第4次韓流ブームについて知っておきたいこと

「日経新聞くらい読めよ」社会人なら誰もが一度は言われたセリフです。そりゃ、客先で経済ニュースを語れるとかっこいいですもんね。でも、「だって、みんな読んでないしな…」と、何となく済ませている人も多いのではないでしょうか。それでは、心許ないので最低限に知っておいて欲しい経済ニュースを、経済誌の現役記者・編集者がこれ以上ないくらいにわかりやすく解説します。今回は、第4次韓流ブームについて解説します。 (リビンマガジンBiz編集部)

画像=写真AC

日経新聞を読まない君でも、韓国ドラマ『愛の不時着』は知ってますよね? まだ観てない人でも、K-POPの男性グループ、BTS(旧称・防弾少年団)をテレビで見たことがあると思います。

10月15日には、BTSが所属する芸能プロダクションのビッグヒットエンターテインメントがKOSDAQ(韓国証券市場)に上場し、時価総額が一時1兆円を超えたことでも話題になりました。ちなみに日本のエイベックスの時価総額が約440億円であることを考えると、この数字のすさまじさがわかります。いまや、韓流はエンターテインメントのみに限らず、株式市場を賑わせる一大トピックスになりつつあるんです。

ドラマ、映画、音楽、食、ファッションなどあらゆるジャンルで人気を得ている韓国のコンテンツ。今は、「第4次韓流ブーム」と呼ばれているそうです。「愛の不時着/第4次韓流ブーム」は、2020年の流行語大賞にもノミネートされました。

しかし、韓流って、知らない人はまったく知らない分野の話ですよね。ということで今回は、「韓流とかわかんない」という人向けに、韓流ブームを簡単におさらいしてみます。

韓流ブームの始まりは諸説あるようですが、日本では2004年放送のドラマ『冬のソナタ』のヒットを第1次とするのが一般的です。主演のぺ・ヨンジュンさんが大人気で「ヨン様ブーム」が日本のおば様の間でわき起こりました。

2000年代前半には、韓国の芸能事務所SMエンターテインメントが韓国人アーティストを日本に売り込み始めました。女性歌手のBoA(ボア)さんや、男性グループの東方神起などが出てきたのもこの頃です。韓国国内のエンタメ市場が小さいために、エンタメの市場規模が大きい日本へとコンテンツを輸出したわけです。韓国政府は、コンテンツ輸出を国を挙げての一大戦略として展開していきます。人材を育て、海外にエンタメを売り込む政策にお金を投じたことで、次の世代のスターを生み出すことになりました。

第2次ブームは2010年頃。K-POPのアーティストがどんどん増えた、音楽主導のブームでした。少女時代やKARAなど、いわゆるガールズグループが次々と日本に上陸しました。男性グループでは、BIGBANG(ビッグバン)や2PM(トゥーピーエム)が出てきました。

歌って、踊れて、メンバーの中には日本語を話せる人がいる。そんな戦略が日本の若年層に広く受け入れられたのがこの時期です。ブームはおば様だけでなく、女子中高生へと広がり始めました。PSY(サイ)さんの『江南(カンナム)スタイル』が世界的ヒットになったのも頃の頃です。しかし、2012年8月の李明博大統領が竹島に上陸するなど、日韓の政治的対立が先鋭化する中、日韓両国で国民感情が悪化し、韓流ブームも下火になっていきました。

再び韓流人気が盛り上がり、第3次ブームとなったのは2017年頃。ガールズグループのTWICE(トゥワイス)が出てきたり、チーズドッグやチーズタッカルビなど韓国の食べ物がブームになり、新大久保のお店に行列ができたりしました。

第3次と第4次のブームの境目は曖昧ですが、2020年は映画『パラサイト 半地下の家族』がアカデミー賞で作品賞など4部門で受賞、また2020年2月からNetflixで配信開始した『愛の不時着』がヒットしたことで、あらためて韓流に注目が集まり、第4次のブームと認識されているようです。ちなみに『愛の不時着』は、11月末現在も、Netflixのトップ10入りを続けています。日韓合同オーディション「NiziProject」から生まれたNiziU(ニジュー)のデビューも話題です。

第4次ブームの特徴は、ファン層が幅広い世代に拡大したことでしょう。第2次、第3次ブームは主に女子中高生を中心とした若年層のブームでしたが、今年は大人も楽しめるコンテンツが人気を集めています。

こんな感じで、この20年くらいの間に韓流ブームは大きく拡大してきたわけですが、このブームを作り出しているのは、前述の通り、韓国政府です。韓国の政府機関の一つである韓国コンテンツ振興院によると、韓国はコンテンツ振興策のために毎年200億~300億円規模のお金を投資してきました。予算規模は、2104年の186億円から、2019年には329億円まで拡大、その4割くらいを文化コンテンツ事業の育成に振り分けています。

NiziUのオーディション番組でも、韓国人プロデューサーのJ.Y.Parkさんの人柄や手腕が注目されましたが、エンターテインメントに関わる人材のレベルが高く、そして層が厚いことがうかがえます。これが充実したコンテンツを生み出す原動力になっているわけですね。音楽にしても、映像作品にしても、基本に忠実で丁寧に作られた作品で多くのファンを獲得しています。他方で、欧米や日本の文化からの模倣の域を出ていない部分もあり、本当のオリジナリティを発揮するのはこれからなのだろうなという印象もあります。

韓流ブームは、今後も政治的対立の中で翻弄されることはあるかもしれません。しかし、人を魅了するコンテンツを作る底力がある限り、人気は継続しそうです。

 
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