最近話題の「登記」と国籍について。改めて解説します
日経新聞を読まない君たちへ
みなさんこんにちは。このコラムを読んでいる人は不動産業界の人が多いと思うので、日経新聞を読んでいなくても、外国人による不動産取得や、不動産登記をめぐる最近の話題についてはご存じだと思います。

画像=PIXTA
不動産業の皆さんには言わずもがなですが、そうではない読者もいるので、まずは「登記」について簡単に説明します。登記とは、土地や建物に「これは誰のものです」という名札を付けるようなものです。土地や建物の持ち主や抵当権など、土地や建物が「誰のものか」に関する情報を公の帳簿に記録する仕組みを不動産登記と呼びます。
登記があると第三者に対して所有を主張しやすくなり、二重売買などのトラブルを防ぎやすくなるので、土地や建物を取得した人の多くは登記をします。ただし、これまでの登記情報では国籍が分からず、外国人や外国企業による不動産取引の実態が見えにくいという問題がありました。
その「登記の見えにくさ」の問題に、政府がメスを入れようとしています。政府は2025年12月、土地や建物の所有の実態を把握するため、不動産登記などの手続きの際に国籍情報の提供を義務づける方針を示しました。2026年度からの実施を目指すと報じられています。
具体的には、登記の申請書に国籍を記入する欄を設けます。申請の際には、パスポートなど国籍が確認できる本人確認書類の提示や提出を求める想定です。対象は外国人だけではなく、日本人も含めて国籍情報を把握できる形にします。
ただし、誰でも見られる形で登記簿に国籍が記載されるわけではありません。国籍情報は、登記の申請時に確認したうえで、行政内部の情報として管理される方向とされています。
なぜ、不動産の所有者の国籍を国が把握する必要があるのか。背景にはいくつかの社会的な課題があります。
課題の一つは、都市部を中心とした不動産価格の高騰です。特に新築マンションを中心に、投機目的の購入が価格を押し上げているのではないか、という指摘が以前からありました。
この点について国土交通省は2025年、登記情報をもとに新築マンションの取引状況を調査し、「国外に住所がある」取得者の割合などを示しています。たとえば2025年1~6月の東京23区では、国外に住所がある取得者の割合は3.5%、都心6区では7.5%でした。
ただしこの調査は「国外住所」を手がかりにしたもので、国籍までは把握できていません。国内に住む外国人による購入は含まれておらず、実態を正確につかみきれていないという限界もあります。ここが、国籍把握の議論につながるポイントです。
また同じ調査では、都心部について「2億円以上の高額物件を国外住所の人が活発に購入している傾向は特に見られない」といった整理もされています。つまり、海外からの取得が増えている兆しを示しつつも、「それが市場を支配している」と言い切るほど単純でもない。だからこそ、実態把握の精度を上げ、議論を数字で検証できるようにしたい、というのが政府側のロジックです。

