人材のプロ青柳功「不動産キャリアの達人」


不動産業界の人材育成・人材教育をてがける青柳功さんに、不動産業界のキャリアアップや評価、必要スキルについて紹介してもらいます。


第4回目は、不動産ビジネスにおいてキャリアアップしていくために必要なマネジメント能力について紹介します。また、各能力のチェック項目も公開します。(リビンマガジンBiz編集部)


(画像提供=写真AC)

不動産業界でマネジメント能力が求められている理由

営業職の場合、個人で目標を達成するスキルとチームで達成させるスキルは、似ているようで全く別です。「転職者が不動産企業に求められる4つのポイント」でも触れましたが、不動産業界でキャリアアップするならば、マネジメント能力をしっかりと磨き上げていく必要があります。

私が担当している企業でも、個人プレイヤーからマネージャーとしてチームでの成果を追うケースが増えてきました。

その背景には、不動産業界が人手不足であり、新卒を採用するケースが増えてきている点が挙げられます。マネジメントが機能しないと新卒社員の早期離職に繋がってしまうからです。

企業の人材採用を科学的に分析した『採用学』(新潮社)の著者である服部泰宏氏も長年の研究で、新卒社員が早期離職する場合と踏みとどまる差は、「会社・上司への期待」であることが1,000人を超えるインタビューから明らかになったと主張しています。

私どもが主催する新入社員研修でも不動産業界の受講企業が年々増えてきています。

以前までの不動産業界は、大量に新卒を採用(少なくとも20名~30名程)し、1人~2人残れば良いという乱暴な採用をする会社が多くありました。

現在では、人材確保が難しいからこそ、現場でのマネジメントを機能させ人材育成に本格的に取り組む必要があると気がついた企業が多くなりました。

しかし現実は、マネジメントを教わったこともない不動産プレイヤーが多く、かなり苦労しています。部下育成やリーダーシップを期待される立場になった時期に十分なマネジメントができず、部下の成長どころか会社成長の阻害要因になってしまうケースが多く見られます。

1人のプレイヤーとして数字を上げるのは、年齢とともに必ず限界がきます。転職市場では、個人スキルの価値はさほど高くありません。むしろ「癖がある」と見なされ、必要ないスキルに見られる可能性もあります。やはりマネジメントのスキルを身に付けておくことが必要です。

マネジメントスキルとは何か?

マネジメントスキルにおいて押さえておきたいポイントは、2種類あります。

仕事・業務のポイント」と「人間性のポイント」です。

1つずつ解説します。また、チェックシートで適性を見てみましょう。

マネジメント「仕事・業務のポイント」

A.職場目標(目標管理能力):チームでの戦略立案から達成迄を管理する力

チーム目標達成に向けて効果的な方法と手順を決める能力です。

・進捗管理項目を何にするのか

・進捗管理項目の基準値をどう設定するのか(売上、コスト、数量、件数、時間、人数、見込み数等)

・管理を誰が、いつ、どのような方法で行うのか

・目標達成に向けて予測される障害は何なのか。

これらの対応策を考える力です。

【A:職場目標(目標管理能力)チェック項目】

実践度合いを5段階評価してください。5段階の意味は、以下のとおりです。

1点:全く出来ていない、2点:あまり出来ていない、3点:まあ出来ている、4点:ほぼ出来ている、5点:よく出来ている

【項目】

1.部門方針・上司の方針を理解して行動している

2.挑戦的な目標を設定し、それを計画に落とし込んでいる

3.目標達成に向けて計画的に業務を遂行している

4.目標達成の進状況を把握し、問題があれば対処している

5.実施後に目標と計画の振り返りと評価を行い、それを次にいかしている

合計:    点/25点

B.仕事上の課題(問題解決能力):起こりうる問題に対する発見と対処法

問題解決能力は、発生型、発見型、創造型の3つがあります。

発生型:実際に発生している問題を解決する能力

例えば、お客からのクレームが頻発している場合、どうやってマイナスの現状をゼロに戻すかを考える問題解決能力です。

発見型:見方を変えないと見えない問題解決能力

例えば、日々の業務において、営業部では問題はなくとも違う部署(例えばバックオフィス)から見た場合に問題になっていることがあります。また、業績が良くとも、「大口取引の割合が多い」「既存顧客の売上のみで新規がない」などの問題を発見し、手を打てるかといった能力です。

