今回は、実家が東京都内の一戸建て住宅だという知人が直面した不動産の相続についてご紹介したいと思います。彼女の実家は東京都内にあり、1階が店舗。2~3階が住居となっていました。兄夫婦は実家の家業を継いで両親とともに同居。そんな状況下で両親が亡くなり、兄弟3人に相続が発生しました。さて、1戸しかない店舗兼住宅を、3人で分けるにはどうしたらよいでしょうか?

 このケースでは、お父さんは昔ながらの頑固爺で、長男が家督を相続するのが当然のことと考えていたと思われ、遺言書などは何も残されずに逝ってしまいました。遺言書がない場合、相続財産は配偶者が2分の1を受け取り、残りの2分の1を兄弟の数で分けることになります。お母さんはすでに亡くなっていましたので、この場合は相続財産を兄弟3人で分けることになります。相続財産には不動産のほかに現金や預貯金、株なども含まれます。では、どうやって相続したらよいのでしょうか。方法としては3つあります。まずは店舗兼住宅の物件価格を出してもらい、他の相続財産と合わせた合計額を算出しておきましょう。

 1つ目の方法は代償分割。これは、どんな方法かというと、まず店舗兼住宅は兄が取得します。物件価格がちょうど相続財産の3分の1の金額なら問題ありませんが、普通は物件価格の方が大幅に上回っていますよね。ですので、物件を取得した兄が他の2人の兄弟に不足した相続財産相当の金額を支払うことで3分の1ずつ相続するという方法です。

 2つ目の方法は換価分割。これは、店舗兼住宅を売却して現金化し、3人で均等に分ける方法です。つまり、家を手放してしまうということですね。

 3つ目の方法は共有分割。これは、店舗兼住宅の名義を3人の共有名義にし、他の現金等の相続財産を3人で均等に分けるという方法です。

 1戸しかない店舗兼住宅には兄夫婦が住んでいて家業を継いでいましたので、そこは兄夫婦の仕事場でもあります。ですので、ここを売却して3人で分けるという換価分割は避けたいですよね。そうすると、共有分割か代償分割ということになりますが、物件を共有名義にしてしまうと自由に売ったり買ったり建て替えたりということが難しくなりますし、将来さらに相続が発生したときにどんどん細分化されてしまい、とても複雑な物件になってしまいます。ですのでこれも避けたい方法です。

 というわけで、残る1つの方法が代償分割です。代償分割なら兄が店舗兼住宅を取得できますので、仕事も失わず住み慣れた我が家を追われることもありません。ただ、兄が他の兄弟に相続財産相当のお金を払えるかどうかが問題となってきます。通常は一括で払いますが、話し合いにより分割にすることもできます。とはいえ、東京都内の物件ともなると支払は容易ではありません。

 では、私の知人はどうやって相続したのかというと、代償分割の方法を取りました。といっても、兄は妹と弟に400万円ずつ支払いました。兄が支払える精いっぱいの金額ですが、合計800万円もの大金です。それでも都内の店舗兼住宅を3分割した金額には程遠く、代償分割したとはいえません。しかしながら、妹と弟は家業を継いで両親と同居してくれていた兄に感謝していました。ですので、ありがたく400万円を受け取り、遺産分割協議を終えたそうです。

 
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