最近よく聞くインボイス制度ってどういうものか知ってますか?

画像=写真AC

皆さんこんにちは。日経新聞を読まなくても年は越せますが、気になるキーワードを残したままで2023年を迎えるのは気持ち悪いですよね。そこで今回は、2022年にSNSでよく見かけたけど、実はよくわかっていない言葉ナンバーワン(と思われる)「インボイス制度」について、話題についていける程度に勉強してみましょう。

インボイス制度は2023101日から本格的に運用が始まる予定です。消費税に関連した制度なのですが、関心の度合いが人によって大きく異なるのは、サラリーマンには直接関係がないからかもしれません。ただし、将来フリーランスになることを検討している人は他人事ではありません。

結論からお伝えしますと、国はインボイス制度を始めることで、消費税の正しい金額を把握し、徴収することを目指しています。しかし、特に中小事業者や個人事業主にとっては、実質的な収入減になる恐れがあると問題視されています。

たくさんの事業主に影響を及ぼすインボイス制度。これって何のなのか、見ていきましょう。

まず、あなたがお店で払った消費税がどうやって国に納められるのか、その仕組みからおさらいします。消費税を負担するのは私たち消費者ですが、税金を国に納めるのはお店(事業者)ですよね。お店はモノを売るときに買い手から消費税をあずかり、納税しています。このタイプの税金を間接税といいます。

お店が一時的に集めた消費税の行方について、大きなポイントが2つあります。1つは、最終的に消費税として国や自治体に払っていない事業者もいるということ。課税売上高が1,000万円以下の事業者は消費税の納税が免除される「免税事業者」になることができるんです。財務省によると、全事業者800万のうち、約500万が免税事業者だそうです。2つ目は、消費税を納めている事業者も、預かった消費税を全額納税するわけではないということです。仕入れの時に負担した消費税は控除される「仕入れ税額控除」の仕組みがあるんです。これについてはもう少し詳しく説明しましょう。

たとえば、小売店Aマートで1200円のリンゴが売っているとします。このリンゴは、Aマートが免税事業者である青果の卸売店Bから1100円で仕入れました。仕入れで支払った金額は税込み108円です(リンゴは食品なので、軽減税率8%が適用されます)。Aマートは店頭でこのリンゴを1200円(税込み216円)で販売しました。

この場合、1つのリンゴに対して仕入れ時と販売時、2度にわたって消費税が課されています。この二重課税の状態を防ぐために、「販売時に受け取った消費税」(16円)から「仕入れ時に支払った消費税」(8円)を引いた残りの金額(8円)を消費税として国に納める仕組みがあるんです。これを「仕入れ税額控除」といいます。

仕入れ税額控除の対象は意外と広く、原材料の購入費や事務用品の購入費用、必要な機械・建物の購入費のほか広告宣伝費、接待・交際費なども含まれます。事業者にとっては影響の大きい制度です。

さて、202310月にインボイス制度導入が始まるとどう変わるのでしょうか。最も大きな影響を受けるのは免税事業者です。インボイス制度が導入されると、事業者が仕入れ税額控除を受けるためには、仕入れ元から「適格請求書」(適用税率や税額などが記された請求書。これをインボイスと言います)を発行してもらう必要があります。従来通りの普通の請求書では仕入れ税額控除が適用されず、納める金額が増えてしまいます。

この適格請求書を発行するには、税務署で「適格請求書発行事業者」の登録を済ませなければなりません。登録すること自体はそれほど難しくないのですが、問題がひとつあります。免税事業者は適格請求書発行事業者にはなれないんです

先ほどのリンゴの例に戻りましょう。Aマートがリンゴを仕入れた卸売店Bは免税事業者でした。卸売店Bは適格請求書を発行できないので、インボイス制度が始まると、Aマートは卸売店Bから仕入れた分の仕入れ税額控除を受けることができません。納める税額が増えてしまうので、Aマートは卸売店Bに値下げを要求したり、適格請求書を発行できる他の卸売店を探したりするかもしれません。

卸売店Bは適格請求書発行事業者にならないと、売上が減ったり、取引先を失ったりするかもしれない。しかし適格請求書発行事業者になるためには、消費税の課税事業者になる必要があり、納税のために資金繰りが悪化するおそれもあります。中小事業者は難しい選択を迫られているのです。

国がインボイス制度の導入を望む理由は単純です。インボイス制度がある方が、税収が増えると考えられているから。免税事業者は、買い手が払った消費税を納税せずに手元に残します(もちろん事業者の利益になります)。これを「益税」と言います。国はこの益税を解消して、少しでも税収を増やしたいわけです。

インボイス制度導入に伴う中小企業のショックを和らげるための対策を求める声がありますが、「買い手が払った消費税を利益にしてしまうのはずるい」という声もあり、救済策の議論は盛り上がっていません。適格請求書発行事業者の登録申請の締め切りは20233月。この問題はどう決着するでしょうか。

 
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