自民党総裁選とは何なのかを解説

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日経新聞を読んでいない君たちでも、9月に自民党のトップである総裁を選ぶ選挙が控えていることは知っていますよね。新型コロナ対策をめぐる政策の不手際が続き、支持率の低下が止まらない菅義偉首相はこの総裁選を乗り切れるのか、先を見通すのが非常に難しい状況にあります。

自民党総裁選は、9月17日告示(選挙の投票・開票日を発表すること)、9月29日投開票です。そして10月には、衆院選挙が控えています。コロナで社会が不安定になり、政治不信も高まる中での衆院選です。というわけで今年の秋は政治の季節になるわけですが、すでにニュースについていけなくなっている人もいるのでは。そこで今回は、自民党総裁選についてわかりやすく説明していきたいと思います。

そもそもなぜ、自民党の総裁選が連日ニュースで報じられるほど注目を集めるのか、という基本的なところからおさらいしていきましょう。自民党の総裁は、上にも書きましたが、自由民主党という政党のトップです。現在は、自民党と連立を組む公明党の議員が国会の議席数で多数を占める与党なので、自民党のトップが行政府の長である内閣総理大臣(首相)に就くことになります。つまり現状では、自民党のトップ=日本の首相になるので、自民党の総裁選は国にとって重要なイベントになるということなんですね。

新型コロナで社会が混乱するこの時期に総裁選を行うのは、任期満了のためです。自民党の総裁は1期3年と任期が定められていて、今年の9月末に任期満了をむかえます。菅さんは昨年、任期途中で辞任した安倍さんから引き継いでいるので、安倍さんが総裁に就任した時期を任期の始まりとしてカウントされています。

自民党の総裁選は、国会議員と自民党の党員による投票で行われます。基本的に、自民党の総裁選は、現職の総裁が有利なんです。これまで、現職の総裁で総裁選に敗北したのは1978年の福田赳夫首相(当時)ひとりだけ。党員・党友による予備選が初めて導入されたこの年、田中角栄元首相を味方につけた大平正芳幹事長(当時)が全国から票をかき集めてどんでん返しを演出しました。そして今年、43年ぶりに現職の総裁が総裁選を乗り切れなくなる可能性が出てきています。

選挙に落ちるくらいなら総理でもクビにするのが政治家

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自民党が大きく揺れている理由、それは菅さんでは10月に控える衆院戦を戦うことができない可能性が出てきているためです。衆院選は、10月にも行なわれる見通しとなっています。こちらも衆議院の任期満了に伴う選挙で、10月17日に投開票となる可能性が高いとみられています。自民党は、新総裁のもとで、この衆院選を戦うことになります。

いわば、次期総裁は衆院選を戦う党の「顔」になるわけですが、菅さんの人気は、目下だだ下がり中です。新型コロナの感染拡大に対して有効な手を打ち出すことができず、さらに非常事態宣言下で国民の行動を制限しながら五輪・パラリンピックの開催を強行したことで国民のいらだちは日々高まるばかり。毎日新聞が8月28日に行った調査では、菅内閣の支持率は26%で、7月の調査よりも4ポイント下がり、最低を更新しました。このまま衆院選に突入すれば、自民党は大きく議席を減らす可能性が濃厚です。

実際、菅さんが首相に就任してからの選挙で自民党は負け続けています。3月の千葉県知事選で惨敗し、4月の衆参3選挙も負け、7月の東京都議選での議席もふるわず、8月の横浜市長選にいたっては、首相個人が支持を表明していた小此木八郎・前国家公安委員長が落選しました(ちなみに横浜は菅さんの地元です)。ここまでの実績を見る限り、菅さんが国民に人気があるとはとても言えない状況です。

菅さんで衆院選を戦えるのか。党内でそんな不安が高まるのも無理ありません。国会議員にとってみれば、選挙で負ければ自分の職を失うわけですから、みんな必死です。こうなったら、党の顔をすげ替えて、新しい自民党として選挙を戦う方がいいのではないかという「菅おろし」の雰囲気が出てきてもおかしくありません。このあたりは、業績が良くても悪くても自分の責任で職務を全うし続ける企業の社長とは構造が大きく異なるんですね。

さてその自民党の新総裁ですが、8月29日朝の時点で、正式に出馬表明したのは岸田文雄前政調会長のみです。そのほかに、菅義偉首相のほか、初の女性総理を目指す(?)高市早苗元総務相、下村博文政調会長が出馬に意欲を目指しています。また、総裁選で4敗中の石破茂元幹事長、野田聖子幹事長代理、そして河野太郎規制改革担当などの動向も注目されています。

新型コロナを通じて、政治に対する無関心が社会に、自分自身にどのような影響をもたらすのか、誰もが実感したと思います。企業のトップが「選挙に行こう」と呼びかける今年の衆院選は、これまで以上に関心の高いものになるでしょう。その選挙に向けて、自民党は誰を新たな「顔」として立て、どんなメッセージを打ち出すのか。そして衆院選で私たちはどう応えるのか。「政治とか興味ないし」とか言ってる場合じゃありません。私たち自身の行動が大きく問われる局面を迎えています。

 
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