7月2日に行われた東京都議選の結果は、都民ファーストの会が議席数を伸ばした。一方で自民党は23議席と、過去最大の惨敗を喫している。様々の問題が取り上げられている安倍政権への都民の評価が表れた結果となった。では、都議選の結果は、不動産業界にどういった影響を与えるのだろうか? FP 松浦健二氏に聞いた。(リビンマガジン編集部)

築地市場移転の方針転換

土壌汚染で築地市場から豊洲市場への移転が不透明になっていたことについて、小池都知事が「安全対策を講じたうえで豊洲へ市場を移転し、築地市場は跡地を民間に売却せずに貸し出して再開発し、食のテーマパーク機能を持った施設をつくる」との方針を都議選前の6月20日に発表しました。

舛添要一前都知事までは、市場を豊洲へ移転して築地は売却し、売却資金で移転費用を捻出する予定だったので、移転時期が遅れたものの、移転することについては従来から大きな変更はありません。しかし、移転後の築地は築地ブランドを活かした施設をつくることにしたので、民間の会社が自由に開発する従来の方針からは大きな方向転換になります。移転費用も賃料収入によって捻出することになります。

都議選の結果、議会の主導権が自民党から都民ファーストの会へ移ったので、今後は小池都知事の方針にほとんど反対することなく進んでいくでしょう。

(画像撮影=松浦健二)

築地市場跡地の経済的効果

築地市場の跡地利用について、不動産の観点からみると、今回の方針発表は大きな影響を与えそうです。築地市場の面積はとにかく広いです。どのくらい広いか他の主要な施設と比べてみました。

 

場所

面積

代々木公園(渋谷区)

54.1万㎡ 

浜離宮恩賜庭園(中央区)

25.0万㎡

築地市場(中央区)

23.1万㎡

日比谷公園(千代田区)

16.2万㎡

六本木ヒルズ(港区)

11.6万㎡※再開発区域面積

東京ミッドタウン(港区)

10.2万㎡※再開発区域面積

資料:代々木公園・浜離宮恩賜庭園・日比谷公園は東京都公園協会HPより、築地市場は東京都中央卸売市場HPより、六本木ヒルズは森ビルHPより、東京ミッドタウンは東京ミッドタウンのHPより

築地市場の面積は23.1万㎡もあり、南隣に位置する浜離宮恩賜庭園と大差ない広さです。日比谷公園の約1.5倍にもなります。商業施設では六本木ヒルズや東京ミッドタウンの約2倍の広さで、これだけの土地を民間がある程度自由に再開発したら、集客力の高い施設をつくることも可能ではないでしょうか。


東京ミッドタウン (画像=写真AC)

森ビルのホームページによると、六本木ヒルズは「2003年のオープン以来、国内外から毎年4,000万人を超える人々が訪れ続けています。」と書かれています。築地もこのくらいの数字は十分可能でしょう。周辺地域でも再開発が行われ、活性化による地価の上昇も大いに考えられたでしょう。

ちなみに、最近発表された2017年の路線価は、築地市場の前面道路で150万円/㎡となっています。路線価を基に上記の市場面積で計算してみると、土地価格は3465億円にもなります。不動産業界にとっては、これだけの価値がある不動産が動くのと動かないのとでは大きな違いです。

今まで移転後の跡地利用については、過去2016年夏季五輪招致を目指していた際、メディアセンターをつくる(NHKの移転)話もありました。地元の中央区では、移転後も賑わいを維持できるよう場外市場に新たな生鮮市場「築地魚河岸」をオープンさせました。今回の方針決定で築地市場跡地の使途が食のテーマパークになったことから、場外市場の在り方など、中央区としては都と上手く連携しながら、区民や市場関係者等が納得できる進め方をしていくことが重要となっていきます。

市場移転問題の不動産業界への影響

築地市場の跡地を食のテーマパークとして利用することで、不動産市場にどのような影響があるのでしょうか。活性化という面では全面的な再開発よりトーンダウンするでしょう。ただ、築地市場跡地は広大で23.1万㎡もあります。全て(環状2号線等を除く)を食のテーマパークにするのでしょうか?一部はオフィスや病院、大学等、他の用途として使うことも十分考えられます。民間企業のアイデアを活用するようなので、素晴らしいものができることを期待しています!

2020年、東京五輪を控えて都心部を中心に不動産価格が上昇しています。人口も都心回帰し、既にかなりの活気を呈しています。中央区民の筆者としては、築地を売却して民間企業が全面的に再開発するのと、賃貸で食のテーマパークにするとのどちらが良いかと言うよりも、もっと住みやすい住み続けられる中央区にしてほしいと願っております。

不動産業界に与える影響は、築地市場の方向性より国や都の政策による影響の方が大きいです。結局は、都政の中心が自民党でも都民ファーストの会でも構いません。不動産大不況になることのないよう、東京五輪後の反動や税対策による賃貸住宅の増加、人口減少による空き家の増加等への対処を適切にして欲しいものです。

 
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