数年前、地方から都内の会社に転職した友人から「引越し作業が煩わしいと考えていたところ、家具付きの賃貸を選んで良かった」という話を聞いたことがあります。
私自身も現在1件の戸建の賃貸を家具付きで行っているのですが、改めてそんな感想に触れると、今後は単身者世帯向けに家具付きの賃貸を……と検討したくなるものです。
そこで、本稿では家具付き物件の利便性について検証したいと思います。
家具の中で代表的なものを挙げるとすれば、ベッド、テレビ、冷蔵庫、洗濯機、エアコン等が考えられ、現に私の行う戸建賃貸ではこの5点をオーナー負担で備え付けています。
これ以外にも、家具としては電子レンジ、炊飯器、掃除機、布団、カーテンなどが考えられますが、これらは入居者の生活様式や好みの差異を考慮し、あえて備え付けないという選択をしています。
例えば、私個人のケースですが戸建の入居者は外国人のため、調理スタイルにも違いが様々考えられることから、電子レンジ、炊飯器は必要かどうかが把握できません。
また、掃除機についてもそもそも入居者自身に好みの掃除法やクリーナーがあることも考えられます。さらに、布団、カーテンについては固さや柄など好み自体が判別できないという点もあります。
このように、備え付けることで返って邪魔になる可能性がある調度品は最初から対象から除外する、というのも利便性の判断には重要になると思います。
それにしても、一般論で考えれば、手軽に身一つで生活を始められる家具付き物件は大変魅力的です。特にこれから単身赴任される方や初の一人暮らし始める方にとっての利便性は抜群といえるかもしれません。
他方、オーナー視点でみるとこれら家具の調達やメンテナンスの手間やコストを考慮すると負担になる場合も考えられます。
私の経験で言えば、当初備え付けたエアコンの調子が悪く修理交換にかなりの手間を要しましたし、新品購入した洗濯機が初期不良で槽の回転具合が悪かったため部品交換して正常に戻すという作業に立ち会ったこともあります。
こうした手間や負担を考慮すると、いっそのこと家具付きにせず家賃をディスカウントして賃貸に出すほうが得策だったのではないか、と感じたこともあります。
また、家具を備えていることで、家具所有のまま引越しを考えている方からは返って場所塞ぎと思われてしまい、入居の際の検討対象から外されてしまうというリスクも考える必要があります。
以上のようにみてくると、家具付き物件も一般的には利便性は高いといえるかもしれませんが、オーナーの負担や入居者の特性を考慮すると良し悪しという面も見えてくるため、導入に際しては慎重に検討することが必要になるでしょう。