いまさらだけど、なぜ今、フェミニズムが盛り上がっているのか

「日経新聞くらい読めよ」社会人なら誰もが一度は言われたセリフです。そりゃ、客先で経済ニュースを語れるとかっこいいですもんね。でも、「だって、みんな読んでないしな…」と、何となく済ませている人も多いのではないでしょうか。それでは、心許ないので最低限に知っておいて欲しい経済ニュースを、経済誌の現役記者・編集者がこれ以上ないくらいにわかりやすく解説します。今回は、あちこちで怒りの声が噴出している問題、フェミニズムについて取り上げます。 (リビンマガジンBiz編集部)

画像=Pixabay

日経新聞を読まないみなさんでも、世界中の女性が声を上げる運動が広がっているのは流石に知っていますよね。ちょっと前に、日本オリンピック委員会(JOC)臨時評議員会で「女性がたくさん入っている理事会は時間がかかる」と発言し、組織委会長を辞任した森喜朗さんの話題を取り上げましたが、(※こちらから)女性蔑視や女性を軽視した発言に対して、世間は厳しく糾弾するようになっています。

話題が過熱しているからか、「フェミニズム」という言葉を使うと、正直なところうんざりしてしまう人も多いのでは。でも、「うんざりしているのは女の方だよ」というのが女性の本音です。ということで、今回は大雑把に、女性をめぐる一連の動きをまとめて、不動産業界の影響や対応について考えてみたいと思います。

世界で吹き荒れる異議申し立ての着火点はあの事件

フェミニズム自体は古くからあるものですが、昨今の大きな流れを作り出したきっかけの一つは、ハリウッドのプロデューサー、ハーヴェイ・ワインスタインさんをめぐる問題でしょう。ワインスタインさんは、ハリウッドの超大物プロデューサーです。「英国王のスピーチ」や「恋に落ちたシェイクスピア」「パルプ・フィクション」「ロード・オブ・ザ・リング」「キル・ビル」などなど、みなさんもご存知の大ヒット作を手掛けました。そのワインスタインさんにセクハラ問題を2017年に米紙ニューヨーク・タイムズが報じたことをきっかけに、グイネス・パルトロワやアンジェリーナ・ジョリーなど有名ハリウッド女優も被害にあったことを告白して、大いに話題になりました。セクハラ被害を告発する「#MeToo」運動に発展したことは記憶に新しいですし、この#MeTooは今も続いています。

映画のプロデューサーは配役を決める上で重要な決定権を握っていますし、「業界のドン」として君臨する人物に楯突くようなことをしたら、干されるかもしれない。そんな不安もあって長年にわたり、有名女優までもが口をつぐんできた。その構造が大きく崩れたことは、エンターテイメント業界に限らず、世界に大きな衝撃を与えました。

セクハラだけではありません。目に見えない女性ゆえに求められる社会的な役割に苦しむ例は後を経たないというか、誰もが直面している問題です。最近話題になった例では、歌手のブリトニー・スピアーズさん。彼女を追ったドキュメンタリー番組「Framing Britney Spears」が米Huluで配信されて、話題になりました。「セクシーだけど清純」という矛盾するイメージに縛られ、元カレのジャスティン・ティンバーレイクが「彼女に裏切られた」と匂わせる歌詞の歌を歌えば世間から悪い女と非難され、精神的に追い詰められた挙句、父親が成年後見人になる中でお金を自由に使えない状況に追い込まれている彼女の姿を映し出した番組は、大反響を呼びました。女性ゆえに世間から偏見や間違ったイメージを持たれた被害者としてスピアーズさんを捉える動きが広がっているのが、今っぽい現象と言えそうです。

女性はいつだって怯えながら生活している

#MeTooをはじめ、象徴的な女性に関する運動が欧米発なのはやはり、女性の社会的地位が向上し、大きな声で発言しやすい環境になりつつあることが大きいかもしれません。日本でも、ジャーナリストの伊藤詩織さんが元TBSワシントン支局長の山口敬之さんにセクハラ被害にあったことを公表しましたが、世間の反応はアメリカほどには盛り上がりません。政治的な問題が絡んでしまったことで伊藤さんを支持しにくい雰囲気ができてしまったのかもしれません。

社会での女性の立ち位置、家庭内での家事・育児の分担など、女性が声を上げるポイントはたくさんありますが、最も切実な問題はやはり、防犯だと思います。今年3月、イギリス・ロンドンで33歳の女性のサラさんが帰宅途中に襲われ、殺害されました。犯人は現職警官の男性でした。サラさんの遺体が発見されたのは3月8日、国際女性デーの当日でした。

世界の中で治安が良いと言われている日本であっても、女性が夜間に一人で歩く際には、誰もが緊張し、警戒しているものです。できる限り明るいルートを選び、手には鍵を握りしめ(いざというときに反撃するためです)、時には携帯電話で通話しているフリをし、帰宅を急いでいます。そんな不安に日々さらされてきた世界中の女性が、今回の殺人事件に怒り、声を上げています。

いつでも女性が被害者で、男性が加害者というわけではありません。しかし、男性に対して体力で劣る女性は、男性に対して警戒せざるを得ないシチュエーションがたくさんあることも事実です。一人でマンションのエレベーターに乗っているときに、男性が乗り合わせてきただけで少し緊張したことがある人も多いでしょう。女性はそれくらい、日常的に危険を感じ、身構えながら生きています。

こうした女性の防犯の問題は、「男性が悪いわけではない」などさまざまな反応があります。しかし、男女間で互いを批難していても状況は改善しません。身近なところから、少しずつ対応をしていくことが必要だと感じています。そこで不動産業界のみなさんにお願いしたいのは、内見時の対応です。女性のお客さんに対しては、女性スタッフが案内するという会社もありますが、それはまだ一部です。男性スタッフが単身女性客を案内するケースは未だ多いですし、私も男性スタッフと1対1で内見をしたことが何度もあります。こうした状況に対して、ドアを開け放しにするとか、女性スタッフも同行してもらうとか、ぜひ対応を考えてみてください。

 
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