「不動産に強いファイナンシャル・プランナー」がこれからの「マンションの買い方」について3回に分けて考えます。
まず、マンションを計画、設計、施工する現場はどのようにして進むのかについて、マンション計画にゼネコンの営業として関わった経験もある私が自分なりに考察します。これからのマンションを買おうとお考えの方のヒントにしていただければ幸いです。
マンションができるまで
1.用地買収
マンション計画は用地の仕入れ、すなわち用地買収から始まります。大手のデベロッパーでも立地が良ければ数十戸程度を計画できる敷地から計画地の候補になり、大きい計画では1000戸を超える規模まで手掛けます。
(写真はイメージです)
駅前や昔からの住宅・商店が密集しているエリアの再開発などは再開発準備組合の組成から組合設立、計画の着手に至るまでに数年、場合によっては10年以上もかかるケースもあります。また、駅に比較的近いところにある工場の跡地なども大規模開発につながりやすい場所になります。
用地買収には当然事業としての見込みがあるかどうかの検討も含まれます。周辺の販売相場と今後の見通し。敷地の面積や形状から計画できる建物の大きさや戸数、を検討し、交通アクセスなども検討されます。
マンションは計画し始めてから分譲までの期間があり、周辺相場も変動します。価格変動リスクも踏まえデベロッパーは価格を算出しますが、デベロッパー同士でも熾烈な用地取得合戦があり、価格査定でも各社ごとに姿勢が変化しているようです。
以前は土地を保有している間に周辺相場が下落すると含み損を抱えることにもなりかねないので、デベロッパーは仕入れた土地をなるべく早く販売できるよう急ピッチで計画を進めました。しかし、近年はマンション価格が徐々に上昇し、また建築費が高止まりしている状況もあり、仕入れた後にじっくりと計画を進めるケースもあるようです。
2.設計・建築
用地取得後は計画地の特性などを考慮した商品企画を行い、周辺の環境や想定される購入層などを意識した計画が行われ、設計に反映されます。
設計が進み、施工者が選定され、確認申請が出され、工事に着手します。
購入者にとって気になるのは品質です。
大手デベロッパーは品質に非常にこだわっています。設計・施工の多くの段階でいくつものチェック項目を設け、施工するゼネコンはそのチェック項目を常に確認し、大きな計画ではデベロッパーに報告するためだけの人員を配置する必要があるほどです。
しかし、それでもミスが起きることがあります。横浜で大手デベロッパーが分譲したマンションの杭が支持層に到達しておらず傾いた話は記憶に新しいところです。(結局全棟を建て替えることになりましたが、その補償の内容はとても充実しており、大手デベロッパーのプライドを感じました)
中堅のデベロッパーもそれぞれに品質管理基準を設けていると思います。また、最近は購入する人も複数の物件を比較したり、ネットなどで物件のチェックポイントなどを学習されている方も多くなりました。デベロッパー側も消費者の行動をかなり研究し、要求品質を満たす努力をしているといえます。
どんなデベロッパーやゼネコンの施工でもミスの可能性は否定できません。品質上のミスが発生した時にはデベロッパーやゼネコンの補償力・体力がものをいう、ということになりそうです。
3.販売
新築マンションにはデベロッパーの「販売促進費」が価格に含まれています。物件によってその割合はまちまちですが、およそ7%前後といわれます。広告宣伝費やモデルルームの建築と配置する人、販売代理を行う会社へのフィーなどがこれに含まれます。
中古マンションを取引するときには仲介手数料(3%程度)がかかりますが、新築の場合にはその倍以上の販促費がかかっているということになります。
新築マンションの用地の取得から分譲、竣工、引き渡しまでがデベロッパーの事業であり、その中にはデベロッパーの負うリスクもありますが、利益も含まれます。戸建て住宅に比べるとちょっと複雑な感じがしますね。
次回は「マンションの価値」についての考えをまとめます。