契約およびその予約について

以前の記事で契約がいつ、どのように成立するのかを解説しましたが、不動産の売買契約には場合によって事前の段階・手続きというものがあります。それが「契約の予約」です。契約の予約とは、ある特定の契約(本契約)を将来において締結するという合意を当事者間で取り交わすことを言います。予約には2つあり、すなわち

1.将来において、当事者同士があらためて本来の目的となる本契約を交わすことが必須のもの

2.将来において、当事者の内の一方が自己の意向のみに基づいて予約を本契約へと高める権利(予約完結権と呼ばれる、予約によって付与される権利)を行使すれば、本来の目的となる本契約が自動的に成立するもの

となります。これを体験する、最もポピュラーな場面が不動産売買における「買受の申し込み」です。これは、「売りたい」という売主の申し込みに対して「買おう」という承諾を返せば契約となるところを、「いずれ契約したい」という買主の買受の申し込みに対して「承知した」と売主が承諾することで売買契約の締結の前にある意味での別個の(しかし、売買契約と密接に関係した)契約を締結すると言うこともできる手続きで、多くの場合は前述の1.に当たります。これにより、売主と買主は”まだ本契約は締結していない”ものの、本契約に向かって準備などを進めることになります。また、もし予約が前述の2.に当たるものであれば、その予約完結権は仮登記という形で登記することができます。これは、例えば予約において「買主が”今から一か月後に引き渡しを受ける”という通知を売主に行えば、もって本契約が成立することとする」といった予約完結権が付与されていた場合に、買主が将来訪れるであろう所有権移転の請求をする権利を仮登記により確保しておくことができることを意味します。つまり、この予約完結権は比較的強い権利と言うことができるため、売主・買主双方とも安易に付与・行使することの無いようにしなければなりません。

予約の段階での契約解除

時折、「買受の申し込み」の段階で売主または買主がキャンセルしたくなった場合の処理はどうなるのか、という相談を受けることがあります。この場合、違約金などの費用負担について心配されていることが多いのですが、前項を見ても分かる通り、買受の申し込みの段階ではまだ本契約が成立していないため、キャンセルに際して費用負担が発生することはほとんどありません。決して安易・横暴なキャンセルを勧める訳ではありませんが、売主としてはもし買受の申し込みを受けていても、本当にその買主と契約しても良いのかよくよく検討して、他により条件の良い候補者が居る場合にはキャンセルを考えることも必要でしょう。

 
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