ウクライナ侵攻について理解するためのはじめの一歩

画像=Pixabay

みなさんこんにちは。世界の注目はなんといっても、ウクライナ情勢ですね。2月24日に始まったロシアによるウクライナへの軍事侵攻は、3月6日現在も続き、今後の展開がまったく読めない状況が続いています。連日、報道が続いているのでみなさんもよく知っていると思いますが、あらためて、なぜウクライナでこんなことが起きているのか、確認してみましょう。

軍事侵攻の大きな焦点の一つは、ロシアのプーチン大統領の目的は何かです。当初は、ウクライナの北大西洋条約機構(NATO)加盟阻止と、ウクライナ東部の地域に特別な自治権を認めることを求めていましたが、戦鬪が激化するにつれ、何を求めているのか、よくわからない状況に陥りつつあります。

状況が二転三転し、いまいち様子を掴めない人も多いと思うので、今回はこの危機の入門となるめちゃめちゃ基本的なポイントを押さえていきたいと思います。

まず、歴史的な経緯から。ロシアもウクライナも、報道で時々出てくるベラルーシという国も、かつてソ連と呼ばれた国の一部でした。社会主義を標榜する国として1922年に設立されたソ連は、15の構成共和国から成る連邦制の国です。ソ連は「東側」の大国として、アメリカをリーダーとする「西側」諸国と対立していきます。冷戦の時代です。しかし、ソ連は競争の中で弱体化し、1991年末に崩壊。そしてロシア、ウクライナ、ベラルーシはそれぞれ独立した国家として歩んでいくことになりました。

ソ連崩壊により、旧ソ連地域には15の国があらわれたわけですが、その中でもロシア、ウクライナ、ベラルーシは、国境を接し合うだけではなく、民族的な歴史を共有する関係にありました。ロシア、ウクライナ、ベラルーシは「東スラブ人」という民族で、9世紀ごろに成立したキエフ・ルーシ公国をルーツにもちます。美人が多い地域としても有名ですよね。いわば、3つの国は、親戚みたいな関係にありました。ベラルーシにはロシア人が多数居住していますし、ロシアにはかなり広範囲にウクライナ人が居住しています。実は、極東地域にもかなりウクライナ人が多く住んでいるんですよ。

しかし、ソ連崩壊後のロシアとウクライナの関係は、政治的には良好だったとはいえません。ソ連崩壊後は、ウクライナはNATOに加盟しようとしたり、EU(欧州連合)への加盟を望んだりするなど、ロシアの影響圏から離れ、ヨーロッパ諸国に近づこうとします。ソ連崩壊後も、旧ソ連圏の国々に高圧的な態度で接するロシアは、ウクライナにとっては安全保障上の脅威でした。実際に、2014年にはウクライナの一部だったクリミア半島をロシアに取られていますしね。また、EUという巨大な経済圏は、大きな魅力であり、欧州の仲間の一員になりたいと望むのは、ある意味で当然の動きでした。ロシアのプーチン大統領は、こうしたウクライナのロシア離れに強い危機感を抱いたわけです。 

プーチン大統領はなぜ軍事侵攻に踏み切ったのか

ウクライナはロシアという国にとっても、民族にとっても重要なわけですが、武力で相手を屈服させようとするプーチン大統領のやり方は大いに問題があります。国際的に非難されるのは目に見えていたのに、なぜ、こんな暴挙に出たのでしょうか。本当のところはプーチン本人にしかわかりませんが、一般的には、①アメリカの影響力の低下、②欧州のロシアへのガス依存、③中国の存在が指摘されています。

①アメリカは冷戦時代にソ連と敵対した西側の盟主で、現在も超大国ですが、近年はアメリカ一国主義に大きく傾き、安全保障的にはアメリカとそしてアジアに関心を集中させています。さらに、2021年にはアフガニスタンからの撤退で、大きな失敗をしました。首都カブールがタリバンによって陥落されるなか、米軍は逃げるように撤退しました。その様子は、世界中にアメリカのダメさを印象付けることになりました。こんな具合に、アメリカが内向きになっているタイミングは、プーチン大統領にとっては好都合だったとみられています。

②ロシアは石油も天然ガスも生産する資源国です。日本もロシアから天然ガスを買っています。特にロシア産のガスに依存していたのが欧州です。ロシアは欧州の天然ガスの3分の1を供給していいる、欧州の電力を支える国なんです。欧州は近年、脱原発、脱炭素で自然エネルギーによる発電を増やしていますが、それでは足りないので、天然ガスを使った火力発電も使っています。火力発電はもともと、価格が安い石炭を燃料にするのが主流でしたが、二酸化炭素(CO2)を排出するのでよくないよねということで、脱炭素の流れの中で、燃焼時のCO2排出量が石炭の半分程度に抑えられるガス火力発電を増やしてきた経緯があります。特に昨年は天候の問題から自然エネルギーの発電がふるわず、天然ガスの需要が拡大していたところでした。こんな具合に、ロシアは欧州の電力への強い影響力を持っているから、欧米諸国は簡単には経済的な関係を断ち切れないだろうとプーチン大統領は思っていたのではないでしょうか。

③ウクライナへの軍事侵攻により、経済制裁をくらったとしても、ロシアには中国がある。天然ガスも買ってくれるし、巨大な市場を持つ中国を貿易相手として確保できればどうにかしのげる。だからプーチン大統領は大胆な行動をとれる、と見る専門家は多いです。実は、中露はめちゃめちゃ仲良しなわけではないのですが、中国はアメリカと敵対しているので、敵の敵は味方、ということになるわけです。

とりあえず、基本的な背景をまとめてみました。この問題、どう展開していくのか、まったく先が見えません。プーチン大統領の動向を世界が固唾を呑んで見守っています。

 
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