8月14日は映画監督「ヴィム・ヴェンダースの生まれた日」だ。

72歳。世界的な巨匠と呼ばれるにふさわしい年齢になった。

ヴェンダースはドイツ・デュッセルドルフ生まれ。

映画批評などを書きながら短編映画を自主制作し、1970年に「都市の夏」で長編映画にデビューする。その後、発表する作品が各種の映画祭で高い評価を受ける。

wim wenders
ヴィム・ヴェンダース (画像=Flickr)


青年と少女の交流を描く「都会のアリス」(1974年)、作家志望の若者の自分探しの旅がテーマの「まわり道」(1975年)など旅を下敷きにしたロードムービーで世界的な評価が確立された。この2作品に「さすらい」(1976年)を加えた作品群をロードムービー三部作として、映画のクラシックになっている。

以降、作風を変えることもあるがロードムービーがヴェンダースの代名詞になっている。

ヴェンダースは劇映画だけでなく、ドキュメンタリー監督としても評価が高い。ギタリストのライ・クーダーがキューバ人ミュージシャンを取り上げて制作した音楽アルバム「ブエナ・シスタ・ソシアル・クラブ」と同名の映画(1999年)は世界的なヒットとなった。音楽に人生を捧げる老いたミュージシャンの情熱あふれる演奏シーンは観客の心を打ち、世界的なラテン音楽ブームを巻き起こした。

そのヴェンダースが制作総指揮を執り、自身を含む6人の監督で作ったのがオムニバス・ドキュメンタリー映画の「もしも建物が話せたら」(2016年)だ。

ポンピドゥーセンター(パリ)やロシア国立図書館(サンクトペテルブルク)などの建物が語りかけてくるという変わった設定で、世界的な監督が一つの建物を題材に映像を紡いでいく。

ヴェンダースは本国ドイツのベルリンにあるベルリン・フィルハーモニーを取り上げる。建築家ハンス・シャロウによって設計されたもので1963年に竣工したコンサートホールだ。

映画では「建物は、あなたが考えている以上に世界に影響を与えている。外から見れば私は小さいが、開かれた社会という理想郷ユートピアが私の中に実現している」と建物に語らせている。

確かにこの映画で取り上げられた建物はどれも人々が集い、記憶を焼き付け文化や歴史がつくられている。決して自ら働きかけているようには見えないが、建物が人々の行動に作用していることに思い至る。美しい映像を見ながら、そんな感想がわいてくる映画だ。

余談だが、ヴェンダースが取り上げようと思った建物はもう一つあった。それは同じくベルリンのドイツ国立ベルリン図書館だ。こちらはヴェンダースの劇映画「ベルリン・天使の詩」(1987年)で、ロケ地として使われている。

敬称略

 
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