コロナ後の世界はどう変わるのか

「日経新聞くらい読めよ」社会人なら誰もが一度は言われたセリフです。そりゃ、客先で経済ニュースを語れるとかっこいいですもんね。でも、「だって、みんな読んでないしな…」と、何となく済ませている人も多いのではないでしょうか。それでは、心許ないので最低限に知っておいて欲しい経済ニュースを、経済誌の現役記者・編集者がこれ以上ないくらいにわかりやすく解説します。今回は、コロナ後の世界について紹介します。 (リビンマガジンBiz編集部)

 

 

みなさんこんにちは。日経新聞を読んでいようといなかろうと、誰もが強い関心を抱いている「コロナ後」について今回は考えてみたいと思います。

 

緊急事態宣言が長引き、昨年から続く行動制限に疲れ、飽き、空虚な気持ちになりつつある昨今、「コロナ後」というキーワードを目にする機会が増えてきました。コロナ後を語るには時期尚早との見方もありますが、心がそちらに向かっているのもまた事実。ということで、コロナ後に向けた動きをいくつかまとめていきたいと思います。

 

「コロナ後」というキーワードがクローズアップされた話題といえば、サントリーホールディングスの新浪剛史社長の「45歳定年」発言でしょう。これは9月9日開催の経済同友会のセミナーで、コロナ後に求められる社会変革として「45歳定年制を敷き、個人は会社に頼らない仕組みが必要」と述べたものがSNSで瞬時に広がりました。

 

終身雇用や年功賃金制など、日本型雇用から脱却するべきだという主張の中で出てきた発言のようですが、「45歳で定年は流石に厳しい」など反発が広がりました。これを受けて新浪は、45歳で人生を見直すことも必要という意味だった、首切りではない、などと釈明に追われることになりました。

 

45歳を定年退職の目安とするのは少しやりすぎですが、コロナ後に経済活動が正常化していく過程で、今後の働き方や人生を見直す人が増えそうです。みんなはどんなこと思っているのか。日本生産性本部のアンケート(こちらから)を参考に見てみましょう。

 

「コロナ禍収束後、変化は起こりうるか」という設問で、「起こりうる」「どちらかといえば起こりうる」と回答した人が多かった項目を紹介します(2021年7月)。

  • ・業務の要不要の見直し(起こりうる15.1%、どちらかといえば起こりうる38.2%)
  • ・時間管理の柔軟化(起こりうる12.1%、どちらかといえば起こりうる36.1%)
  • ・テレワークの普及(起こりうる12.7%、どちらかといえば起こりうる25.2%)
  • ・決済方法のデジタル化(起こりうる14.3%、どちらかといえば起こりうる33.1%)

 

コロナで在宅勤務を経験したことで、仕事の進め方、時間の使い方、家族と過ごすことの意味、家事との両立などさまざまなことを考える人が増えたようです。

 

生産性本部のアンケート調査によると、テレワークを実施している企業は今年7月時点で20.4%。昨年5月には31.5%だったのでだいぶ減りましたが、週当たりのオフィス出社日数は減っているので、テレワークをする会社は徹底的にやる、やらない会社は出社をする、という形に明確に分かれつつあるようです。

 

その中の一部の人は、コロナ後もある程度在宅勤務を織り交ぜた勤務形態を望んでいます。同じアンケートの「コロナ禍収束後もテレワークを行いたいか」という設問では、「そう思う」が28.6%、「どちらかといえばそう思う」が45.5%(2021年7月の数字)で、実に74%の人がテレワークの継続を希望していました。

 

サラリーマンの中には、「毎日出社を強制される状態に戻るならば辞職する」「働き方を優先して仕事を選ぶ」という人も出てきています。コロナ後の生活の大きな変化になりそうです。

 

企業側も、コロナ後に向けて動き始めました。9月10日には、日本航空が3000億円規模の資金調達を実施すると発表して話題になりました。航空業界といえば、コロナの影響を最も受けた業界の一つ。調達するお金の多くはもちろん、運転資に当てられるようです。しかし、一部はコロナ後の需要回復を見据えた新型機の導入などに充てるようです。

 

JALほどの資金調達は珍かもしれませんが、産業界では「コロナ後」を見据えた動きが始まっています。東京商工リサーチによると、9月10日までの全国のコロナ関連破綻は1954件。国による金融支援策があり、意外と倒産件数自体は抑えら得てきたのですが、足元では増え続けています。特に外食産業は深刻で、2020年度は、酒場、ビヤホール(居酒屋)の92%が減収、69%が赤字だったということです。

 

これらの企業が、コロナ対応のための行動制限が解除されると共に、復活してくるとみられています。

 

一方で、それは同時に、コロナを支えてきた支援策が終わりを告げると言うことでもあります。「支援策」の恩恵を受けているのは、外食産業をはじめとした中小企業だけではありません。広い意味では、社会を救うための金融緩和政策も、コロナの非常事態で特別な体制を敷かれていました。一言で言えば、社会が混乱に陥らないように、お金の供給を続けてきたわけです。その緊急対応の緩和政策がいよいよ、終わりの段階にはいろううとしています。米連邦準備制度理事会(FRB)や欧州中央銀行(ECB)など、各国の中央銀行が資産の買い入れ額(資産を買い取って、現金を供給しています)を減らしたり、ペースを落としたりし始めます。お金の供給が減っていく過程では株式市場が混乱しやすいので、その点は「コロナ後」の市場を見る上では注意が必要です。

 

などなど、コロナ後を占う話題は本当にたくさんあり、特に不動産業界はテレワークがどれだけ普及・定着するかが今後のオフィス市場や住宅の動向に影響を与えると言う点で注目していると思います。

 

ただ、足元のコロナの状況を見てみると、新たな変異株が次々と登場するとともに、ワクチンが有効な期間には限りがありそうなことも見えてきました。この病を完全に押さえ込もうと思うと、まだまだ時間がかかりそうです。コロナ後を迎えるには社会がどんな状況になる必要があるのか、どこで見極めをつけるのか、最後は政治の判断で社会を変えていくことになりそうです。

 
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