過去の悪行は一生ついてまわるのか?キャンセルカルチャーとは何か

画像=Pixbay

こんにちは。メダルラッシュのおかげで東京五輪が盛り上がっていますね。ところで東京五輪の開会式、観ましたか? 楽曲制作を担当していた小山田圭吾さんが辞任し、開会式の前日にはショーの演出担当の小林賢太郎さんが解任されるなど、お粗末かつ混沌とした状態で当日を迎えました。

開会式の感想は人それぞれだと思いますが、ビデオリサーチ社によると世帯視聴は56.4%だったそうで、とりあえずたくさんの国民が開会式を見守ったことは確かなようです。

この一連の騒動の中で「キャンセルカルチャー」という言葉がキーワードとして出てきました。皆さんが読んでいない日経新聞でも紹介されています。SNS全盛時代の中で出てきたキャンセルカルチャーとは何なのでしょうか。

キャンセルカルチャーとは、個人や企業など組織の発言や行動が問題があるとしてSNSなどで「炎上」し、公的な立場からの辞任や商品の不買運動を求める動きのことを指します。

五輪関連では、2015年にエンブレムの「パクリ」でデザイン案を撤回したデザイナーの佐野研二郎さん、女性蔑視発言で五輪組織委員会会長を辞任した森喜朗さん、女性の体型に関する差別発言でじんした開会式・閉会式の演出統括役のクリエーティブディレクター、佐々木宏さんなど、実に多くの人が問題発覚→炎上→辞任に追い込まれました。

パクリはさておき、森喜朗さんと佐々木宏さんについては、女性や体型などに対する配慮のない発言をしてしまうという、昭和的な価値観の古さが社会的にバッシングを浴びる形になりました。多様性や誰もが活躍できる社会が求められる現代にあって、あまりにも意識が低すぎたのが問題になったとも言えます。

かたや、開会式直前に話題になった二人は、過去の行為や作品が問題になりました。小山田さんの場合、7月14日に五輪開会式の音楽制作を担当することを発表された直後から、ツイッターなどSNS上で過去のいじめについて語った雑誌の記事が話題になり、16日には謝罪文とともに留任することを公表しましたが、それでもネット上での批判が鎮静化せず、19日に辞任となりました。

小山田さんがいじめについて語った記事が掲載されたのは、『ロッキング・オン・ジャパン』1994年1月号と『クイック・ジャパン』(95年3号)です。四半世紀以上前の雑誌のインタビューですが、その内容の凄惨さからあっという間にSNSで拡散されました。小林賢太郎さんも、1998年に発売された映像作品が「発掘」されて、ユダヤ人団体から抗議を受けました。

SNSによる異議申立は悪ではない!

キャンセルカルチャーという言葉は、2010年代半ばにアメリカで使われるようになったものですが、問題や不祥事を起こした企業の商品を購入しないよう呼びかける不買運動自体は古くからあるものです。過去のそうした運動とキャンセルカルチャーの違いは、SNSによって多くの人が発言する機会を得て特定の個人や企業に対する意見を表明しやすくなったこと、その発言を匿名で行えるようになったこと、またツイッターのリツイート機能など発言を気軽に短期間で拡散することが可能になったことなどがありそうです。

キャンセルカルチャーの対象になるのは、社会的に影響力を持つ人のほか、企業も含まれます。日本でもこれまでに、アマゾンがとある国際政治学者をCMに起用したことで不買運動に発展した例がありました。皆さんの勤務先も、過去のサービスや発信内容について何らかの問題の指摘を受け、対応を誤ると、企業の信頼を著しく損なう事態に発展する可能性があります。

それぞれの個人が意見を表明し、しかもそれを広く社会に投げかけられるようになったことは、素晴らしいことです。「差別された」と感じた側の人が声をあげることは重要で、無自覚だったり、配慮に欠けている人にそれを認識させる機会にもなります。

しかし他方で、よく調べずに事実誤認のまま誰かを糾弾する発言をしたり、それをリツイートすることで安易に支持を表明し、拡散してしまう人も多く見られます。また、あまりにも短期間でものごとが一つの方向に流れやすくなっていることに危うさを感じる人も多いでしょう。

このキャンセルカルチャーの問題は、意見表明の民主化みたいな良い側面と、無責任・無自覚に運動を支持すること、そしてそれが社会を思わぬ方向へと導く危うさの両面があります。何気なくSNSに投稿した一言が社会を動かす推進力の一つになりうるということを自覚しながら、SNSを使う必要がありそうです。

 
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