明日をも知れぬ身?新時代の自由人?ギグワーカーとは一体

「日経新聞くらい読めよ」社会人なら誰もが一度は言われたセリフです。そりゃ、客先で経済ニュースを語れるとかっこいいですもんね。でも、「だって、みんな読んでないしな…」と、何となく済ませている人も多いのではないでしょうか。それでは、心許ないので最低限に知っておいて欲しい経済ニュースを、経済誌の現役記者・編集者がこれ以上ないくらいにわかりやすく解説します。最近、増えているギグワーカーについて紹介します。アルバイトでもない、契約社員でも無い、果たしてその実態とは? (リビンマガジンBiz編集部)

画像=PIXABAY

コロナで働き方に対する考え方や環境がガラッと変わる中、「ギグワーカー」があらためて注目を集めています。働く手・企業、いずれにもメリットがある一方、補償がないために不安定な立場に置かれていることが問題になっています。

日経新聞を読まない君たちでも、ギグワーカーはご存知ですよね。ギグワーカーを知らなくても、すでにギグワーカーにお仕事を発注している人もいるかもしれません。ギグワーカーとは、ネットを通じて単発や短期の仕事を請け負う人を指し、国内に1000万人いると言われています。ギグワーカーのような働き方や、それによって広がる経済を「ギグエコノミー」と呼ぶこともあります。

ギグワーカーのお仕事受発注サイト大手「クラウドワークス」を見てみると、不動産業界ではネットに物件情報を公開する際の記事のライティングや物件写真の撮影などでの利用が多いようです。一般的には、配送や家事代行などのほか、プログラミングや文書作成、データ入力、翻訳などの仕事がギグワーカーの代表例です。最近は法務や人事、財務などいわゆる会社の間接部門の仕事も、ギグワーカーに依頼する流れがあります。

このギグワーカー、働く側、発注する企業側、双方ともメリットがあって市場が拡大してきました。

フリーランスにとっては仕事を受注する窓口を増やすことができますし、会社勤めのサラリーマンにとっては隙間時間で稼ぐ副業へのアクセスが容易になりました。最近は副業を解禁する企業が増えていますし、コロナで在宅勤務の時間が増えたこともあって、より一層、隙間時間の有効活用としてギグワーカーが増えそうです。

一方、仕事を発注する企業は、社員を雇うコストやリスクを回避しながら、プロフェッショナルに必要な時に必要なだけ仕事を発注できるメリットがあります。

業務の一部をフリーランスに委託すること自体は昔からありましたが、人づてだったり、口コミだったりで仕事を頼むことが多く、人脈がなければ仕事を見つけることができませんでした。しかし、インターネット上のプラットフォームが登場したことで、発注側と受注側がつながりやすくなっています。こうしたテクノロジーの進展と、働き方に対する考え方の変化を背景に、ギグエコノミーが拡大しているわけです。

働く場所にも、企業にも縛られず、自分の腕一本で自由に仕事ができるギグワーカー。しかし、この働き方には厳しい面もあります。

企業に所属する正社員とは異なり、社会保障などのセーフティネットがありません。病気や怪我などを原因に仕事ができなくなった時の補償がないギグワーカーは、収入が突然途絶えるリスクがあるわけです。それをこれまで以上に浮き彫りにしたのが新型コロナによる経済の自粛でした。

突然仕事を失うリスクを抱えた労働者を行政がサポートすべきという声の高まりを受けて、日本の経済対策は、ギグワーカーなどの個人事業主に最大100万円を支給する内容になっています。

海外でも、ギグワーカーの生活を補償するための取り組みが進んでいます。米国では、感染リスクにさらされながら仕事を続けざるを得ないウーバーのドライバーなどを補償すべきという声が高まりまっています。6月には、シアトル市議会が、ウーバーやリフトなどの企業に、ギグワーカーの疾病手当を義務付ける条例を制定して話題になりました。

ギグワーカー同士で助け合う動きも広がっています。「ギルド」と呼ばれる互助組織を立ち上げる動きがあります。プロフェッショナルのチームを作って仕事の受注力を強化したり、交渉力を高めたりする組織で、困った時にはギルドの仲間で助け合う仕組みも考えているようです。

「一つの企業に定年まで勤める」という考え方が古くなり、転職をしたり、フリーランスになったり、また企業に戻ったりという具合に、家庭の事情や仕事の内容に応じて働き方を柔軟に変えていく動きが進んできました。一方、企業が従業員に提供してきた保障というセーフティネットのコストを誰が負担するのかについては、まだまだ議論が足りていません。これからの社会的な課題になっていきそうです。

 
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