米巨大IT企業GAFAMで始まった大量リストラは、何かの予兆?

画像=PIXTA

こんにちは。日経新聞を読まない君は気がついていないかもしれませんが、アメリカのIT大手が大リストラを実行中なんです。GAFAM (Google、アップル、フェイスブック、アマゾン、マイクロソフト)をはじめとする米IT大手は、株高とIT需要の拡大を背景に、コロナ禍でも好業績を叩き出してきたわけですが、潮目が変わったようです。2023年に入ってから、米IT大手の大規模人員削減のニュースがぐんと増えてきました。なぜ、絶好調から一転、リストラの嵐になってしまったのか。この動きはIT企業だけにとどまるのか。今の状況を見てみましょう。

グーグルの親会社のアルファベットは1月20日、従業員1万2,000人を削減する計画を発表しました。これは全世界の従業員の6%に相当する規模で、米誌ウォール・ストリート・ジャーナルによると、過去最大規模の人員削減になるとのことです。

前日の1月19日には、マイクロソフトが景気減速の影響などから、社員の約5%に相当する1万人を削減すると発表していました。

実は、この動きは2022年の秋頃から加速していました。アマゾンは2022年秋に人員削減に着手し、1万8,000人超の削減を進めるとともに、新規採用も控えてきました。倉庫の空きスペースを転貸するビジネスも始めているようで、危機感が伝わってきます。

FacebookやInstagramを運営するメタ・プラットフォームズも、11月に全従業員の約13%に当たる1万1,000人を解雇すると発表。こちらも2023年1~3月期は新規採用を停止しているようです。

こうした大規模な人員削減の背景には、コロナ特需の終わり、そして景気後退への不安の高まりがあります。

アメリカのIT大手は、コロナ禍で在宅勤務が広がり、IT需要が拡大したのを受けて、大量に採用を続けてきました。アルファベットやマイクロソフトなどは、この5年間で従業員数が倍増しています。しかも、優秀な人材を集めるために高額な年収を設定して、福利厚生も充実させてきました。スポーツジムやシャワールームを完備していて、食堂での食事は無料、といったオフィスの光景をテレビなどでみたことがある人もいるかもしれません。

しかし、2022年になると、コロナによって生まれたIT需要の拡大は終わりを告げます。さらに物価高が進み、それに対応するために米金融当局が利上げを行ったことで、アメリカでは景気の先行き不透明感が強まっています。2023年には景気後退局面入りするのではないかとの見方もする人がアメリカではすごく多いんです。

景気後退へのカウントダウンが始まる中、企業や個人はITへの投資を控えています。言ってみれば、これから景気が悪くなるかもしれないって時に新しいPCやスマホを買ったりしませんよねっていうことです。こうした景気の悪化に備えるため、IT企業はリストラを急いでコスト削減を進めているわけです。

人材獲得のための対策は、業績が上向きの時には競合との競争に勝つために必要なものとして正当化されます。しかし、先行きが不透明になってくると、膨らみすぎた人件費は経営上の重荷になります。昨年11月には、グーグルに対して「モノ言う株主」が人員削減などの収益改善を要求する場面もありました。

IT企業固有の減速要因もあります。デジタル広告の打撃です。フェイスブックやグーグル、アップルなどIT大手はいわば、広告収入で大きな利益を得ていました。しかし、2021年にアップルがターゲティング広告に対するプライバシー保護措置を導入した影響から、デジタル広告の収入が減少。さらに、景気悪化懸念から、企業が広告出稿を控えるようになったことも、広告収入が減る要因になりました。

厳しいのはGAFAMだけに限りません。パソコンやスマホの需要減退により、半導体業界でもリストラが始まっています。

インテルは2022年秋から人員削減を開始。クアルコムは11月に新規採用を凍結、メモリー大手のマイクロン・テクノロジーは2023年を通じて従業員を10%減らすと発表しています。

GAFAMなどアメリカのIT大手に勤めていた人たちは、優秀で所得も高いので、人員削減の対象になっても新たな職を見つけるのは難しくないだろうと見られています。確かに、このリストラがIT大手にとどまるうちは、社会的な影響はそれほど大きくないかもしれません。しかし、アメリカが景気後退局面に入るのはこれから。企業への影響はこれからますます大きくなると見られ、日本も他人事ではありません。

 
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