そんなのあり?アメリカで大ブームのSPACについて知っておこう

「日経新聞くらい読めよ」社会人なら誰もが一度は言われたセリフです。そりゃ、客先で経済ニュースを語れるとかっこいいですもんね。でも、「だって、みんな読んでないしな…」と、何となく済ませている人も多いのではないでしょうか。それでは、心許ないので最低限に知っておいて欲しい経済ニュースを、経済誌の現役記者・編集者がこれ以上ないくらいにわかりやすく解説します。今回は、何となく聞いたことがあるような気がするSPAC(スパック)について学びます。 (リビンマガジンBiz編集部)


画像=Pixabay

こんにちは。今回は、日経新聞を読んでいたとしても、よくわからない人が多そうなSPAC(スパックと読みます)について取り上げてみます。SPACはアメリカのお話なので、日本企業には関係なさそうですが、そうでもありません。それに実は、アメリカの新規株式公開(IPO)の半分がSPACなんです。お騒がせ企業の話題も絶えず、最近はSPACがらみのニュースが増えています。ここらで簡単に勉強してみましょう。

まず、SPACってなんでしょう。これはSpecial Purpose Acquisition Company(特別買収目的会社)の略称になります。名前の響きが、不動産ファンドを組成する時に作るペーパーカンパニーのSPC(Special Purpose Company、特別目的会社)に似てますよね。そうです、SPACもペーパーカンパニーなんです。

違いは「Acquisition(買収)」の部分です。

SPACは、株式を上場していない、未公開企業の買収を目的に設立される法人です。アメリカには、この買収のためのペーパーカンパニーを証券市場に上場できる制度があります。この制度を使って、「裏口」的に上場する企業が相次いでいます。ちなみに欧州にはSPACの制度がある証券取引所がありますが、日本ではまだSPACを解禁していません。

もうちょっと具体的に見てみましょう。まず、スポンサーと呼ばれる運用者がSPACを作ります。有名な経営者や投資家が、「カネの匂いのする」著名人の新事業に一枚噛もうとする人々からお金を集め、証券取引所に上場します。

この時点では、どの企業を買収するのかは未定なので、本当に中身がかっらっぽのペーパーカンパニーです。買収をするのは上場後です。実際に事業を展開している未公開企業を買収します。そしてその後、再上場する。そして新たな上場企業が生まれる、というカラクリです。

SPACの件数はこの7年ほどで12倍に増え、2020年にアメリカに上場した企業の約半分にあたる企業がSPACでした。1つのSPACが調達する金額も巨大化していて、400億円くらいになっているそうです。

EV(電気自動車)のニコラがSPACで上場しています。ソフトバンクグループもSPACの活用を表明していますし、宇宙ベンチャーのヴァージン・オービットなどもSPACを通じた上場を目指しています。まさに大ブーム。

それにしても、株式を公開して上場企業になりたいならば、普通にIPOのプロセスを踏めばいいはず。この裏口入学みたいなSPACがなぜ流行るのでしょうか。一言で言うと、スタートアップ企業にとっては、正規の手続きのIPOよりも、短期間で上場できるというメリットがあるようです。煩雑な手続きや、厳しい審査も回避できます。株式の上場を経験したことがある人なら、上場時の色々な審査やら何やらがどれだけ大変かわかりますよね。それをかなり緩和できるのは、上場したい企業にとっては魅力的でしょう。また、スタートアップの経営者にとっては、株式公開後に一定期間株式を売却できないロックアップ期間がない(いつでも株式を売って現金化できる)ことも魅力に映るようです。

また、金融機関や投資家など限られた人たちの間で株式公開時の株価が決められてしまうなど、スタートアップ企業の経営者や投資家が、現行のIPO制度への不満や不信を抱いていることも背景にはあるようです。

SPACブームは2021年にさらに勢いを増し、昨年よりも金額が大きく膨らんでいます。日本のソフトバンクグループもすでにSPACを上場すると発表しています。裏口上場のSPACは本来、投資家から見れば、正規の手続きのIPO企業よりも、信頼度が低いはず。それでも莫大なお金を集める背景には、世界の「カネあまり」現象があると言われています。ひらたくいうと、コロナ禍でも経済がちゃんとまわるように、国が緩和政策を強化してお金をじゃぶじゃぶに供給しているので、余ったおカネがSPACに流れ込んでいるということです。困っている人にお金がちゃんと届かないのは、資本主義の難しいところですね。

しかし、規律が緩み、トラブルの兆しも見えてきたSPACを、アメリカの当局もさすがに問題視しはじめました。米証券取引委員会(SEC、セックと読みます)は、複数のSPACは財務書類に問題があると指摘し、提出を求めています。このSPACブーム、どう着地するのでしょうか。

 
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