原題:The House of the Rising Sun(米国・民謡)
作曲:不詳
作詞:不詳

Animals, The - Boom Boom - EP - UK - 1964
アニマルズ

「朝日のあたる家」は米国のフォークソングだ。20世紀初頭に米国の中部~南部で成立した歌とされるが詳細は不明だ。1960年代にビートルズやローリング・ストーンズらと並び称された英国のバンド・アニマルズがカバーして大ヒットさせた。1964年のことだ。

There is house down in New Orleansから始まる歌詞は、They call the risin sunと続き、娼婦に身をやつした女が悲惨な生涯を回想する内容だ。つまり朝日のあたる家とは娼館のことだ。

歌詞では寄る辺の無い女が語り手だが、長く歌い継がれる中で曲そのものもさまざまな遍歴をたどる。

戦前から歌われていた曲だが、第2次大戦後のニューヨークのフォークカルチャーに定着した。ウディ・ガスリーやジョーン・バエズといったフォーク歌手がレコーディングした他に、ボブ・ディランも歌詞を追加して自身のデビュー・アルバムにこの曲を収録する。

Bob Dylan and Joan Baez perform at March on WashingtonBob Dylan and Joan Baez perform at March on Washington / archivesfoundation

ボブ・ディランとジョーン・バエズ

さらにディランのバージョンを聞いたアニマルズが、もともとあった歌詞から語り手を男に、舞台を少年院にそれぞれ変えて発表する。
フォークロックの始まりとも言われた仕上がりで、もの悲しいアルペジオが印象的なギターにサイケデリックにも聞こえるオルガンの音が絡む。ヴォーカルのエリック・バードンの声はソウルフルで野性的でもある。演奏、ヴォーカルともにワルの男が自分の人生を哀れむ歌詞の世界観にぴったりで、世界中でヒットしたのも納得の完成度の高さである。

アニマルズはディランによってこの曲を知ったとされる。しかし、後から発表されたアニマルズのカバーがあまりに有名になったためにディランもしばしば、このバージョンで歌うのを要求されるようになってしまった。へそを曲げたディランはなんとこの曲を封印してしまう。それでいてアニマルズ版のもつパワーに引きつけられ、エレキギターやオルガンを使ったロックサウンドに興味を持った。後の「ロック転向」につながったとされる。

日本では伝説的なシンガーソングライターの浅川マキが元々の世界観を生かして独自の歌詞をつけた曲が浸透する。朝日のあたる家は「朝日楼」という娼館に見立てて、情感たっぷりに歌った。
このバージョンは、ちあきなおみや藤圭子といった本格派の歌手にもカバーされた。

洋の東西を問わずに歌い継がれる名曲だが、最近ではあまり歌う人もいなくなったように思う。
若いアーティストの挑戦を期待したい。

(編集部)

 
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