ちょうど1年程前、友人から以前に別荘地として購入した土地の売却の相談を持ちかけられ売却査定に出すことを勧めた。
査定に出す直前に、私自身も現地に見に行って確かめてみたが、その土地に立ってみると目の前一面に海が広がる絶好の場所だった。釣りや海を眺めるのが好きな人には申し分のない立地である。
この海は海岸ではなく湾なのだが、辺りの道路と湾の入り組み加減、周囲のややひなびた雰囲気がとても落ち着く。近くに見えるテトラポットがやや気に入らないが、今時の湾の光景ではそれほど珍しくもない。
数ヶ月後にもらった査定結果は、取得時の価格よりも15%ほど低い価格だった。
査定結果を前にギリギリまで悩んだようだが、今回は特に急ぎの売却ではないという友人の意向も踏まえ、私は持ち越すことを提案してみた。
何よりも絶好の眺望の土地であるし、今後、それなりの価格で同地を欲しいという人も現れるかもしれない。
この土地を購入したのは平成18年頃、売主はその周辺を相続した兄弟の一人の方が分筆により手放したという経緯だった。
この周辺はバブル崩壊後の平成4,5年頃、別の知人とともに良く土地探しをしたエリアでもあった。その頃知ったのは一口に海関連の土地探しといっても、「海が目の前」「海が見える」「海が近い」「海まで徒歩○分」など条件は様々あり、例えば高台にある家の一部の窓から海が見えるというような物件でも「海が見える」というフレーズで紹介されているものもある。
それでも、この平成4,5年頃のそのエリアには海関連の物件の出物がほとんどなく、かなり足繁く探しても希望に近いものは数件あるかないか程度だったと記憶している。
海関連物件の価格が下がったと実感したのは、東北の震災があった平成23年以降……やはり津波被害の痛ましい被害の記憶が影響したことは否定できない。
それにしても、時代の移り変わりと共に、世相や人々の嗜好も様々に変化するものだ。
東京の住みたい街ランキング上位も、以前圧倒的だった吉祥寺が抑えられ、最近では北区の赤羽が上位になったりするという。以前よく理由として挙がっていた「洗練されている、都会的」がときに「庶民的風情、物価が安い」などに変わったりもするから、人々の好みの変化には驚かされる。
結局、不動産の需要も実際に住む人々の嗜好と切り離しては考えられないのだから、売却や投資もその辺りのトレンドを加味して絶好のタイミングを狙うしかないのだろう。
いつか、海が目の前に広がる友人の所有地も別荘やセカンドハウス需要として買値以上の金額で売れることを願っている。その需要の喚起が、釣りブームなのか、サーフィンなのか、海ガールの登場なのか、までは見当もつかないが……