6月6日は数々の傑作テレビドラマを生み出した脚本家・山田太一の誕生日だ。1934年生まれの山田は、今年83歳になった。

「男たちの旅路」(NHK)「ふぞろいの林檎たち」(TBS)など、上げればきりが無いほどの、思い出深い作品を届けてくれた山田だが、その衝撃度でいえば「岸辺のアルバム」を上げる人が多いのではないだろうか?


(画像=写真ACより)

あらすじを紹介する。岸辺のアルバムで描かれるのは、田島謙作(演・杉浦直樹)を主とした田島家の崩壊だ。一見すると平凡な家族でしかない田島家は、東京郊外にある一戸建てに住み、夫婦に子供は二人。まさに、昭和の「標準家庭」だ。

しかし、妻の則子(演・八千草薫)は妻子ある男と不倫。長女で大学1年生の律子(演・中田喜子)は、外国人グループと付き合ううちにレイプされ、妊娠、そして中絶を経験する。高校生の長男・繁(演・国広富之)は、家族と因縁浅からぬ女性と交際しつつ、家族の問題を受け入れられず、大学受験に失敗する。夫の謙作も仕事にかまけて家庭を顧みない負い目を感じつつ生きており、会社の業績が悪くなると、違法なビジネスの片棒をかついでいく。

このように、ホームドラマのフォーマットから逸脱すること無いまま、人間の影をリアルに描いていくのが画期的だった。後のドラマ界に与えた影響は計り知れない。

なかでも八千草にとっては、新境地を切り開いた金字塔的な作品となった。当時の八千草は清純派の代表とされる女優で、いわゆる良妻賢母の役柄を演じることが多く、不倫のイメージとは対極にあった。その八千草演じる則子が、渋谷のラブホテルで不倫相手と罪を重ねる姿は、視聴者に強烈な印象を残した。

最終話では、幸せの象徴だったマイホームが、洪水によって流されてしまう。文字通り崩壊していくのだ。それでも、謙作が流されてゆく家の中から最後に持ち出したのは、幸せを刻んだ家族のアルバムだった。


(画像=写真ACより)


敬称略

 
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