住宅に関連する題材を扱った「家ドラマ」が人気だ。9月まで放送されていた北川景子主演の「家売るオンナ」も好評だったが、この秋は4本の家ドラが放送中だ(編集部調べ)。ここ数年、主人公が料理人だったり、食べ物にこだわりがあったりするグルメドラマが多かったが負けず劣らず増えてきた家ドラを紹介する。

見栄と嫉妬のタワマン

すでに大きな話題になっているのが「砂の塔~知りすぎた隣人~」(TBS系)だ。タワーマンション内の住人同士の人間関係と菅野美穂が演じる主人公の過去。そして謎の失踪事件が絡み合うサスペンスドラマだ。脚本を同じくTBS系で放送された「アリスの棘」が好評だった池田奈都子が手掛けており、全編を通して画面から不穏な空気が漂っている。
ストーリー以上に話題なのは舞台となっているタワーマンション内でのタワマンヒエラルキー(いわゆる上下階格差)だ。ハロウィンイベントなどママ友間での面倒な行事がたくさん出てくるとともに、上層階の住人が下層階の主人公をイジメるこれまた面倒くさい人間関係が描かれている。タワマン村はまさに見栄と嫉妬の世界だといわんばかり。
ロケ地とされる有明や豊洲などの湾岸タワマン地区の住民からは「評判が悪くなる。資産価値が下がる」との不満も聞こえてくるという。確かに、イジメ以外も「タワマンに住む金持ちの子どもを…」と主人公の娘が誘拐犯に狙われるなど、実際の住民が見たら不安になるような場面もチラホラ。迷走続ける豊洲新市場とともに、湾岸エリアにはなにかと風当たりが強いな。
幸せな家庭が実は…というのは岸辺のアルバム以来のTBSドラマの王道だが、現代では社会的成功と家族の幸せの象徴はタワマンということだろうか。やっかみ半分で楽しむドラマなのだろうか。
(TBS系 毎週金曜:夜10時~放送中)
余計な一言
謎の隣人を演じる松嶋菜々子。遠くから主人公たちを見ている場面は、家政婦のミタに見えてくる。

民泊がドラマに!

「拝啓、民泊様」は突然会社をクビになった主人公が中古住宅を購入して民泊オーナーになるストーリー。最近、話題の民泊をいち早くドラマの題材に取り上げている。新井浩文が演じる主人公は民泊経営をすすめるセミナーに参加し、よくわからないまま物件購入契約書にハンコを押してしまうのだ。
 主人公は儲かるビジネスセミナーで検索して民泊に出会う。実際に民泊経営セミナーを取材したことがあるが、法改正などまだまだ問題も多いのに自信満々に将来を語る講師がうさん臭くて良い。
「東京都大田区が特区」だったり、「共有タイプと個室タイプ」など民泊の知識が深まるセリフも盛り込まれており、民泊運営について知りたい人にもお勧めだ。
(MBS毎週日曜:深夜0時50分~・TBS毎週火曜 深夜1時28分~ 放送中)

余計な一言
いつも渋い脇役が多い新井浩文だが、今回は堂々の主演だ。でもドラマ開始90秒で会社をクビになるあたりはさすが!(?)

家の前に街が好き

「吉祥寺だけが住みたい街ですか?」は、人気漫画家マキヒロチの漫画が原作の話題作だ。吉祥寺で賃貸仲介会社を営む双子の姉妹が主人公だ。
毎回、何となく吉祥寺に住みたいと考えている来店客が登場し、接客するうちに本当に「住みたい街」を探していくというストーリーが展開される。 来店客は毎回、ゲスト出演者が演じている。
不動産会社が主人公で、毎回とも部屋探しを行うのだが実際の主人公は街だ。
漠然としていた住みやすい街=吉祥寺という先入観を壊し、東京各地の街の良さを見出していくことが主題となっている。実際に取り上げている町でロケをしており、実在の店が多数紹介される。同じテレビ東京で放送されていた吉田鋼太郎主演の「東京センチメンタル」
に近い作りになっている。
 ドラマ内では雑司ヶ谷、五反田、神楽坂など比較的渋めの街がたくさん取り上げられており街のイメージアップに貢献している一方で割りを食っているのが吉祥寺だ。
原作漫画も話題になったので、吉祥寺ブランドにも、昨今は陰りが見えるのかもしれない。そういえばR社の住みたい街ランキングでも吉祥寺が1位から陥落なんてニュースもあった…。ドラマもそこが気になったのか、吉祥寺に長く住んだことがある又吉直樹が本人役で出演しており。吉祥寺への引っ越しを準備中だ。
 細かいギャグも通好みの深夜枠ドラマらしい。
(テレビ東京ほか 毎週金曜:深夜0時52分~ 放送中)
余計な一言
日本人離れした体格という主人公姉妹の設定どおり主演は森三中の大島美幸とメイプル超合金の安藤なつが務めている。ただ原作漫画のキャラより明らかに大きい…。漫画を超えたフォルムも注目だ。

独身女性の家探し
「プリンセスメゾン」は倹しい生活を送りながら、豪華な理想の家を買うためにモデルルーム通いを続ける居酒屋勤めの26歳・独身女性が主人公だ。原作は小品といった言葉がぴったりくる池辺葵の漫画。モデル出身の森川葵が都会で健気で儚げな沼越幸を演じている。  
年収からしてマイホーム購入は難しい主人公にも、しっかりと向き合う不動産会社(マンションデベロッパー)の社員を高橋一生が好演している。
家を買うことをテーマにしていたドラマはかつてもあった。このドラマが異色なのは主人公が若い独身女性という点だ。結婚願望もなく、仕事にも夢はなく。雨漏りするアパートで想像を膨らませる理想の家には家族の姿はいない。
都会で暮らす孤独な女性にとって家は幸せの象徴ではなく、自分の迫る脅威から身を守るためのシェルターとして捉えられていているのかもしれない。そして、都会で理想の部屋を見つけるのは本当に難しいんだなと、しみじみ思えるドラマだ。
(NHK-BSプレミア 毎週火曜:夜11時15分~ 放送中)

余計な一言
年収低くてもマンション購入!やっぱり金融知識が重要!…という展開は無さそう。

                           (11月5日初出)(敬称略)

 
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