■書名:もし京都が東京だったらマップ

■著者:岸本千佳

■出版:イースト・プレス

■定価:800円+税

物事を人に伝えるときに、何かに例える場合がある。

その例えは、できるだけお互いの共通認識のなかにあるものでなければならない。

『もし京都が東京だったらマップ』は、京都への旅行や、移住など、京都以外に住んでいる人に京都を説明するため、反対に京都から出たことのない京都人に向けて、東京の各都市を京都の地図に当てはめて例えたものである。

著者の岸本千佳氏は、京都出身だ。大学卒業後、東京の不動産ベンチャー企業に就職、その後京都に戻り、不動産コンサルタントをする傍ら「京都移住計画」というプロジェクトに参加している。2015年、岸本氏の個人ブログに掲載した「もし京都が東京だったらマップ」がネットを中心に大きな話題になる。「Yahoo!ニュース」に取り上げられ、TV出演など、岸本の存在を世に知らしめた。本書は、当時の「もし京都が東京だったらマップ」をさらに細かく解説したものだ。

京都の叡山電鉄沿線をJR中央線沿線に例える章では、街の規模こそ違えど「中野」「高円寺」「阿佐ヶ谷」「荻窪」がそれぞれ、叡山電鉄の各駅との共通点を持っていることが分かる。中央線沿線に感じる「サブカル」や「アート」といった各駅の要素が「出町柳」「元田中」「茶山」「一乗寺」にもあり、その分かりやすさと納得感に思わず唸ってしまう。

読後、関西出身の筆者も「もし大阪が東京だったら」を考えてみた。

もし大阪が東京だったら

大阪の地名

東京の地名

理由

梅田(大阪)

新宿

東西の主要ターミナル駅

淀屋橋

丸の内

大企業のオフィス街・おしゃれな飲食店

天王寺

上野

他県からの玄関口

心斎橋

原宿

ファッション+若者の街

なんば

渋谷

多様な交通機関の乗り入れ+繁華街

京橋

錦糸町

立地と街が持つ多国籍な雰囲気

北新地

銀座

高級飲み屋街

福島

新橋

おじさんが集まるスポット

日本橋

秋葉原

電気街・ポップカルチャーが集まる

大阪天満宮

人形町

神社仏閣や繁華街が融合する街

中崎町

清澄白河

元労働者街で、カフェや雑貨屋があるおしゃれスポット

※あくまでも個人的な見解です。

梅田(大阪)×新宿

言わずと知れた大阪のメインターミナルは新宿に例えられる。

地下鉄やJR・環状線、私鉄が乗り入れている部分や、再開発された駅周辺の高層オフィスビルなどにも類似点が多い。大阪駅から東に伸びる東通り商店街の横町に入った通称「堂山エリア」にはゲイバーが並び、新宿二丁目を彷彿とさせる。

天王寺×上野

天王寺は、大阪以南からやってくる人々が最初に出会う都会だ。

それは、東北の玄関口である上野と似ている。あべのハルカスやキューズモールなど開発著しい天王寺駅周辺だが、少し路地を入ると密集した民家があったり、怪しげな店が並ぶ様子は、上野駅から東に歩いた景色に近いものがある。

京橋×錦糸町

大阪にある京橋駅は「中途半端な都会」というイメージがある。JR大阪環状線や東西線、私鉄京阪電鉄が通るサブターミナルで、奈良県や京都から訪れる人も多い。錦糸町は「東の新宿」と呼ばれる通り、千葉方面からの人々が多く集まる。飲み屋が多くあり、少し雑多な街並みや、多国籍な雰囲気は双方の都市が持つ空気である。

など上記以外にも大阪の街を東京の街で例えることができるだろう。

また、大阪に限らず、あらゆる都市や街を東京に例えられるのではないだろうか。

岸本氏は、「街は生き物」だと語る。

街が変わっていくこといくことに批判の声も多々ありますが、その事実を受け入れて前向きにとらえることが、その地に暮らす者の使命だと私は思います」。本書では、京都の紹介だけではなく、「街歩きのすすめ」や「街の見方」も指南している。

生き物であり、日々変化していく街を我々も自分の目で体感することが重要なのだ。

 
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