オリンピック・パラリンピックについて現状をまとめとく

「日経新聞くらい読めよ」社会人なら誰もが一度は言われたセリフです。そりゃ、客先で経済ニュースを語れるとかっこいいですもんね。でも、「だって、みんな読んでないしな…」と、何となく済ませている人も多いのではないでしょうか。それでは、心許ないので最低限に知っておいて欲しい経済ニュースを、経済誌の現役記者・編集者がこれ以上ないくらいにわかりやすく解説します。今回は、もう最初から終盤までずーっともめている五輪・パラリンピックについて現状をまとめておきます。本当、何やってんの?!(リビンマガジンBiz編集部)


画像=Pixabay

こんにちは。日経新聞を読んでいなくても、東京五輪・パラリンピック開催まで50日を切っていることには気づいていますよね。しかし、新型コロナの感染拡大に歯止めが掛からぬ中で、五輪の中止を求める世論が高まっています。東京五輪、どうなってしまうのでしょうか。今回は、わかっている範囲で基本的な情報をまとめていこうと思います。

選手の気持ちを考えると、五輪は開催した方がいいですよね。しかし、新型コロナの感染拡大が収束せず、いまだ非常事態宣言が続く中、五輪の開催を現実的なものとして受け止めるのはむずかしい状況が続いています。だってまだ、飲食店でお酒が飲めない状態なんですよ! それで五輪かよ。そう考える人が増えているのはたしかです。元日弁連会長の宇都宮健児弁護士による東京五輪の中止を求める署名運動に共感する人は多く、6月5日までに41万8500人以上の賛同を集めています。

最新の世論調査を確認してみましょう。朝日新聞が5月に行った東京五輪に関する世論調査では、「中止」が43%、「再び延期」40%、そして「今夏に開催」はわずか14%。中止と答えた人の割合は、昨年来で最も高くなっています。

読売新聞はどうでしょうか。5月の世論調査では「中止する」59%、「観客数を制限して開催する」16%、「観客を入れずに開催する」23%となりました。

そして君たちが読まない日経。5月の世論調査では「中止もやむをえない」40%、「再延期もやむをえない」22%、「無観客で今夏に実施」34%、「観客数を制限して今夏に実施」17%、通常通りの観客数で今夏に実施」1%となりました。

各社とも東京五輪の開催について聞いているのに、それぞれ問いの立て方が違うのが興味深いですね。それはさておき、新聞の思想やイデオロギー、読者層の違いを超えて、「今年の夏に東京で五輪をやるのはさすがに無理でしょ」という世論が高まってきていることは明らかです。

新型コロナワクチンを接種した人は医療関係者と高齢者のみで、多くの人はワクチンを待ちつつ、外食や旅行の自粛を余儀なくされ、時に感染リスクに怯えたりしながら生活をしています。この状況で、本当に五輪をやるのか、と考える人が増えているのは不思議ではありません。

しかし、国は五輪の再延期や中止を検討するそぶりはいっさいみせずに開催に向けて準備を進めています。やっていることといえば、観客を入れるかどうかの検討くらいでしょうか。

この世間の危機感と国の態度のギャップはどこから来るかというと、やはりIOC(国際オリンピック委員会)と日本との間に結んだ契約が強く影響していると考えられます。

残念なことに、日本は、東京五輪を開催するかどうかの判断を下す権利を持っていません。

そのあたりについては日本が東京に五輪を誘致してきた2013年に、IOCと日本が結んだ「開催都市契約」(こちらk)に書いてあります。

この開催都市契約には、五輪を中止する権利を持っているのはIOCである(開催国ではない)、などのことが定められています。つまり、日本政府は五輪を中止したくてもできない立場にあるということです。世論がどれだけ中止に向けて盛り上がっても、日本側から中止を求める手続きが、契約上は定められていません。

この開催都市契約に従うと、「コロナだから五輪やりません」と日本が言い出した場合、日本はIOCに巨額の賠償金を請求される恐れがあるといわれています。しかしこの点については専門家の間でも見解が分かれています。賠償金を請求されることはないと見る弁護士もいます(署名運動の宇都宮弁護士も、IOCが日本に多額の賠償金を請求することはないとの見方を示しています)。また今回、日本に厳しい賠償金を課してやりすぎると、将来的に五輪の開催地に立候補する国や地域が少なくなる(すでに現状でもそんなに人気があるわけではない)可能性があると指摘する声もあります。

では、万が一、賠償金が課された場合、いくらくらいになるのでしょうか。よく言われているのは、IOCの収入の7割以上を占める放映権料です。アメリカのテレビ局の放映権料は1大会約1200億円で、これが実質的にIOCの重要な資金源になっていると言われています。「東京五輪できません!」と日本がギブした場合、この金額を請求される可能性があるとする見方が多いです。

コロナ禍の中の異例のこととはいえ、結果的に、IOCと日本国政府の傲慢さを際立たせることになった東京五輪。7月23日の開幕に向けて、まだまだ二転三転しそうです。

 
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