2024年2月15日、不動産ポータルサイト「LIFULL HOME’S」を運営するLIFULL(東京都千代田区)が、おとり物件の現状に関する記者発表会を開催した。

左から、LIFULL HOME’S事業本部事業支援室事業支援ユニット情報審査グループ・グループ長の宮廻優子氏、LIFULL HOME’S事業本部・エグゼクティブアドバイザーの加藤哲哉氏 撮影=リビンマガジンBiz取材班

おとり物件の現状について、LIFULLが不動産仲介業務担当者と消費者を対象にした不動産ポータルサイトに対する認識調査をもとに、LIFULL HOME’S事業本部・エグゼクティブアドバイザーの加藤哲哉氏が解説した。

架空の物件や取引の対象とならない、取引の意思のない物件がポータルサイトに掲載されるいわゆるおとり物件。近年では、集客や来店を目的とした悪質なおとり物件はほとんどなく、広告掲載から物件削除までの工程が多く、またアナログがゆえに発生する広告の落とし漏れが主たる原因となっているようだ。

おとり物件の件数自体も減少傾向で、首都圏不動産公正取引協議会・ポータルサイト広告適正化部会の発表によると、2018年度に2,212件あったおとり物件は、2022年度は126件に激減した。

これは、おとり物件に対する不動産会社の認識が大きく影響を与えているのかもしれない。LIFULLの調査で「おとり物件が、不動産業界の課題となっていることを認識していますか?」という質問に対して、「認識しており、自社でも課題として捉えている」と回答した仲介業担当者は63.1%、「認識しているが、自社では課題として捉えていない」(30.1%)とあわせると90%以上が課題として捉えている。

画像提供=LIFULL

また、おとり物件を掲載してしまうことへの対策については、「対策を行っており、問題なく運用できている」「対策は行っているが、不十分である」あわせて85.7%と、多くの会社が劣り物件を掲載しないための対策を講じていることがわかる。

画像提供=LIFULL

一方で、「対策を行っていない/対策が不十分」という回答も32.7%を占め、おとり物件の根絶は難しい。具体的な取り組みとして「システム以外の改善(確認頻度の増加等)」「担当者の増員」といった、人手で担保しようとしている企業が多いことも問題のようだ。

加藤哲哉氏 撮影=リビンマガジンBiz取材班

「マンパワーで乗り切ろうという会社の方がまだ多い状況。一方で、採用が非常に難しくなっているため、DX化・システム化を強化する会社も増えていくと思っている」と加藤氏は語る。

画像提供=LIFULL

募集が終了してから、広告取り下げまでの期間を聞いた質問では、「1日以内」は41.4%、半数以上が掲載取り下げまでに1日以上の期間を要していた。

画像提供=LIFULL

広告掲載の素早い取り下げを阻む要因としては、「人手不足のため十分なメンテナンスができない」(49.0%)「うっかりミス等の人為的な問題」(47.1%)「システム導入などDXが進んでいない」)(20.9%)などが上位となった。

加藤氏は「DX化を進めたいけれども、 コストもマンパワーもかけられない不動産会社が多い。今後は。管理会社と仲介会社、そして我々ポータルサイトが業界の枠を超えて全体でデータをやりとりし、取り組んでいく必要があると感じている」と結論づけた。

宮廻優子氏 撮影=リビンマガジンBiz取材班

LIFULL HOME’S事業本部事業支援室事業支援ユニット情報審査グループ・グループ長の宮廻優子氏は、LIFULLが行っているおとり物件撲滅に向けた取り組みについて説明した。

1つ目は、LIFULLが特許を取得した「募集終了物件情報の自動非掲載機能」だ。これは、管理会社が管理している物件情報をLIFULLに提供し、成約済みの可能性がある物件と同一物件を検出し、該当物件の広告を掲載している仲介会社に通知した上で、物件広告の非掲載処理をするというもの。大東建託パートナーズ(東京都港区)をはじめとした大手管理会社との連携が進んでおり、2023年1月時点で協力会社は18社、2023年に非掲載にした募集終了した物件は約95万件にのぼるという。

2つ目は、複数の仲介会社が非掲載の処理をした物件と同一物件を、募集終了の可能性が高い物件として検知し、自動で非掲載処理を行うというものだ。「LIFULL HOME’Sメンテナンス見える化ツール」と呼ばれるもので、精度が高く、管理会社からの情報提供が不要だ。これにより月間で2万件程度の検知をおこなっているという。

3つ目は、おとり物件の検知や仕組みをAIに学習させることで、AIによるおとり物件検知の研究も進めている。2019年10月から取り組んでおり、当時は検知する精度が26%だったが、2022年10月~2023年9月の期間では87%まで精度が向上している。

宮廻氏は「不動産情報の正確性の向上だけでなく、広告掲載会社の情報更新作業のDX化を推進するための大きな一歩になると考えている」と、述べた。

 
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