今年で、アップル社のiPhoneが発売されて10年が経つ。今や、生活に欠かせないスマホ。我々は一瞬にしてネットと繋がり、必要な情報を手に入れることができるようになった。また、スマホは様々なサービスや商品を生み出し、新たなビジネスチャンスを創出している。

では、この10年の目まぐるしい変化に、不動産業界はどう対応しているのだろうか。スマホの登場は、良い影響ばかりではなく、悪い影響も与えているのではないだろうか。行政書士ダンディ法務事務所 大熊厚史代表に聞いた(リビンマガジンBiz編集部)。

スマホで電話をかける大熊氏 (撮影=リビンマガジンBiz編集部)

スマホ普及によって増える不動産事会社の業務

以前に比べて、お客様はスマホにより手軽に情報収集できるようになりました。ほとんどの物件ポータルサイトがスマホに対応しています。利用者は簡単に物件ページへアクセスできるので、「あれも良い、これも良い」と目移りしてしまいます。

実はそういった状況で、困るのが不動産会社です。
不動産会社としては内見回数をできるだけ少なくして、お客さんに物件を決めてもらいたいと考えています。あれもこれもと案内して、「やっぱり止めた」では人件費がかさみ大損害です。

また、物件をHPに掲載する際にも細心の注意を払います。より良い印象を持ってもらうために、クオリティーの高い物件写真を大量に撮影する業務が発生します。また、スマホからの電話問い合わせも急増しており、対応に追われ通常の業務が煩雑になっているようです。

このように、スマホの普及により対応する業務の幅が増え、混乱している不動産会社もあります。消費者の変化があまりに激しく、不動産業者側が付いていけてない現実があるのです。

スマホを持っているせいで住宅ローンが通らない!?高すぎる通信費の注意点

スマホの普及により携帯電話の通信料金を滞納する人が急増し、住宅ローンが借りられないケースが増えています。住宅ローンが借りられなければ、お客様は物件を買えません。不動産会社側からすれば、不動産が売れなくなるという大問題です。

スマホの購入&契約時は、多くの書類に次々とサインをする為に、自分がクレジット契約を結んでいるという自覚がない人が多いようです。スマホ本体も高額なので、クレジット払いで購入する人がほとんどです。

こんなデータがあります。政府広報オンラインによると、平成22年のクレジット契約件数の累計は約3,821万件、平成26年には約1億1,076万件。約5年で3倍近くも急増しています。それに伴って、滞納件数も急増し、平成22年には約92万件だったのに対し、平成26年には約336万件と驚くべき数になっています。

この要因には、スマホや携帯電話の通信費増加があります。
総務省の「通信利用動向調査」によると、2003年の1世帯当たりの携帯・スマホ料金(移動電話通信料)は59,264円。2015年には約1.5倍の91,306円と、携帯・スマホ通信費が、以前にも増して家計を圧迫していることが分かります。

通信費を滞納をすることで、貴方の信用が傷付き、住宅ローン審査に影響するのです。スマホの普及により不動産業界の今後はどうなっていくのでしょうか。不動産業界は益々スマホへの対応に追われ振り回されると思います。スマホを制した者が不動産業界を制する。そんな時代が必ずやってきます。

しかしいつの時代も本当に成功を成し遂げる者は、あえてその時代の逆に行ける勇気がある者です。岡本太郎も言っています。その勇気が何より大切だと。

つまりスマホを排除して、アナログ的な人間関係を重視した不動産会社が将来的には大成功を成し遂げると私は予想致します。昔ながらの不動産屋が再び頭角を現すと思います。商売の基本は人と人との繋がりです。スマホでも繋がりは持てますが、やはり直接会って人間と人間が言葉を交わし、酒を飲みかわし、友好を深める昔ながらの古臭いやり方が真の信頼関係や深い絆を築き上げると思います。LINEやSNSで繋がる関係は非常に薄っぺらで浅い関係です。不動産を買う決め手は、最後にはやはりその不動産会社とお客様が、いかに濃い信頼関係を築けたのかに全てかかっています。そこにはスマホは無関係です。

いつの時代も便利な物が誕生すると人々はそれに群がり夢中になり、大きな流行を生み出します。その典型がスマホです。しかし流行は必ず去ります。スマホが消えた後に、また全く新しい物が登場し、不動産業界も再び振り回されて大混乱するでしょう。

しかし、その時は原点回帰すれば良いのです。単純に考えれば良いのです。人間と人間の信頼関係を築くにはどうしたら良いのか。答えはこのコラムを読んだ貴方なら一目瞭然。

不動産業界に今後訪れる全ての大きな難題は、人間と人間の深い信頼関係や絆が解決するのです。私はそう思います。そう信じたいです。人間の力を。

 
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