殊な物件であるケースもしばしばあるのだ。「Part5 特殊物件について」では、そういった際の諸条件や法的な規制、トラブルの回避方法などについて大別する6パターンをケーススタディ的に言及している。

また、競売の最重要ポイントは、競売の明け渡しや賃貸の書き換えなどを自らが行わなければならない点だ。占有の確保や大家としての切り替えなども自分でやらなければいけない。

Part6 買受けの事例研究 その1(居住用物件の場合)」「Part7 買受けの事例研究 その2(投資用物件の場合)」では、山田氏が実際に取り扱った競売物件入札の様子が記されている。

・購入検討者の希望物件が一般市場にはなく競売にあった際、いかにして買受予算を立て、明渡交渉費用を見積もるのか

・入札価格検討の考え方

・明渡交渉の事例

・賃貸契約の継承方法

これら競売入札に関わった際にぶつかる難所も克明に解説している。「入札価額には戦術的に端数である2,000円を付けた」など、実際のテクニックなどにも触れており、読み物としても十分に楽しめる内容になっている。

競売物件から底地ビジネス!?あらゆるチャンスが眠っている!

ワイズ不動産投資顧問は競売物件と底地ビジネスを中心とした不動産業を行っている。

【関連記事】

底地ビジネスとは、地主から底地を買取るというものだ。借地人からの地代は少額だが滞納の危険性は低い。また、買取価格によっては利回りが向上し、投資用不動産として投資家向けに販売することも可能だ。「大手不動産会社が競合しない市場」「管理運営のコストがかからない」などのメリットがある。



競売物件が減少傾向にあった昨今までは、滞納税回収のための「公売」に多く登場する底地を中心とした底地ビジネスに舵を切っていた同社だが、実は競売と大きな関わりがある(本書では「公売」に就いても解説されている)。

また、一般の市場では、借地権付不動産は5%ほどしかない。しかし、競売市場では10~15%ほどが借地権付なのだという。地代や契約年数などを事前調査することで、場合によっては底地を買取ることもでき、更なるビジネス拡大も狙うことができるのだ。


簡単・安心な競売不動産の入手方法に加えて、更なる事業拡大やビジネスノウハウを身につけたいのであれば、一読の価値はあるだろう。

競売不動産の教科書
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