隅田川越しに見えるスカイツリー (画像=リビンマガジン Biz編集部撮影)

5月22日は、「東京スカイツリーが開業した日」である。

東京都墨田区押上にある東京スカイツリーは、地上デジタル放送を送信するための電波塔だ。2003年には地上デジタル放送が開始されていたものの、200m級の超高層ビルが立ち並ぶ東京都心部では、既存の東京タワーの高さ333mから送信する電波が届きにくい状態となっていた。そのため、東京タワーよりもさらに高い新タワーの設立が望まれたのだった。

新タワーの建設場所として選ばれたのが、1993年に貨物の取り扱いを終了し、東武鉄道の資材置き場となっていた、貨物列車の操車場跡地だ。こうして押上に新タワーの建設が予定され、2008年に着工。建設途中から観光の新名所として人気を博し、建設の記録を写真におさめるために多くの観光客や地元の人々が集まった。そして2012年、ついに「東京スカイツリー」として634mのタワーがオープンした。

スカイツリーは、電波塔の役割のみならず、防災機能を持つタワーとしての役割も持っている。商業施設・東京ソラマチや、水族館、プラネタリウムなどの観光施設、オフィスビルも併設され、下町情緒あふれる押上の街に活気を与えた。

タワーのデザインは、地上付近は三角形になっており、上に向かうにつれて徐々に円形に近づく形となっている。日本の伝統的な建築にみられる「そり」や「むくり」の曲線の美しさも盛り込まれており、角度によって変わるタワーの表情は、東京の街の景観を彩る新たなシンボルとなった。

五重塔を模した制震構造を採用

東京タワーがエッフェル塔をモデルにしていたのに対し、東京スカイツリーは最新技術を用いながらも、日本古来の技術や伝統を重視している。構造技術においては、五重塔で使われた揺れを抑える技術が応用されているという。これは、中央部に儲けた鉄筋コンクリートの円筒と外周部とを分離し、中央部の円筒上部を重りとして使っているのだという。設計を担当した日建設計によると、この構造は大地震時に効果を発揮するという。実際に、工事途中に東日本大震災が発生したが、建設作業員にはケガ人はでなかったという。伝統的な技術と最新の技術とがあわさった画期的な建築物といえよう。

また、タワーの色にも、藍の青みがほんのりと加わった白色の「藍白(あいじろ)」という伝統色が取り入れられている。

さらに夜になると、LEDライトによる演出も楽しめる。ライティングは、隅田川の水を意識させる淡いブルーの「粋」と、江戸紫と金という江戸の美意識を思わせる「雅」。2種類のライティングを1日毎に交互に楽しむことができる。

日本特有の美意識を再解釈してできた新しい街並みは、開業から6年経ったいま、我々の生活に溶け込みながら、ほのかに和の心を思い出させてくれているのだ。

 
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