創造型:創造性に富んだ革新的な方法で問題や課題に取り組む能力

例えば、将来の市場成熟度により価格競争に陥ったとき、今と同じ総利益を確保できるか。離職者、定年退職者による人で不足担った際、将来のリーダ候補など人材の確保は充分か等の視点が必要な能力です。

管理職として問われるのは、発生型と創造型の問題解決能力です。

【B:職場目標(目標管理能力)チェック項目】

実践度合いを5段階評価してください。5段階の意味は、以下のとおりです。

1点:全く出来ていない、2点:あまり出来ていない、3点:まあ出来ている、4点:ほぼ出来ている、5点:よく出来ている

【項目】

1.新たな視点で自分の仕事を見つめ直し、問題を見つけようとしている

2.仕事上の問題点を把握し、それを職場内で共有化している

3.仕事上の問題点について従来の方法にこだわらずに解決策を探っている

4.繰り返しおこる問題に対しては、その根本的な原因を追求している

5.将来起こりうる問題を予測し、それへの対策案を考えている

合計:    点/25点

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 マネジメント「人間性のポイント」

端的にいうと、部下の指導育成能力です。

長い間、人材育成に携わってきた経験から、この能力が一番の課題になっているケースが多いといえます。研修を通じて、マージャーや管理職といったマネジメント側が部下に対して、「育成目標をまったくと言っていいほど持っていない」ということが見受けられるのです。

入社3年目だから、これくらいはできるだろう」「主任なのだから、これくらいはやってもらわないと困る」といった具合に、入社年数や役職を目安として目標設定していることがたくさんあります。しかし、これは間違いです。

目安目標を混同していては、いつまで経っても人は育ちません。

成長とは「できなかったことが、できるようになること」です。

まず、部下一人ひとりをよく観察しましょう。

そして、年数や役職関係なく、3~6カ月後になにをできるようにしてあげるのか、そのために上司としてどのように関わるのかを決めます。そして、その目標を部下と合意することが、人材育成における正しいあり方であり目標の持ち方です。

育成目標は、詳細に・鮮明に・具体的にすることが重要です。

人材育成の目標で多い表現として「一人前になる」「独り立ちをする」などがあります。しかし、この表現では何をどのレベルできれば一人前なのかが明らかになっていません。

上司と部下で、「一人前」に対する認識がズレていると後々の信頼関係にも問題が発生します。


【C:チーム運営(チーム運営力)チェック項目】

実践度合いを5段階評価してください。5段階の意味は、以下のとおりです。

1点:全く出来ていない、2点:あまり出来ていない、3点:まあ出来ている、4点:ほぼ出来ている、5点:よく出来ている

【項目】

1.チーム内でビジョンや目標が共有化されている

2.職場をより良いチームにすることを心がけて行動している

3.自分の周囲の人に対して自分からコミュニケーションをとっている

4.上司とメンバーのパイプ役になっている

5.ミ-ティングや会議を効果的、生産的に実施できている

合計:    点/25点

【D:自分およびメンバーの能力向上(指導・育成能力、自己成長能力)チェック項目】

1.メンバー、若手のやる気を引き出している

2.メンバー、若手のレベルに合わせた適切な指導をしている

3.メンバー、若手の育成や成長を考えて仕事をしている

4.自分がメンバー、若手のモデルや手本となっていることを自覚している

5.将来、自分自身がどうありたいかという夢・目標をもって行動している

合計:    点/25点

マネジメント能力チェック合計表

 

項目

点数

 ■業務のポイント

(A+B)

1目標管理能力

2問題解決能力

 

50

 ■人間性のポイント

(C+D)

1チーム運営能力

2メンバーの指導能力

3メンバーの育成能力

4自己成長能力

 

50

各チェック項目を合計してください。

そして、自身にマネジメント能力があるかを判断しましょう。もし点数の低い項目があれば、その能力を向上させる努力をしてください。

 
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