リアンコネクション・織田京太社長

不動産営業を熟知しているからこそ、営業活動の課題が見え、DXによって効率化できるポイントがわかる。リアンコネクション(東京・新宿)の織田京太社長は、18歳で不動産業界に飛び込み、勤めたすべての不動産会社でトップ営業だった。しかし、なぜか心は満たされないままだった。

同社が提供する「オーナーズガーデンPro」は、かつてトップ営業だった織田社長が、現役時代に感じた営業効率のエッセンスが詰まっている。

今回は、織田社長に自身の営業時代の話を聞くとともに、「オーナーズガーデンPro」に込められた思いや、近日リリース予定の新サービス「資産Navi」について紹介してもらった。

効率や実績よりも、仕事の本質を考えた不動産テックサービス

「オーナーズガーデンPro」

物件仕入れのための1400件の電話は千三つ屋の名残に過ぎない

かつて投資用不動産の営業をしていたとき、重要な仕事が物件の仕入れだった。働いている時間の多くは、この仕入れに割いていた。

業者会、ゴルフ、飲み会、飛び込み、電話営業など、仕入れに繋がることは全てやっていました

1日400件は宅建業者に電話を入れる。そのうち、担当者に電話がつながるのが約半分ほど、それを5日間、繰り返せば1つは売り物件が見つかるが、実際に仕入れができるのは、そこからさらに数件に1つだけ。

数千分の一の確率を探す業務は、かつて千三つ屋と呼ばれた時代の名残のようだった。

効率を考えると、『無駄だ』と思いながら仕事をしていました。さすがに、この方法は…もう止めようかな…? もうやめよう…と思っていると、奇跡のような完璧なタイミングで物件が見つかる。そして、やっぱりこれだ!と思いなおして、また何度も電話して、宅建業者の集まりに顔を出し続けていました

非効率ではあるが、実績は確実に上がっていた。

―これで成果を上げ続けているのだから問題ない。そう考えることもできた。

金銭面を考えれば、これを続けた方がよい。ただ、自分の中で抗い難いかったのは仕事の本質についての問題です。不動産営業は物件を買ってくれるお客様のおかげで経営が成り立っているのに、仕入れのために使う労力が、お客様に使う労力よりもはるかに多い。この状況はおかしい、なんとか変えたいと思うようになりました

もっと簡単に、効率よく不動産営業同志が知り合える方法はないのだろうか。

マッチングアプリやSNSのように、交際相手や友達を探すツールは数えきれないほどあるのだから、不動産業者同士がネットで知り合える仕組みを作ったらどうか?

そう思いついてから、投資用不動産の販売会社を思い切って廃業。

私財を投じて「オーナーズガーデンPro」を作った。

2020年リリースした直後にコロナ禍が本格化し、緊急事態が宣言されるなかで、全国の不動産会社も営業活動ができず、出社すらできない状況に陥った。業者会ができなくなり、ゴルフも飲み会もない中で、「オーナーズガーデンPro」は非常に注目されたという。

不動産ビジネスの悩みを地に足をつけて解決

営業担当が出会いはビジネスチャンス拡大の種

不動産営業がこなすタスクは多い。誰もが預かった物件を販売したいし、もっと物件を仕入れたい。

不動産営業はやりたいことがたくさんあります。業者会では、『収益物件があったら、紹介してください』くらいしか言いません。でも、仕入れの仕事をこなしながら、同時にオーナーから売却の相談を受けていたりします。「オーナーズガーデンPro」ならば、自分が求めるものをプロフィールに登録しておくことができます。ユーザーはその人のアカウントを見れば、探している物件種別ややりたいことがわかります。アプリで簡単に知り合いになれるだけでなく、交流会以上にディープに自分の要望を知ってもらうこともできます

マッチングするだけでなく、どんな要素で知り合えるのかに重点を置いた設計にしたのが

収益物件の管理メインにしている宅建業者であっても、管理物件のオーナーから「一部の土地を売りたい」とリクエストされることがある。そこで、「無理です」とは答える営業はいない。「少し時間はかかりそうですが、買う人を探します」と答えてとりあえずはレインズに掲載して、ただ、ただ時間を浪費してしまうのだ。

そんなときに使ってもらえば、買主側の営業や自社で物件を仕入れたい人が簡単に探せます。そうなると、お客様の売買のお手伝いが簡単にできるようになる。思えば、物件を探すサイトはたくさんあるのに、不動産営業のニーズが集まったサイトはないんです。「オーナーズガーデンPro」で、そこを目指したいと思って、開発にのめりこみました

不動産ビジネスは幅広いうえに、個別性が強い。つまり、どんな優れた営業パーソンでも必ず得手、不得手がある。物件を誰かに渡すとき、例えば23億円くらいの1棟ものを売る人が頭の中にイメージできればいい。しかし、ワンルームのオーナーチェンジとなると、完全に勝手が違うものだ。こうした物件を得意とする営業パーソンを探したり、繋がったりするのには、また労力がかかる。

