母親が被相続人で、その3人の子どもが相続人でした。そして長兄が母親の所有していたマンションでともに暮らしてた事例です。このマンションを3人が相続した結果、それぞれが持分として、3分の1ずつその所有権を持ちます。
このように相続人の一人が相続財産である建物で生活しているケースでは、相続人間の意見が対立する可能性が高いと考えられます。
まず、長兄とすれば、長年母親とともに暮らし、慣れ親しんできた住まいであることから、「このままここに住み続けたい」と願うでしょう。他方、他の相続人の中には「会社をリストラされて収入が途絶えて、困っている。だから、このマンションを売ってお金に換えて分けてほしい」などと望んでいる者もいるかもしれません。
「兄さんのものだけではないのだ。早く売ろう!」
「イヤだ!絶対に出て行かない!」
などと両者がともに譲らないまま、相手への反感を次第に募らせ、双方が攻撃的な態度を強めていくたくさんの事例を私たちは見てきました。
その先に待っているのは、もはや後戻りのできないドロ沼の相続争いの道です。
不動産の中には「争続」をもたらすもっとも危険なタネが眠っている—相続財産の中に土地や建物が含まれている場合には、そのくらいの警戒心を持って、最大限の注意を払うことが必要となるのです。
不動産は常に相続トラブルを招く可能性が高いものです。相続税対策だけを考えるならば、不動産は有効な対策となりますが、争続対策も十分考える必要もあります。