株価下落よりヤバい 暗号資産(仮想通貨)の惨状

 

画像=写真AC

 

みなさんこんにちは。日経新聞を読んでいない君でも、連日、株価が下がっていることは、なんとなく知っているのではないでしょうか。実は、暗号資産(仮想通貨)の方はさらに厳しいことになっています。その辺の事情について今回は見ていきたいと思います。

念の為、そもそもの株安からおさらいしておきましょう。ざっくり説明すると、アメリカが8%を超える物価上昇(インフレ)になり、金利を上げる政策へと転換しつつあることが大きな引き金になり、金融市場が総崩れしています。不動産業の皆さんならわかると思うんですけど、中央銀行が金利を上げる(利上げ)と、みなさんが銀行からお金を借りる時の金利が上がる、すなわち、お金を調達するコストが上がります。つまり、利上げは、投資家には歓迎されないものだということです。

2008年のリーマンショックを機に、アメリカをはじめとした先進国は量的緩和という金融政策を取ってきました(日本ももちろんそうです)。金融市場がショック死するのを防ぐために、お金を大量にばらまく政策で危機回避をはかったんです。大量にお金を市場にばら撒いたため、それらのお金が株式市場や不動産市場へと流れ込み、資産の価格を押し上げることになりました。投資家にとっては、金利が低いので、お金の調達もラクです。みなさんもその金あまりの市場でビジネスをしてきたので、この辺りの事情は肌で感じる部分があると思います。

量的緩和政策はなんだかんだで、長期間続いてきたわけですが、これがいよいよ本当に終わろうとしている。そうなれば、金融の環境が大きく変わるんじゃないか。そんな具合に市場の潮目が大きく変わろうとしているのが、今です。

この大きな変化の局面で売られているのが仮想通貨です。2021年11月には6万7500ドル(約860万円)で過去最高値を付けましたが、その後に暴落をしまして、半年後の現在は3万ドルを割り込むところまで売られています。

このビットコイン安の中で、とりわけ注目を集めているのが、テラUSD(単位はUST)というコインです。テラUSDの時価総額は5月10日ごろまで186億ドル(約2.3兆円)あったのですが、その後急落し、5月13日には19億ドル(約2400億円)になり、およそ10分の1まで縮小しました。

新しいコインが生まれては消えての暗号資産の世界ですが、このテラUSDの暴落、崩壊は大きな話題に異なっています。

 

安定しているとらされたテラUSDに何がおきたのか

テラUSDというのは、「ステーブルコイン」に分類される暗号資産の一つです。「ステーブル」とは「安定した」という意味で、価値が安定したコインを指し、多くは米ドルの価値に連動しています。最も規模が大きいステーブルコインのTether(テザー、単位はUSDT)も、米ドルに連動しています。そしてテラUSDも、米ドルに連動して運用されるコインで、1UST=1ドルを長らく維持し続けてきたのでした。

暗号資産が大きく値上がりして、さまざまな投資の手法も出てきたことで、暗号資産で儲ける人々が出てきました。暗号資産の投資家は、儲けたお金を法定通貨(ドルとか円とか、国が発行する通貨)に戻さずに、暗号資産のままで保有したがる傾向があります。法定通貨に戻すと手数料も手間もかかるからです(色々な事情から法定通貨には戻せないお金もあると思います)。

かつては、儲けたお金を暗号資産の「ドン」であるビットコインにして保有する人が多かったようです。しかし、ビットコインは2018年以降、かなり変動が大きくなってしまったため、より価値の安定した暗号資産が求められました。こうしたニーズの中で人気を集めたのがステーブルコインです。暗号資産のままで、米ドルと価値を連動させられるのっていいとこ取りですよね。特に、国の規制によって海外の資産にアクセスがしにくい中国の投資家は、このステーブルコインを歓迎したと言われています。また、価値が安定して使い勝手の良いステーブルコインは、貸し出しや預金などの分散型金融(Defi)に広く応用されるものとしても期待されるようになりました。

ところで、ステーブルコインはどうやって価値を安定させているかというと、コインを発行するごとに、裏付けとなる資産として米ドル(米国債など米ドルに関連する資産)を積み上げて、資産の価値を保っていると(少なくとも表向きは)言われています。その代表がテザーです。その後、色々な亜種が登場する中、金融工学を駆使してドルに連動させるコインが登場しました。その中で最も人気が高かったのがテラUSDです。テラと「Luna(ルナ)」という二つのコインのバランスをとるように設計することで、米ドル資産の裏付けがなくても、コインの価値を1ドルに保つように工夫したコインでした。

テラUSDの魅力は、米ドルに価値が連動するだけではありませんでした。テラUSDを保有するだけで年20%近い利回りを得られる「アンカー・プロトコル」という仕組みを作ったんです。価値が米ドルに安定して、年2割も利息がつくなんて、なんてお得なコインでしょうか。当然、多くの投資家が飛びつき、あっという間にテラは人気のコインに上り詰め、テラUSDを発行する韓国の企業Terraform Labs(テラフォームラボ)を率いる共同創設者のDo Kwon(ド・クウォン)さんは、メディアにたびたび取り上げられて、大いに注目を集めました。

しかしまあ、米ドルとほぼ同じ価値なのに、持ってるだけで年20%も利息がつくっていうのはやはり、無理があったんです。なんでそんな高利回りなのよという、素朴な疑問を放置したまま膨らみ続けたテラUSDは、ビットコイン急落の局面であっさりと「崩壊」しました。

ビットコインはこれまでも、暴落の局面で詐欺的なサービスの実態が暴かれてきました。ICO(イニシャルコインオファリング)などもそうです。新しい価値を生み出す何かに使えそうな雰囲気はあるけれど、実際の商品はあ中身が伴わない詐欺だった、みたいなかんじです。さまざまな金融サービスに発展すると期待されていたDefiも、「眉唾モノだった」と処理されて終わってしまうのか。テラUSDの暴落は、暗号資産の厳しい未来を暗示しているのでしょうか。

 
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