営業同志が簡単に繋がれば、お客様に時間を使えるようになります。例えば、営業時代に何度もあったのが、お客様から『こういう物件が欲しい』と言われて、物件をご案内に行ったら、物件が全然掃除されていない状態だったといったケースです。お客様の希望条件には合うけれど、こんな状態の物件を見せたら絶対に決まらないし、私の見る目まで疑われる。これは、売主側の営業が掃除しておけば、全然違う。物件とお客様に時間を使えれば、そういう小さなことだけど大切なものに、手が回るようになることだと思います。

一次情報の取得と業者間の繋がりより、もっと時間をかけること

お客様の方を向いてやる業務を増やすことで売り上げ増と満足度を高める

業者の交流会も、効率が良いとは思いませんでしたね。短い時間で何人も名刺交換できますが、後から振り返って、どんな話をしたかは思い出せません。名刺の角を折っていたり、メモ書きをとっておいたりしましたが、そこからより深くつながりが持てることは、それほど多くない。『オーナーズガーデンPro』では、ブックマークできるし、メッセージのやり取りが全て記録されるので、簡単につながりをたどることができる。24時間、いつでも参加できる業者会のようなものだと説明しています

賃貸オーナーの資産を管理するアプリ「資産Navi」

様々な資産状況を一瞬で理解するためオーナーズレポートを手打ちでデータ化

こうしたサービス開発の根底には、不動産営業がもっと物件オーナーやエンドユーザーの方を向いて仕事をする時間を増やすべき、との思いがある。

そうした思いから開発に挑んでいるのがオーナー向けの資産管理アプリ「資産Navi」だ。

これを見れば、所有する賃貸住宅の経営状況に関するレポートを見ることができる。

私自身が不動産物件を所有する投資家でもあり、毎月管理会社の方から物件に関するレポートが届きます。入退去の情報があり、入金履歴があり、修繕・建物管理に関する報告があって、家賃から管理料を引いて、いくら振り込むという情報の羅列です

毎月、遅れることなく送られてくるレポート。それを作る手間や意義はわかってはいるが、読み込むことはしない。情報がバラバラになっていて、直感的に経営状況を理解することが難しいからだ。

これは他のオーナーでも同様で、なかには送られてきたレポートを自らエクセルなどの統計ソフトに打ち込んで、分析をするという。そうしなければ、物件を売るとか、リノベーションをして利回りを上げるといった重要な投資判断ができないからだ。

もちろん、そこまで時間と手間を割くことができる人は一握りに過ぎず、大勢の人はそれができない。

アプリを使えば、支出割合、ローンの返済状況なども含めて、直感的に不動産経営状況がわかるようになります。複数の所有物件ごとに分けたり、あるいは全体を合算したり、管理会社ごとに入居率をチェックすることもできる。複数の法人で物件を所有する場合は、法人別のデータも見ることができます。賃貸住宅を経営するために必要な情報を管理・集約して、経営判断を促すためのアプリにしたいと思っています

思えば、賃貸住宅経営は物件を買うか、売るかなど、投資初期の判断に比重が高くなっている。購入後の運用状況はざっくりとした判断するだけで、指針を基にした経営をできているケースは少ない。

実際に、もっと日常的にリアルタイムの情報を求める声は高まっている。ここ数年で、賃貸管理システム会社がオーナー向けのアプリ開発に乗り出しているのがその証拠だ。

管理システム会社発のアプリが出てきているのはよい傾向だと思います。フィンテックにおいて言えば、ネットバンキングの作っているアプリのようなものでしょうか。それまではATMまで行って、通帳記帳していたものが、どこにいても状況がわかるようになった状況にとても似ていると思います。私がアプリで提供したいのは、その次の状況です。複数の銀行、証券口座の状態を合算して見て、家計の状況がわかるマネーフォワードやマネーツリーのようなサービスの賃貸経営版を作りたいんです

誰もがアプリで物件の経緯状況を見るようになれば、複数のアプリを横断してチェックしたいというニーズが生まれるはず、というわけだ。

さらに、前半で紹介した「オーナーズガーデンPro」との相乗効果もあるという。

物件を売却したいと思ったら、「オーナーズガーデンPro」から売却金額の査定リクエストを送るなど、様々な効果を見込んでいる。

アプリは無料で提供される予定だ。驚いたことに、現状のオーナー向けのレポートのデジタルコンバートも無料で行う予定だという。全て人力で打ち込む。

オーナーから管理会社へ『資産Navi』の紹介をしてもらいたいですね。私自身も経験がありありますが、オーナー向けのレポートを作るのに、2~3時間はかかります。ある程度の規模になれば、専用の人員を雇っていることもあります。そういう手間も省けるようになれば、人員不足にも対応できるし、もっと賃貸経営のプラスになることを追及できるはずです

今夏にもプレリリースを行い、年内には正式なリリース予定である。

 
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