あまり知られてはいないが、不動産会社の数はコンビニの数よりも多い。
国土交通省の統計で、不動産会社の数は全国に約12万3,000社ある。コンビニはフランチャイズ協会の統計によると5万4,000店となっている。
身近にあるコンビニよりも、人生で数回しか足を運ばない不動産会社の方が2倍以上あるのだ。
駅前には大きな看板を背負った不動産店が立ち並んでいるが、一つ裏通りに入ると、昔からある古い不動産会社も多い。
中には、ほとんどお客がいそうにない店もある、一体どのようにして稼いでいるのか、取材した。

来店客は居なくても「管理」で稼げる

墨田区にある不動産会社Aは、地元で50年以上営業を続けている会社である。
こじんまりとした店には、男性社員と代表がソファでタバコを吸っていた。
いかにも暇そうだ。話を聞くと、飛び込みで客が入って来ることは月に1、2人しかいないとのこと。
さらに、今では主流となっているインターネットでの集客もほとんどしていないという。
それにも関わらず、どうやって50年以上も会社を続けられたのだろうか。

実はこの会社の主力事業は不動産管理業なのだ。
不動産会社の業務には、賃貸や売買の仲介だけではなく、管理業務というものがある。
管理業務とは、賃貸不動産オーナーから委託を受け、マンションのマネジメントやメンテナンスを請け負う業務の事である。入居者の募集や家賃の回収といった収益を得るためのマネジメント業務と、建物の定期清掃、原状回復工事などのメンテナンス業務にあたる。

こうした管理業務の手数料は、「住宅・不動産ハンドブック」(かんき出版)によると、概ね家賃の5%前後が相場とのこと。そのため、管理委託を多く請け負っていれば、店舗に来店客がいなくても売り上げが立つのだ。
墨田区の不動産会社Aは、30棟ほどの管理を行っている。
1棟の戸数は平均して12戸ほど。平均家賃が7万円前後なので、計算すると月々126万円が管理業務での売り上げとなる。毎月、この金額が入ってくるので、非常に安定した経営が可能なのだ。
不動産オーナーはよほどのことがない限り、管理会社を変えることは無い。
だから、何年にもわたって安定的に売り上げが見込めるのだ。
これなら、自分もやろうかなと思う人も多いだろう、しかし、簡単にオーナーからの管理委託は受けられないのが実情だ。
先述のように、不動産オーナーは管理会社を変えることはほとんどない、新たに管理委託を受けることは至難の業だ。
不動産会社Aは地元の付き合いを大事にし、不動産オーナーから信頼を得ているという。
年賀状や暑中見舞いを大家だけでも300枚は送っているという。
そういった地道な種まきが管理獲得の大事な一歩だという。

(水戸興産 リビンマガジン編集部・撮影)

年賀状を2000枚も送る不動産会社もある

先ほどの会社は管理棟数が30棟で、大家に年賀状を300枚は送るとのことだったが、
年賀状を2,000枚以上送る不動産会社もある。

神保町にある水戸興産という不動産会社だ。
営業を開始して56年が経つ。

こちらも、地元に根付いた不動産会社である。
大家、不動産会社含めて2,000枚以上は年賀状を送っていると語る。
何戸管理を行っているか厳密に把握していないらしいが、500戸以上はあると語る。
「他の業者にやっかみを持たれるのが嫌なのでこれ以上は」とも言っていた。

代表は、父親の代から地道な付き合いを大事にしてきたと語る。
オーナーの些細な依頼にもすぐに対応し、その結果、オーナーがオーナーを呼んだ。

神保町の家賃相場が14万円前後だという。
管理戸数が500戸、家賃相場と前述した管理手数料の5%を含めて計算を行うと月々、約350万円の売り上げになる。
計算上では、年商が4,200万円だ。
さらに、1Fに水戸興産の店舗があるビルも自社ビルだ。
そのため、ビルの家賃収入も入って来る。
1Fにある店舗が古くても実は、そのビルの所有者が1Fの不動産会社というケースは多い。
お客さんが全く来なくても管理の委託を受けるだけでこの額が入って来るのだ。

管理も大変な仕事だ

当然のように、管理棟数を増やしていくほど仕事が増えていく。
管理は売買のように売ってしまえば終わりではなく、そこから始まりになってくる。
オーナーからの依頼があれば飛んでいくが、内容の多くはクレームだという。
増やしていくのも大変だが、委託を受けてからの方が大変だ。

街の古い不動産会社のほうが儲かっていることもある

店舗にお客が居なくても実は儲かっている会社がたくさんある。
物件の管理というカラクリで回っているのだ。
街で古い不動産会社を見かけた際に従業員が暇そうにしていても、いつ来るか分からないオーナーからのクレームに対応するため、備えていると思っていて欲しい。
決して遊んでいるわけではない。

 
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