「海街diary」（2015・日本）
監督：是枝裕和
脚本：是枝裕和
原作：吉田秋生（小学館）
出演：綾瀬はるか、長澤まさみ、夏帆、広瀬すず他
「一緒に暮らさない？4人で」
そんな気軽な言葉から、新しい家族が生まれます。世界的に評価の高い是枝裕和監督作品で、旬の人気女優4人が顔を合わせてヒット作を取り上げます。
4姉妹が利用していた江ノ電・極楽寺駅 （画像=写真ACより）
家族の誕生
映画祭などでの活躍もあり、世界的な評価を手にした監督の是枝裕和は家族を撮り続ける。カンヌ映画祭で審査員特別賞を受賞した「そして父になる」、幼児虐待を描いた「誰も知らない」など、その作品を通じて「家族とはなんだ？」と何度も問いかける。
しかし、家族の崩壊を描いた前述2作に比べて、「海街diary」で描かれるのは家族の形成だ。全編を通じて画面に映し出されるのは、包み込むような緩やかな光線。この映画は、柔らかい輪郭で描かれる家族の物語なのだ。
映画は吉田秋生の手による漫画が原作だ。鎌倉で暮らす3人姉妹と異母妹とが、父の葬儀で出会うところから本編は始まる。長女・幸を綾瀬はるか、次女・佳乃を長澤まさみ、三女・千佳を夏帆。そして異母妹・すずを演じるのが広瀬すず。
しっかり者だけど、自身の幸せを後回しにし続ける長女。
明るく前向きだが、飽きっぽくてどこ危なっかしい次女。
大らかなのだが、意外に頑固な三女。
家族それぞれが小さな問題を抱えていて、相互に補完し合う関係として無くてはならない存在になっていく。
撮影地となった北鎌倉の風景 （画像=写真ACより）
ほぼ1年を通じて撮影した鎌倉の風景
その舞台となるのが、のどかな鎌倉の街、そして祖母が残したという古い家だ。
庭にある梅の木から採った実で梅酒をつける。縁側に座り、意味のない会話をする。浴衣を着て花火をする。そうした日常がやはり、いとおしく思えてくる。
それぞれが、心を許しあい、信頼を築いていく様子を丁寧に描くため、ほぼ1年間にわたって断続的に撮影をおこなったという。それゆえ、美しい鎌倉の四季もこの映画の主役の一つだろう。
海岸線を歩く登場人物を見ていると、海風が観ているこちらの頬をなでているような感覚を覚える。
撮影でも使われた由比ガ浜 （画像=写真ACより）
柱の傷にみる普遍
深くは干渉し合わない、緩やかな家族像は新しいようだが、普遍的でもある。
是枝はこんなシーンでそれを表現してみる。
家の柱に記された3人姉妹の成長の跡。すずも幸の手を借りて、自身の傷を刻む。
「遠いところお疲れさまです」と他人行儀だったすずが、本物の家族になった瞬間だ。
家は家族の景色を刻み込んでいる。
この家、じつは北鎌倉に実在する。
今も、民家として使われており、是枝自らが探し回って見つけたという。
敬称略
