日経新聞を読んでいない君たちの生活にも大きく影響しそうな規制緩和が議論されているのを知っていますか。「ライドシェア」の解禁です。来年、つまり2024年から日本でも、一部で「解禁」となります。解禁されれば、移動手段が一つ増えることになりますし、場合によっては自分が運転手となって副業をする可能性もあるでしょう。ただ、今回はそこまでの話にはならさそうです。かっこ(「」)つきの解禁なのは、本来のライドシェア解禁とは程遠いから。それはどういうことなのか。議論はどこまで進んでいるのか、2023年の終わりに整理しておきましょう。

画像=PIXTA

ライドシェアは、一般のドライバーが自家用車を使って有償でお客を運ぶサービスで、配車アプリの業者がドライバーとお客をマッチングします。海外ではアメリカのUber(ウーバー)やリフト、中国の滴滴出行などの事業者によるサービスが普及していますが、日本ではタクシーの営業には許可が必要で、「白タク」と呼ばれる無許可営業は道路運送法違反になるため、基本的にライドシェアは認められていませんでした。この規制を緩和しようという話が持ち上がっているんです。

政府のデジタル行財政改革会議(2023年10月設置)が12月20日にまとめた改革案によると、2024年4月から、都市部や観光地などタクシーが不足している地域で、タクシー会社が主体となる形で「日本版ライドシェア」の運用が始まります。タクシー会社の配車サービスのシステムを使って、タクシーが足りなくなる地域と時間帯に限り、タクシー会社を通じて自家用車の相乗りを提供するという形です。ドライバーの教育や車両整備、事故などの責任はタクシー会社が負います。条件の範囲内で、第2種免許を持たない、普通免許の人にも有償でのお客の送迎を認めます。運賃はタクシーと同じになる見込みです。平たくいうと、タクシー会社主体のライドシェアですね。

タクシー会社以外にも参入を認めるか、時間・地域の制限をなくすかについては、来年以降に議論されることになります。今回はかなり限定的な規制緩和になります。

また、海外では普及しているダイナミックプライシング(需給の変動に応じた価格調整)の導入も見送られました。本来は、需要(車に乗りたい人)と供給(ドライバー)によって価格が変動することでドライバーを確保する仕組みなのですが、価格を一定にしてドライバーを確保できるのか疑問です(ウーバーイーツも、配送員が少ない場所や時間帯は料金が値上がりしますよね)。

ちなみに今回の改革では、バスやタクシーが運行されていない過疎地などを対象にした「自家用有償旅客運送」の規制も緩めます。株式会社の参入を認めたり、運賃を現行のタクシーの半分程度から8割程度へと引き上げたりします。

これまで日本でライドシェアが解禁されなかったのは、タクシー業界が猛烈に反対してきてためでした。タクシーよりも安い料金でお客を運ぶライドシェアが参入すると、経営を圧迫されるということで、規制緩和に強く反対してきました。

しかし、タクシーの業界も高齢化と人手不足の影響が色濃く出ており、タクシー運転手は足元で大きく減っています。日本のタクシー運転手は、コロナ前の2019年3月末は30万人弱いたのですが、2023年3月末には約23万人まで減少しました。コロナは高齢運転手の引退を早めた面もあるようです。最近、タクシーをつかまえにくくなったなと感じている人も多いでしょう。こうした背景から、政府も解禁に向けた議論を急ピッチで進めることになったというわけです。

海外でライドシェアサービスを利用してみると、とても快適なことに驚きます。わりとすぐに車がつかまりますし、アプリで車を呼ぶと、その車が今どこにいて、あとどれくらいでピックアップしてくれるのか、また乗車後も、目的地までのルートと現在地、そして料金がアプリに表示されるので安心感があります。

また乗客からの評価も見える化されるので、お客は素行の悪い運転手を避けるし、運転手側は対応に気を配ることになり、その点も安心感を強めています。もちろん、あらかじめ提示されたルート以外に入ってもらえない、トラブルや犯罪の例も多数あるなど、完璧なサービスではありません。でも、今ある人という資源をテクノロジーによってうまく活用する事例の一つであるのは確かで、人手不足が進む日本は、規制緩和の議論を避けて通れなさそうです。来年以降、本格解禁に向けてどう議論が進んでいくでしょうか。

 
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