損益分岐点を見極める
不動産売却を売却する場合の事情には、様々なものが考えられます。
相続や離婚に伴う財産分与もあれば、単純に引越しや買い替え資金調達のための売却、さらには投資用不動産として売却益を求めた売却、再投資のための賃貸用不動産の売却等も広く行われているところです。
これらいずれの事情による売却であっても、誰しもができるだけ手早く高値での売却を希望するのが常だと思いますが、こと投資用として購入した不動産であれば“どのくらいの期間で、どれだけの利益(あるいは損失)がでているか”を検討するのが通常であり、ただ漫然と売却されるという方はあまりいないと思われます。
そこで、本稿では、不動産投資の出口としての売却において、“いくらの金額で売却すれば利益がでるか、あるいは損失にならないか”のテーマにつき考えてみたいと思います。
いわゆる“損益分岐点”の認識という作業です。
損益分岐点を考える前提
ここで単純に、2000万円で取得した不動産が5年経過後に3000万円で売却できたという話なら、損益分岐点など求めずとも、その利益額(1000万円)は明らかです。
しかし、不動産投資は、取得には取得税、維持には固定資産税・都市計画税、家賃収入には所得税、売却益には譲渡所得税等々と入口から出口まで何かと税金が絡んでくるシステムであることは周知の事柄ですから、これら税金の計算は避けては通れません。
また、不動産にはそれを所有し維持するには当然に一定の管理コストが掛かることに加え、ローンを利用した金額部分には金利の支払いというコストも生じることから、これらの計算をも踏まえることは売却時の検討内容として外せない作業といえるでしょう。
これに加え、不動産のうち建物は年月の経過により価値が下がっていくのですから、この減価償却も考慮にいれる必要がでてきます。
さらに、利益の計算に際しても、不動産投資の利益=売却益に限ったわけではなく、所有する期間における賃貸収入も投資の運用効果として利益に組み込んで考えるべきものです。
損益分岐点とは
以上を考えると、不動産売却における損益分岐点とは、ある不動産を購入してから売却に至るまでの間に生じた同物件に関わる全ての収支を踏まえた結果、売却した時点での差引きがプラスマイナスゼロになる地点、とここでは定義してみたいと思います。
以上の点を確認した上で、次稿では損益分岐点をわかりやすくイメージするために、その計算方法や着目すべき項目など具体的な売却例に沿って検討していきたいと思います。