さて、G7の季節になってきました。今年は526日と27日にイタリアで開催されます。

やはり、日本国民として、世界に冠たる7つの先進国として認められ、自国の首脳がその会議に参加する事はとても晴れがましいものですね。ところで、わが日本以外の6つの国については、当然ながら東京に大使館があります。

不動産鑑定士的に気になったのは、これらの大使館の地価水準がどの程度の地域かという点です。もっとも、このコラムで細かい調査もせずに「大使館の敷地の不動産価値は○○円だ!」などとうっかり書くと、「業として他人の不動産の価格を決定する」として不動産の鑑定評価の法律的に問題が生じかねない上に、これらの国々から「いやいや、うちの国の大使館の価値はもっと高い」などとお叱りを受けないとも限りません。

 

そこで、12月の筆者の下記の乃木坂と欅坂(下記リンク)の地価比較をしたコラムと同様に

リンク~乃木坂VS.欅坂(けやき坂)!すごいのはどっち!?不動産のプロが調べてみた

 

客観的なデータである国税庁の相続税路線価に基づき、各国の大使館の前面道路の㎡単価を調べる事とします。その前に、各国の東京の大使館の位置は、下記のようです。

アメリカ 東京都赤坂1-10-5

②イギリス 東京都千代田区一番町1

③イタリア 東京都港区三田2-5-4

④カナダ  東京都港区赤坂 7-3-38

⑤ドイツ  東京都港区南麻布4-5-10

⑥フランス 東京都港区南麻布4-11-44

国名を50音順に配列しました。

また、下記の路線価図は、各大使館の敷地の一部が切れていますが、今回の趣旨に影響しない部分ですので、この点はご容赦頂ければと思います。

更に、敷地の赤枠は概ねの範囲を示したものですが、一部に誤差等がある点、ご留意頂ければと思います。

①アメリカ

アメリカ大使館は、赤坂の一等地にあります。

やはり世界一影響力のある大国で、歴史的にも日本との関係は古いです。戦後すぐの占領軍の時代に霞が関の政府官庁街と連絡がとりやすい点を重視してこの地に大使館を定めたのかな…と個人的には推察しています。そのアメリカ大使館の位置は赤枠部分で、路線価2,180,000/の土地に接しています。※なお、アメリカ大使館付近は撮影禁止であったため、写真はありません。

 

(アメリカ大使館の路線価)



イギリス 

イギリス大使館は、皇居の西側で、G7の大使館では唯一、港区以外にあります。千鳥ヶ淵に近く、春などは花が美しい立地で、何となくイギリスらしいですね。大使館の建物自体も「いかにもイギリス」という感じがしますし。そんなイギリス大使館は赤枠部分で、路線価2,440,000/の土地に接しています。

(イギリス大使館の路線価)


(イギリス大使館の正面風景)

イタリア

イタリア大使館は赤枠部分で、路線価1,100,000/の土地に接しています。(但し正門前面道路は路線価1,070,000/㎡ですが)

慶應機塾大学の裏の立地で、「綱坂」の上、閑静な住宅地の中の道路沿いにありますが、通常、同じ町では商業地よりも住宅地の方が路線価が低い事が多いため、G7の大使館の中でも最も路線価の低い立地と言えます。


(イタリア大使館の路線価)

(イタリア大使館の正面風景)



カナダ

カナダ大使館は赤枠部分で、迎賓館から見て青山通りを挟んだ反対側の立地です。

青山通り沿いの立地ですが、幹線道路沿いは周囲と比較して路線価がとても高水準である事が多いので、路線価という点ではG7各国大使館の中でも最高値となる路線価3,530,000/となっています。ただ、迎賓館や高橋是清翁記念公園の近くであり、幹線道路沿いの割には緑が多い立地です。

(青山通り沿いに、カナダ大使館を望む~右側の建物がカナダ大使館)

⑤⑥ドイツとフランス(近いので同一の路線価図面です)

ドイツ大使館は有栖川宮記念公園の南側の閑静な立地です。

赤枠部分で、路線価1,530,000/の土地に接しています。

フランス大使館はドイツのちょっと南、明治通りから一歩入ったやはり閑静な地域です。赤枠部分で、路線価1,120,000/の土地に接しています。ちなみに、外国人は公園の近くである事を住環境として重視されるとお聞きします。

このため、この付近には他の国の大使館も見られる他、外国人用のスーパーも充実しているともお聞きします。

両大使館とも、やや霞が関等の政府官庁街には遠く少々路線価が低めの立地ですが、有栖川宮記念公園等、住環境が優れる点がこの地に大使館を持ち続ける理由かと、個人的には推察しています。


(ドイツ大使館とフランス大使館付近の路線価)

(ドイツ大使館付近の風景~道路右側の塀がドイツ大使館の敷地)

(フランス大使館~明治通り側から望む)

最後に路線価をまとめてみますと

アメリカ2,180,000/

イギリス2,440,000/

イタリア1,100,000/

カナダ3,530,000/

ドイツ1,530,000/

フランス1,120,000/

 

上記の結果となりましたが、結局、大使館というのはおいそれと移転するものではないので、地価水準がどうというよりも、歴史や住環境、霞ヶ関の官庁街等との利便性といった要素を勘案しつつ、「その国の好み」でどの要素を重視するかを判断し立地を定めているのかな・・・と思います。

 

また、折を見て、色々な話に関連する不動産の路線価等について調査してみたいと思います。

 
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