BTSがホワイトハウスで大統領に会う功績と様々な意味

 

画像=Pixabay

 

こんにちは。日経新聞を読まない君でも、K-POPアーティストのBTSがホワイトハウスを訪問し、バイデン大統領と会談したニュースは知っていますよね。BTSといえば、2021年と22年にグラミー賞にノミネートされ、国連で演説をした経験もある、アジアを代表する人気グループです。しかし、いかに人気者とはいえ、外国籍のアーティストがホワイトハウスに招かれるのは異例なことだそうで、今回のホワイトハウス訪問は特別な意味がありそうです。これってどういうことでしょうか。

BTSがホワイトハウスを訪問したのは5月31日。「アジア・太平洋諸島系米国人の文化遺産継承月間(AANHPI)」の最終日でした。1カ月にわたって開催されたさまざまなイベントの締めくくりとして、BTSのホワイトハウス訪問があったようです。

現在、アジア・太平洋諸島系のルーツを持つアメリカ人は2200万人超いるそうで、アジア系アメリカ人はさまざまな分野で活躍しています。ただ、アジア人は差別の対象になってきた歴史があるのもまた事実。第二次世界大戦時も、日系アメリカ人が強制収容所に入れられました。そんな差別を跳ね除けながら、アジア人は活躍の場を広げてきたわけです。

問題は、最近、特にコロナ禍以降、アジア系の人に対する差別が悪化しつつあるこということです。新型コロナウィルスが中国を起源とする説が有力視されたこと、そしてトランプ前大統領が「チャイナウイルス」などと差別的な発言を繰り返したことで、アジア人への差別の意識が強くなっていきました。中国系住民への差別は、コロナの感染症の恐怖や、外出や他者との接触が制限されたストレスの捌け口になったんですね。そしてその差別の対象は、アジア系住民全体へと広がっていきました。

世界各地でアジア系住民への差別が広がったわけですが、とりわけ深刻な国の一つがアメリカだったと言っていいでしょう。アメリカの人権団体による調査では、2021年のアジア人を対象にしたヘイトクライム(憎悪犯罪)は3倍以上となり、ニューヨークやサンフランシスコなどの大都市では、アジア系住民へのヘイトクライムの件数が過去最大になったそうです。ニューヨーク市では2021年、アジア系の住民に対する暴力事件が前の年の4.6倍に増えたとの報道もあります。

2021年3月16日には、ジョージア州アトランタ市郊外のマッサージ店3店舗で、アジア系女性6人を含む8人が殺害される銃乱射事件が起きました。2022年3月には、ニューヨークで白人男性が2時間のあいだに路上でアジア系女性7人を殴る事件が発生しました。道端で見知らぬアジア人女性にいきなり殴りかかったようです。道を歩いていたら突然殴られるって、かなりおそろしい状況です。特に、力の弱い女性が犯罪被害の対象になることが多いようです。

 

アメリカで高まるアジア人比率

こんな具合に、アメリカのアジア人差別はかなり深刻な状況にあり、バイデン大統領にとっても無視できない問題になってきています。というのも今年11月に中間選挙を控えているからです。アメリカの大統領の任期は4年間ですが、そのちょうど中間の時期に中間選挙があります。中間選挙では、アメリカ連邦下院の全議席と、上院の3分の1の議席が改選されます。議席の数を通じて、政権の前半2年に国民が評価を下す、いわば大統領にとっての「中間テスト」みたいなものです。この選挙で議会の議席を失うと、政権は重要な法案を通すことができなくなり、いわゆる「レームダック(死に体)」化します。中間選挙は政策のアイデアを次々と実行に移していく上でも重要なんですね。そしてもちろん、2年後に控える大統領選を予想する上でも大事なイベントになります。

この中間選挙で、バイデン政権は劣勢にあるとみられています。アメリカはインフレが続いてモノの値段が上がっていますし、株価も低迷気味。そんな中で、バイデン大統領の支持率は40%台と低めの水準にあり、バイデンの民主党は中間選挙で議席の確保に苦労することが予想されています。そこで無視できないのが、アジア系の票というわけです。

ピューリサーチセンターの調べによると、2020年時点の人種別有権者数は、白人76%、黒人12%、ヒスパニック7%、アジア人2%、その他2%。アジア系住民は黒人、ヒスパニックに次ぐ3つ目に大きなマイノリティー集団であることがわかります。近年、米国大統領選挙の行方を占う上でヒスパニック系住民の票の行方が注目されていますが、アジア系の票も無視できないインパクトを持っているわけです。アジア系アーティストのBTSをホワイトハウスに招くという、前代未聞のパフォーマンスはアジア系住民に大きなインパクトを与えますし、BTSは人種を問わず、幅広く若者世代に人気があるので、政権の好感度アップには大きく寄与しそうです。

アジア人差別だけでなく、銃乱射、人工妊娠中絶など、アメリカは今、人々の価値観を揺さぶる難しい問題に直面しています。BTSの訪問が、単なる票集めのパフォーマンスではなく、当事者の声に耳を傾ける政治へとつながるといいですね。

 
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