ドラマなどで時折見かける相続トラブル。遺産相続をめぐって「隠し子の存在発覚!」あるいは「分割割合の偏り」などが原因で相続人同士の争いごとに発展、「やむなく裁判で決着」というのがドラマの筋書きの定番といったところでしょうか。

 しかし、遺産相続をめぐるトラブルは、他人事ではないかもしれません。「亡くなった方の生前介護」や「相続対策のための養子縁組」、「家長制度の名残」、「生前贈与の不均衡」、「事業(家業)の承継問題」、「遺言によるトラブル」など原因を数え上げればキリがありません。

 司法統計データーによると平成26年の遺産分割事件の新受件数(※1)は、調停13,101件、審判2,159件となっており、1年間で15,260件の相続トラブルが家庭裁判所に持ち込まれています。

 この件数は、昭和60年では、調停5,141件・審判1.035件のあわせて6,176件ほどであったものが、年々増加傾向ととなり、平成17年には調停・審判をあわせて11,999件となっています。

 

 1年間で15,000件ものトラブルと聞くと「大変だ!他人事ではない」と心配になるのは当然の心境だと思います。

ごく一部には、相続対策と称して不安を煽る業者も皆無ではない中、冷静になってこの数値を見つめてみたいと思います。

 厚生労働省が公表している人口動態調査(※2)によると平成28年は1,296千人(推計値)の方がお亡くなりになりました。この死亡者数も高齢化・人口減少の影響もあり、年々増加傾向が続きそうです。
 

1年間の遺産分割事件と死亡者数の件数の割合は、比較可能な平成26年で比べると
15,260件÷1,273,004名×100=1.199%
 同様に昭和60年では、0.82%、平成17年1.11%となります。全死亡者に占めるトラブル割合も増加傾向になるとはいえ、1%前後のトラブル発生率になるという推定が可能でしょう。

この解釈は、伝え方によって受け取る感情は間逆になります。

「相続トラブルは、何と15,000件を突破!しかも年々増加傾向」

「99%は相続トラブルに発展していない!」

 上記は、いずれも事実に基づいた伝え方です。この情報に接した受取り手がどのように受け止めるか?という問題だと思います。
 

 とはいえ、現実に相続トラブルは発生している以上、楽観視するべきではありません。相続トラブル防止の一つの策として、遺言書の作成や生前に家族での話し合い、弁護士など専門家の助言など出来ることかは始めておきたいものです。
 

家庭裁判所に調停や審判を申し立てた場合には、トラブルの解決までの調停・審理期間は1年程度になることも少なくありません。その間の当事者(相続人)の精神的・体力的・時間的負担は計り知れないと思います。
 

相続といえば、平成27年1月に施行された相続税法の改正による節税対策ばかりに目が向けられているようですが、円満な財産の移転こそが相続の本質だと思います。

その上で、相続税対策が有効な方は、選択肢の一つとして「不動産を購入する」といった方法も検討すると良いでしょう。

※ 1 平成26年度 司法データー:第2表 家事審判・調停事件の事件別新受件数(全家庭裁判所)
http://www.courts.go.jp/app/files/toukei/087/008087.pdf
2 平成28年(2016)人口動態統計の年間推計
http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/jinkou/suikei16/dl/2016suikei.pdf

 
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