ソニーのグループ会社ソニー・ライフケアが、さいたま市に
介護付有料老人ホーム「ソナーレ浦和」を5月1日に開業する。
ハイテク家電のイメージが根強いソニーだが、昨年4月から子会社で老人ホーム事業に参入しており、
事業所は浦和で2カ所目となる。
実は、ソニー以外にも異業種から不動産や住宅建築に参入している会社はたくさんある。
自動車業界からの参入
世界的企業のひしめく自動車業界からの参入では、トヨタホームが有名だ。
その歴史は意外に古く、1975年にトヨタ自動車工業が住宅事業部を新設したことから始まったという。
同社広報室によると、自動車以外の経営軸を持つため他業種への進出を考えたのが70年代のこと。
当時は列島上げてのマイホームブームで、住宅市場が拡大中だったことと、
手持ちの工場を使って建材や資材が作りやすかったことが、参入を後押ししたと考えられる。
自動車業界からはスズキも参入している。
スズキハウスという名称で注文住宅に加え、物置やミニハウス(離れ)を作る住宅メーカーを運営している。
その歴史はトヨタホームより古く、1967年には前身のスズキ不動産が設立されている。
「当時は、第2次ベビーブームで子供部屋用にミニハウスが流行っており、
倉庫の建材や部材を作るための設備が自動車製造工場の中にあったので参入しやすかった」とは同社の広報担当者だ。
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スズキハウスのミニハウス ※スズキハウス提供
ミニハウスはアニメ・タッチで主人公たちが使う学習部屋を思い出すと、イメージしやすい。
トヨタと同じく工場を活用して住宅建材が調達しやすいことが、新規参入の障壁を低くしたらしい。
スズキハウスは、現在も全国15店舗で営業中だ。
しかし、時代の流れで販売商品は変わっている。
ミニハウスと並んで売れ筋商品だった物置きは、スズキハウスが製造し、
全国のディーラーが特約店として販売する自動車販売と同じ方式であったが、
物置の需要が減り、販売も先細り、特約店契約も消えてしまったとのこと。
電機メーカー・家電量販店の参入
日の丸家電で世界を席巻した電機メーカーからの参入はパナソニックが代表格といって差し支えない。
1959年に松下電工で工場生産住宅の開発に着手したことが始まりだ。
創業者・松下幸之助氏の強い意向が働いたという。
広報によると、「幸之助氏は、事業は商品を作って販売するだけでなく、
生み出された商品で人々の生活を良くすることを目的としていました。
そのために家電だけではなく、良い住宅を作ることで豊かな暮らしづくりに
役立ちだいと思ってのことだったと想像します」
住宅は雨風をしのぐだけではなく、
人間の人格を形成する場であると考えていたという。
さらに、住宅の建材を工場で大量に作り、現場で組み立てていくプレハブ工法が生み出され、
良い家が安いコストで大量に作れるようになったため、新規事業としても採算が見込めると感じたことも、
参入への大きな要因になった。
住宅買ったら家電も
大手家電量販店も住宅市場に参入している。その急先鋒が業界最大手ヤマダ電機である。
ヤマダ電機は2011年に注文住宅で知られたエス・バイ・エルと資本・業務提携を行い住宅市場に参入。
その後、リフォーム会社を買収するなど住宅事業の領域を着実に伸ばしている。
同じく、家電量販店のエディオンも不動産売買仲介事業を始めている。
2015年から、中古住宅市場の拡大を背景に、店舗内に仲介営業所を設け事業を展開している。
エディオンが住宅事業を開始したのは、中古住宅売買市場の拡大していることや
リフォーム需要が高まっていることを受けてのことだ。
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エディオンハウジング伊丹営業所 ※エディオン提供
中古住宅の購入とリフォームの計画、さらに家電の相談が出来る身近な不動産会社を作ろうと考え新設したという。
現在関西に3営業所あり、今後も増やしていく予定だ。
食品メーカーからの不動産事業参入もあった
これまで取り上げてきた部品工場を多数持っている自動車業界や住宅と家電の両提案が可能な家電量販店は、
住宅業界に参入するメリットが容易に想像できる。しかし、一見すると縁遠い食品業界からの住宅事業参入もあった。
乳酸菌飲料メーカー国内最大手のヤクルトだ。
1971年にヤクルトハウジングという分譲住宅の建売を行う会社を設立。
ヤクルトホームシリーズという建売住宅販売をメイン事業に住宅業界に参入したのだ。
参入の背景にあったのは、当時ヤクルトグループ内の販売会社や工場の再編だった。
使わなくなった工場跡地など遊休施設が大量に生まれたことで、その有効活用方法として建売住宅の建築を始めたという。
ただ、その歴史は短く事業開始から7年後の1978年に会社を閉じている。
ヤクルト本社にも当時を知る人は少なく、資料もほとんど残っていない。
結局、事業を撤退した理由などははっきりとしたことは分からないという。
しかし、新規事業がわずか7年という短い期間で無くなってしまうというのだから、
住宅の売れ行きが悪かったと考えるのが自然だろう。
浮き沈みの激しい不動産業界
不動産は波が激しく、時代によって需要が大きく変わる。
現在でも急成長を遂げる会社もあれば、あえなく潰れていく会社もまたたくさんある。
本記事で紹介した会社はどこも、時代の流れを読み、時流にあった形で不動産や住宅事業を開始している。
あえなく撤退の憂き目にあった会社もあるが、今後も異業種で培ったノウハウを生かして、
特色ある住宅が生まれることを期待したいものだ。