プロ野球が開幕して1カ月が経とうとしている。
毎夜、熱戦を繰り広げている野球場だが、不動産的な価値はいくらになるのだろう。
不動産鑑定士の木村修氏の監修を元に、まずはセ・リーグの球場売却価格を算出してみる。

野球場の土地価格ランキング

算出の方法は、球場の公式HPに記載されている建築面積(建物を真上から見たときの面積)に
路線価を掛け、公示価格に近付けるため0.8を割り戻した金額でランキングを出した。(建築面積×路線価÷0.8)の計算だ。

最初に断っておくが、建物価格は不確定の要素が多いため、今回は土地価格のみで比較する。

早速だが、結果は以下の通りだ。

 

1位:東京ドーム

1位は東京ドームだった。価格は約806億円だ。

 

 

東京ドーム ※フォトックより

2位以下を大きく突き放す最高額で、さすがは球界の盟主ジャイアンツの根城だ。

東京ドームは東京都文京区にあり、日本初の全天候型球場として1988年に竣工された。都営大江戸線、東京メトロ丸の内線・南北線の後楽園駅。

そしてJR総武線、都営三田線が通る水道橋駅が最寄り駅で、どちらも東京ドームまで徒歩1分だ。
抜群の立地で、野球以外にもコンサートなどの大規模イベントで連日賑わっている。広大な敷地にホテル、遊園地、ショッピングモール、さらには温浴施設や場外馬券場と、集客力のある施設が隣接している。

2位:明治神宮野球場

2位は明治神宮野球場で、価格は約379億円。

 

 

明治神宮野球場 ※街画ガイドより

渋谷ではなく新宿区になる。
最寄りとなる東京メトロ銀座線の外苑前駅からは徒歩で約5分。

神宮球場の歴史は古く、1925年までさかのぼる。東京六大学野球が発足し、外苑内に野球場の建設を要望する声が高まったことで建築された。設計段階で高さを制限するなどして、外苑全体の景観を壊さないように腐心したという。

不動産鑑定士の木村修氏によると、「国立競技場、新宿御苑に近接する緑豊かな環境を形成しており、実勢地価は路線価からグンと突き抜ける可能性を秘める資産性が高い立地です」と高く評価する。地下鉄やJRなどの駅が多数あり、大規模なスポーツイベントが行われても混雑を感じないほどの輸送力を誇っているエリア。周辺は高級住宅地として知られており、神宮球場が売りに出ればとてつもない規模の再開発になる。当然、実勢価格も跳ね上がると予想される。

ペナントレースでは、CS出場ライン(?)ぎりぎりの3位滑り込んだのは横浜スタジアムだ。土地価格は約258億円だ。

 

 

横浜スタジアム ※まちふぉとより

横浜の中心地、関内駅から徒歩1分と抜群の立地で、「資産性が十分に見込まれる」(木村さん)と高く評価する。
現在の横浜スタジアムは1978年に横浜公園野球場の跡地に建てられた。

横浜公園野球場は、初来日したベーブ・ルースと全日本チームが対戦した歴史ある球場だったという。球場周辺には観光地としても有名な横浜中華街や赤レンガ倉庫など、集客力のある施設がひしめいている。もし売りに出されれば、商業地として開発されるだろうか。何が造られるとしても、その可能性は計り知れない。

4位:甲子園球場

4位は甲子園球場で、約132億円だ。

 

 

阪神甲子園球場 ※写真ACより

甲子園球場は1924年に、全国中等学校野球大会を契機にして造られたもの。

当時、関西で野球人気が急速に高まってきており、全国中等学校野球大会には大勢に関心が集まっていた。ついには試合会場である兵庫県西宮市の鳴尾球場では観客を収容しきれないほどになったという。もっと大勢の観客を収容できる球場が欲しいという声の高まりをうけ、甲子園球場の着工に至った。

大阪・阪神梅田駅から最寄りの甲子園駅まで電車で約12分かかる。アクセスは悪くないが、「西宮市という郊外立地が順位を下げた原因だ」と木村氏の評価。しかし、阪神タイガースファンだけでなく、高校球児にとっても甲子園は別格の存在だ。野球の聖地と呼ぶにふさわしい存在感があり、そもそも売却して再開発など未来永劫ありえないのが本当のところかもしれない。

5位:ナゴヤドーム

5位はナゴヤドームで、約97億円である。

 

 

ナゴヤドーム ※フォトックより

まだ、新しい球場で1994年に三菱重工の工場跡地に建設された。

以前の中日ドラゴンズの本拠地であったナゴヤ球場に変わる球場として開場された。

この順位は交通の便が悪いことが影響しているのか。球場最寄りのナゴヤドーム前矢田駅まで名古屋駅から電車で約20分かかる。現在、名古屋市ではメイエキと呼ばれる名古屋駅に人の流れが集まっている。

木村氏の話では、「名古屋駅周辺の開発ぶりからするとやや見劣りする立地環境です。付近は工場跡地住宅など混在地を形成している」とのことで、大規模な再開発をするには用途は限られるかもしれない。

6位:マツダスタジアム

惜しくも(?)最下位になったのは、広島カープの本拠地マツダスタジアムだ。約57億円の評価となった。

 

 

Mazda Zoom-Zoom スタジアム広島 ※写真ACより

長く市民に愛された広島市民球場だったが、老朽化に伴い代わりの球場として建設されたのがマツダスタジアムだ。

球場自体が広島市における都市計画の中心的役割を果たしており、球場を起点にさまざまな開発がすすむ。最下位になった理由は、駅から距離があり繁華性が低い地域であることが影響している。

他球団に比べて資産規模が小さく、少ない予算でやりくりしていた広島カープ。本拠地球場の資産価値でも1位の東京ドームとは大きな開きがある。昨年、悲願の優勝をした際は全国的なブームを巻き起こしたが、改めて地方球団と都市部のチームの経済格差をみる思いだ。

最後に、今回作成したランキングは、あくまで球場の土地の価格を比較し、概算値を想定してのもの。
すべての野球場には、お金に代えられないファンの想いが詰まっている。その価値に順位はつけられないことを付言しておきたい。

次回はパ・リーグ編をお送りいたします。

パ・リーグ編はこちら

木村 修

木村不動産鑑定

遺産分割、底地買取、立退料、地代。

豊富な実績と長年の信頼。

 
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